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技連協活動レポート

「技能職者に学ぶ」職種別講座(平間中)

提供:川崎市技能職団体連絡協議会
川崎市技能職団体連絡協議会(川崎技連協)は市内の中学校生徒を対象とした「技能職者に学ぶ」職種別講座に講師を派遣しています。講座は、川崎技連協が川崎市と連携して2000(平成12)年度から後継者育成事業として取り組んでいるもので、今年度で12回目の職種別講座です。

今年度は例年よりも規模を拡大し、市立中学校8校で行われました。協力団体は24団体、派遣された講師数は延べ231名、受講した生徒は全部で1147名にもなります。

2012(平成24)年2月21日の午後は川崎市立平間中学校(中原区)でこの「技能職者に学ぶ」職種別講座、8職種が実施されました。

平間中学校 8職種に3年生146人受講

講座と講師
参加した職種は以下の通りです(カッコ内は団体名と派遣講師数)。

◎広告美術業(社団法人神奈川県広告美術協会川崎支部・3名)
◎着付士(全日本みやうち着付士技能者の会・3名)
◎大工職(中原建設連合会・2名、川崎中部建設労働組合・1名)
◎美容師(川崎市美容連絡協議会・3名)
◎表具-インテリア(川崎インテリア表具組合・4名)
◎洋裁師(川崎洋装組合・3名)
◎和裁師(神奈川県和服裁縫協同組合川崎支部・3名)
◎タイル築炉技能士(川崎市タイル煉瓦工事工業組合・3名)

平間中・体育館での生徒にて生徒に講師を紹介
平間中・体育館での生徒にて生徒に講師を紹介
午後に実施された平間中学校では8職種に146人が受講しました。

体育館での全体会では生徒の司会のもと、最初に川崎市技能職団体連絡協議会の副会長兼、後継育成委員長である山本知男さんが、
「中学2年生のとき大工さんの仕事を見て自分もやりたいと志し、職人の道に就きました。15~20年の修行の後、もっと上に行きたいと建築設計士の資格を目指し猛勉強、現在設計事務所を経営して、この仕事に50年のキャリアを持っています。好きな道を進めば、今日みなさんを指導してくれる、この講師の方々のように立派な仕事ができるようになります」と、ご自分の経験を交えて挨拶をされました。
次いで、山本副会長は8職種の代表講師の方々を1人ずつ、仕事の内容と共に紹介しました。

全体会の最後には、生徒代表が「今日の日を楽しみにしていました。しっかり学んで今後に生かしたい。よろしくお願いします。」と歓迎の言葉を述べ、全員起立で講師たちを迎えました。

全体会の後、それぞれの職種に分かれて講座が行われました。ここでは、「タイル築炉技能士」「美容師」「洋裁師」「和裁師」の講座の様子をご紹介します。

タイル築炉技能士

タイル築炉技能士の講座では、「タイルの歴史や素材について」「現在のタイルの未来像」についての講義と、モザイクタイル体験(フォトフレーム製作)の実技が行われました。
好きなモザイクタイルを選んで、<br>木枠に置いてみてレイアウトを考えます
好きなモザイクタイルを選んで、
木枠に置いてみてレイアウトを考えます
はじめに、清水俊治組合長より挨拶があった後、講師の安藤健さんよりタイルの歴史や素材について、更に現在のタイル事情と未来のタイルについての講義がありました。

自分たちのタイルの仕事は一言で言うと「ビジュアルアート集団」だという説明を聞き、今はややなじみが薄くなっているタイルというものを知り、目の前に並べられた美しいモザイクタイルを見て、生徒たちもタイルについて興味を持ち始めました。
レイアウトどおりに慎重に貼りつけます
レイアウトどおりに慎重に貼りつけます
そしていよいよ、フォトフレームをモザイクタイルで飾る体験学習です。
17.8cm四方のフォトフレームの木枠の部分に、大小色とりどりの美しいモザイクタイル(「モザイクタイル」と称するのは5cm四方以下の小さなタイルを言うそうです)の中から自分の好みのものを選び、内装用の接着剤で貼り付けて作り上げていきます。
まず、好みのものを取り、木枠の上に置いてみて眺め、また置き直し、お互いに周りを見ながら試してみます。中には脇目もふらず、自分の作品に没頭している生徒もいます。最初はあまり積極的でなかった生徒も見違えるように生き生きと作業に夢中になっています。どの生徒も楽しそうに、真剣に取り組んでいました。
出来上がった作品はそれぞれユニークで、どれも美しく見えました。全員が満足そうに、「面白かった」と全員一致の感想を述べていました。
早く出来上がった生徒は、おまけの立版へのタイル張りの体験もあり、積極的に作業を進めていました。
「面白かった」と大満足
「面白かった」と大満足
最後にタイルについてのイメージアンケートを行ったところ、
(1) タイルが好き 16
(2) タイルは芸術だ 16
(3) タイルは清潔 2
に集中し、「タイルは高い」「タイルは贅沢」「タイルはエコだ」「タイルには興味がない」の回答はゼロでした。

美容師

美容師の講義では、「美容師の仕事」についての講義と、用具(ハサミ・ドライヤー)の使い方や、カットやロット巻きの体験、スタイリングの方法の実技が行われました。
DVDで美容師について学びました
DVDで美容師について学びました
最初に、講師の菅原司郎さんが語り始めました。「みんなに少しでも役に立ってもらおうと思って、仕事を休んでここにきたんだよ。仕事をしないと食べていけない、生活ができないことはみんな知っているよね。あなたたちの親、大人はみんなを幸せにしようと思って仕事をしている…」。生徒の目が菅原さんに向きました。
菅原さんが「美容師ってどんなイメージをもつ?」と生徒に問いかけました。「髪きり」(男子生徒)、「おしゃれ」(女子生徒)の声が返りました。
菅原さんは「美容師は字のごとく、人の美しさを演出するのが仕事。美容師は、人々が幸せになれるよう手助けしています。こんなことを、あなたたちみんなに教えてあげたくて、来ました」と話し、本日の講師である村上文行さん、後藤展章さんを紹介し、実技に入りました。
後藤さんが持参したウイッグ(練習用マネキン)で、ロット巻きなどを指導。村上さんは、ハサミやくしを生徒に持たせて道具の使い方を教えました。村上さんが「カットしてあげるから、ここに座って」と女子生徒に声をかけました。みんな、もじもじして動きません。「あなた、どう」と指名され、やっと髪の毛の長い生徒が座り、カットの勉強に入りました。
道具の使い方などの指導を受けます
道具の使い方などの指導を受けます
ウイッグ(練習用マネキン)を使っての実技
ウイッグ(練習用マネキン)を使っての実技
講座を終え講師と記念撮影
講座を終え講師と記念撮影
生徒たちは「美容師の先生たちが僕らの将来のことを考え、一生懸命に教えてくれました。僕も先生たちの期待に応えなければならないなと思いました」(男子生徒)、「美容師の仕事は、人をきれいに、美しくするのだということがよくわかりました。先生の授業を受け、私も先生のような仕事に就こうかなと思いました」(女子生徒)など、今日の体験について感想を話していました。
菅原さんは講師活動についての感想をこう述べました。「これからの日本を背負って立つ子どもたちに向けての講座だから、“将来、立派な大人になってほしい”という気持ちを込めて教えました。美容の仕事に関心を示し、集中して学ぶ子もいて、やりがいを感じました」。

洋裁師

洋裁師の講座では「洋裁師の仕事」と「用具の使い方」についての講義と、ボタン付けと巾着作りの実技が行われました。
まず、洋裁技能士で、かわさきマイスターでもある石塚よし子先生から「洋裁師の仕事」についての説明がありました。以前は家庭でも型紙をもとに手作りの洋服を作っていましたが、現在は安価な既成服が主流となり、そのように自分で洋服を作る人は少なくなりました。洋裁師とは、もちろん洋服をつくる人のことですが、そうした背景もあり、洋服を作るのはプロの仕事になってきました。
真剣なまなざしで、<br>製作にチャレンジ
真剣なまなざしで、
製作にチャレンジ
プロになるには、服飾専門学校で学び、アパレルメーカーに就職するか、自分の店舗を持つことで洋裁師としての仕事をすることができます。
しかし、そうでなくても、自宅で家族の服のリフォームをしたり、ちょっとした小物を作ったり、子どもの服のデザインの直したりするなど、洋裁の基本を学ぶだけで生活に豊かな彩りをそえることができることを知ってほしい、と話されました。

続いて、実技に入ります。ミシンやハサミ、針などの用具の使い方を学び、ボタン付けと巾着作りに挑戦しました。
講師から針の使い方を教えてもらいます
講師から針の使い方を教えてもらいます
巾着作りは複雑な作業です。あらかじめ渡された材料は、きれいな模様の入った表布(巾着の表布)と裏布(巾着の内袋)が四辺の一辺だけ裏返しで縫いつけられたもの、それとシンの布、もう一つは巾着の口を開け閉めするループ(ひも)と両端のループエンド(玉)です。これを裏返して縫い合わせたり、ループを通す穴を作ったりとかなり頭を使う必要があります。
神妙にアイロンの使い方を教えてもらう<br>男子生徒
神妙にアイロンの使い方を教えてもらう
男子生徒
男子生徒も何人かいましたが、女子生徒に教えてもらったり、手伝ってもらったりと協力し、先生方のこまめな支援もあり何とか仕上げていました。ミシンも使い慣れていない人が多く、まっすぐ縫える人は少ないようでした。それでも仕上がった時はみんなうれしそうでぶら下げてみてはしゃいでいました。

和裁師

和裁師の講座では、「和裁師の仕事」や和裁に必要な知識についての講義と、小物製作の実技が行われました。
講師の善本菊枝さんが和裁について話しました。「『きもの』や、『ゆかた』は日本伝統の衣装です。長い1枚の布をはさみで切り、針と糸で縫って、多様な美しさを表現できる『きもの』は何度も仕立て直しをして使えるとっても便利な素材です。いったん和裁を身につけると、いつまでも、この仕事を続けられます。私は75歳になりましたが、現役で仕事をしています」
慣れない手つきで鈴を縫いつけます
慣れない手つきで鈴を縫いつけます
ひととおり和裁の説明が終わると、いよいよ実技です。赤色、緑色の小さな布と緑色の糸、少々の綿、小さな鈴などが生徒に配られました。針の持ち方、縫い方を身につける基礎訓練にもなるイチゴ作りに挑戦です。
「先生、これでいい?」と教室の端から女子生徒の声があがりました。善本さんが声の主のところへ急ぎ足で近寄ります。重藤倫子さん、照内すみ子さんの両講師も生徒に寄り添って、丁寧に縫い方を教えました。女子生徒も男子生徒も一生懸命、針を動かしました。
出来上がった鈴つきのイチゴを比べる生徒たち
出来上がった鈴つきのイチゴを比べる生徒たち
女子生徒は出来上がった鈴つきのイチゴを手にして「私、おばあちゃんに教えてもらって手芸をしています。手芸が好きで、エプロンなどいろんなものを作っています。今日は和裁の先生に針の使い方などを教えてもらい、とても勉強になりました」と話しました。
講師との記念撮影
講師との記念撮影
男子生徒は「僕は大工(講座)を受けたかったのですが、(定員)いっぱいで、和裁に回されました。最初は面白くなかったけれど、先生に教えてもらううちに、だんだん和裁もおもしろいなと思うようになりました。将来の仕事は、いろんなことを勉強して決めたい」と話していました。
善本さんは「生徒たちから『楽しかった』といわれ、講師を引き受けてよかったなと思いました。生徒のみなさんに、職人の初歩について理解していただけたら幸せです。私たちの講座を受けていただきありがとうございました」と生徒たちに講座を終えての言葉を贈っていました。

職種別の講座を終えて

全ての体験学習が終わり、締めとして全体集会が体育館で行われました。
最初に講師から1人ずつ指導の感想が述べられ、次いで生徒代表のお礼の言葉がありました。

最後に技連協の若月偉男会長から「川崎市技能職団体連絡協議会は技能者の集まりで、43職種のプロの集団で、川崎市民の生活に深くかかわり貢献しています。彼らのように専門技術を身につけた職人(技能者)達は大量生産・大量消費・大量廃棄に 関わる仕事とは異なり、手作り・多品種少量生産の長持ちのする高品質商品を作っています。腕一本で独立できる仕事はとても魅力的です。ぜひ、興味を持った仕事があれば志をもって挑戦してほしい」とお話されました。