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ZOOM UP:かわさきの元気企業

第18回 ダンウェイ株式会社 高橋陽子社長に聞く

障がい者雇用を生み出すビジネスモデルを、「人財」と「ICT冶具」で実現

2014/01/28

武蔵新城の商店街にオフィスを構え、障がい者の就労支援を行っているダンウェイ株式会社。就労に向けた障がい者へのトレーニングを行い、企業側には雇用についてアドバイスするなど、企業との橋渡しをしています。
また、2012年12月に発売されたホームページ作成・作業管理の支援ソフト「ICT治具」は、指示系統を共通言語化したもので、「かわさき基準」に認証されています。

高橋陽子社長に、創業のきっかけや就労支援、「ICT治具」、将来のビジョンなどについて、お話を伺いました

自分自身の気づきが創業のきっかけ

まずは会社創業の経緯を教えてください。

私の生活が一変するある出来事がきっかけでした。私自身が発達障がい・自閉症児の母で、息子は地域の小学校の特別支援学級に入学し、毎朝私と手をつないで登校していました。登校する私たちの周りで、同じように春に入学した子たちが学校に向かって歩いています。
そんなある日のこと、その子どもたちが「○○さんママ、いつまでも○○さんと手をつないでいると、いつまでたっても一人で学校にいけないよ」と言い始め、私の手から息子を放したんです。自閉症は急な変化に弱いので、当然ながら息子はパニックです。しかし、その日からみんなが息子を囲んで学校に行き始め、2週間ほどで、息子は私と手をつながずに通えるようになりました。

今思えば、入学したての子どもたちは、一人だけ母に手を引かれている息子に焼きもちを焼いていたのかもしれません。が、何の先入観も持たない子どもたちが息子の登校を実現させたことで、私が「できない」と思い込んでいただけだと気付かされました。この気付きが、ダンウエィの原点の一つです
このできごとがきっかけで、障がい者のその人なりの自立を目指し、自立のための就労支援をする場所を作りたいと思うようになったのです。

「その人なりの自立」はどのように実現なさっていますか?

一人ひとりが、いったい何が得意で、何が課題になっているかを、可視化しています。今までの福祉の世界では、「できないこと」は具体的に可視化しない傾向にありました。しかし、ご家族のご理解を得て可視化することで、支援計画を立てることができ、またマッチングする企業に個人の長短を伝えることもできるようになりました。
企業側があらかじめ弊社を見学することもあれば、就労後に相談を受けることもあります。間に入って支援することで、企業との信頼関係を築くことができます。それが、その人なりの自立の実現につながっていると思います。

人材は人財! 地域の中で暮らし、働き、そして共に育つ

商店街に会社を構えたのはどのようなお考えですか?

障がいのある方が就労するとき、職業訓練だけでなく、生活面の経験値をあげて自立につなげることも大切だと考えています。地域に住む方々が行き交う商店街という場所で地域の方々とふれあうことができますから、とてもいい環境と言えます。
障がいのある方の多くは、「働けない」という思い込みで守られた生活をしています。しかし得意なことを活かし、訓練することで、働くことが可能な方も多いのです。
現在の日本では、障がいのある方のうち、就職している人は全体の約20%ほど、残りの約80%は福祉のもとで生活しています。この就労比率をあげれば財源の削減により、より福祉支援が必要な方へ支援が届くことになります。
さらに、障がいのある方が就労できれば、彼らは新たな労働力となり得るのです。まさに、“人材”は“人財”と言えるでしょう。

企業とのマッチングについてお聞かせください。

訓練したからといって、誰もが同じように何でもできるわけではありません。企業からすれば、どんな仕事を割り振ればいいのかわからなくて雇えないという現実があるでしょう。そこで、ダンウエィで就労継続支援をし、フォローしていきます。企業と人とのマッチング、そして雇用についてのアドバイスもします。
障がいのある方は、あいまいな指示やたくさんの情報が苦手な人が多いので、彼らの能力を発揮させるには仕事の場でも工夫が必要です。逆に言えば、その人なりの能力を見極めて仕事を割り当てれば、雇用につながるのです。
関わるすべての人たちが喜べるような「Win=Win」の結果を生み出すことが、ダンウェイのビジョンです。

可能性を大きく広げた商品「ICT治具」

障がい者のスキルに合わせた仕事を割り当てるのですね。

「ICT冶具」で作られた自社のホームページ
「ICT冶具」で作られた自社のホームページ
例えばパソコンは情報がありすぎて、操作に迷います。しかし、これを分割して複数のスタッフで分業化すれば、一人ひとりの得意分野を活かした仕事ができるということです。
そこで、当社では「ICT治具」というホームページ作成ソフトを、インテルと共同開発しました。ダンウェイのホームページはこの「ICT治具」を使って作られています。 「治具」とは、ものの加工や組立をするときに助けになる道具のことです。
「ICT治具」はホームページ作成・作業管理の支援ソフトで、専門用語を知らなくてもホームページが作れる仕組みになています。 ログインを「動物を乗り物にのせる」といったようにアイコンの組み合わせにし、ボタンを信号機の色に色分けして作業を誘導するなど、工夫を施しています。進むときは青、進まないときは赤と、直感的に操作できるようにしたのです。 障がいのある方だけではなく、
子どもやお年寄りにも簡単に使えます。一般に販売もしているので、いろんな方に使っていただければと思います。

開発までにはご苦労があったのではないでしょうか?

「ICT冶具」のログイン画面は、動物を<br>乗り物にのせるアイコンの組み合わせ
「ICT冶具」のログイン画面は、動物を
乗り物にのせるアイコンの組み合わせ
開発に際しては、要件定義するために妥協せずに話し合いをしました。ソフトというのは、実際に使う人と、プログラムを書く人との息が合わないと有効ではありません。そこにこだわって作りました。わからない専門用語が出てくることもありましたが、納得いくまで何度も何度も繰り返し話し合いました。販売した後も、実際に使用する人の声を吸い上げ、再開発をしています。

こういう製品が一つあることは、この事業をビジネスとして成功させるためには大きな一歩です。その財源を持って次の一手を打って出ることができるからです。
つくば市にあるインテル株式会社のラボで、先端技術である視線で動かすマウスとともに展示していただいたり、大学の教授に使っていただいたりと、徐々に多方面で広がりつつあります。

先にお話しした「人財」と、この「ICT治具」が、我が社の商材です。福祉ではなく、社会に必要とされるビジネスと考えています。

「川崎」から「日本」へ、そして「世界」へ!

今後のビジョンを教えてください。

弊社は10年後のビジョンを持って歩んでいます。その中で核となるのは、障がい者がその人なりの自立の実現をすること、その実現のために必ず必要な地域共生の実現です。この2点が不動の大きな柱となっています。

今年度初めて、大学生がインターンとしてスタッフに加わりました。「この業界を変えたい!」という想いを持った大学生が、その可能性を自ら広げたいということがあり、アルバイトに来ています。私が創業時に「この業界を変えたい」と思っていたのと似た感覚を持ち合わせているのかもしれません。
福祉業界は高齢化しており、次世代を担う学生が自分から飛び込んできたのは貴重です。弊社としても、新たな一歩になり得ると思っています。

「ICT冶具」の普及がポイントとなりそうですね。

障がい者や高齢者が使えるHP制作ソフトは、小中学校で使えば共生教育につながります。それは高校・大学では、伝える教育へと育ちます。そして社会人となり、いずれは高齢者となる。この一連における共通言語としての普及を考えています。

2012年8月に、インドで開催された「アジアの起業家オーディション」に参加しました。そこでインドネシアのチームが、共通言語を活用したプレゼンテーションを行ったのです。私の目標とするものだと思いました。

2013年7月には、川崎市の上海ミッション(視察団)に同行する機会がありました。赤や青という色は世界共通ですので、色をコミュニケーションツールにすることで、グローバル化することができます。そのことに興味を持ってくださる方がいらっしゃいました。
「ICT冶具」は共通言語となり海を越えるだろうと想定していましたが、実際に「越えた」ことで、想定が確信に変わりました。

いいタイミングで、いい経験ができたと思います。日本のよいものを発信するビジネスモデルとして確立し、「川崎」から「日本」、そして「世界」のモデルになることを目指します。
社名「ダンウエィ」の「ダン」には、いろいろな意味をこめているという高橋社長。
「いろいろな想いがダンデライオン(たんぽぽ)の種のように世の中に広がってほしいと願っています。これからも「ダン」の想いを伝える「道(ウェイ)」をひろげていきたいですね」と笑顔で語ってくださいました。

関連情報

マンガで知る中小企業の魅力
『飛び立てダンウェイの種!』

http://kawasaki.mypl.net/mp/comic_kawasaki/?sid=15546
ICT治具プロモーション映像
ダンウェイ株式会社
住所:神奈川県川崎市中原区新城一丁目12番15号
TEL:044-740-8837
FAX:044-740-8838
E-mail:info@danway.co.jp
ホームページ:http://www.danway.co.jp/

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川崎市経済労働局労働雇用部(TEL:044-200-2276)

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