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キラリ輝くものづくり人づくり 平成17年度掲載企業

日本理化学工業株式会社

粉が飛散しない環境に優しいダストレスチョークでトップシェアを持つ日本理化学工業。60年(昭和35)から重度障害者の採用をスタートし、75年に川崎工場で労働省(現厚生労働省)の「心身障害者多数雇用モデル工場」の第1号に認定されるなど障害者雇用に取り組んでいる企業だ。「仕事は人間の幸せをつくるもの」という大山泰弘社長。ものづくりで人を育てる経営を展開している。

トップインタビュー(日本理化学工業株式会社 代表取締役 大山 泰弘さん)

大山社長が障害者雇用を始められた理由を聞かせて下さい。

 「59年秋に東京の養護学校の先生からの、卒業生を就職させて欲しいという依頼からです。初めはお断りしていたのですが、『子供たちに働く経験をさせて下さい』という先生の熱意から実習生として女性2人を受け入れ、簡単なラベル貼りを始めたところ実に熱心に働く。二人の親も毎日送り迎えにやってきました。そうした姿を見るうちに『何とかしてあげなければ』という気持ちになり、翌年4月に第1期生として2人を採用しました」

そこから始まって現在は従業員数79人のうち60人が知的障害者で占めるまでになっています。積極的に採用するきっかけはなんですか。

 「最初は同情心から採用しました。意識が変わったのは当時上野動物園の飼育係だった西山登志雄さんのテレビでのコメントを聞いてからです。西山さんは『最近の動物園では生んだ親が子を育てない。おりの中で大事に飼育されていると子を育てる本能もなくなる』といった意味のことをおっしゃっていました。これを聞いて衝撃を受けました。障害者も全く同じ。施設で保護されて育っても決して人間としての幸せは得られません。仕事を通じて成長し、賃金を得て自立することが大切だと気づかされました」
 「また、禅寺のご住職から言われた言葉も印象に残っています。『人間の究極の幸せは物やお金でなく、人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、そして人に必要とされることの4つ』だと。障害者が施設で大切にされるより企業で働きたいと願うのは社会で必要とされて、本当の幸せを求める人間としての証しだとおっしゃいました。実際、従業員は会社に来ることを喜んでいます。この姿を見て障害者の幸せは企業でこそ得られるのだと確信しました」

採用を始められた当時はまだ障害者雇用は多くなく、従業員の教育も難しかったのでは。

 「受け入れたものの私たちも当初は手探り状態でした。しかし、健常者と同じように工程作業を教えていくうちに私たち自身も多くを学んでいきました。知的障害者であっても自宅から会社までは1人で来られます。信号機の色は識別できるんです。ならばラインに流す材料も容器の色で示せば間違わずに選択できる、と。時間は砂時計を使って目で判断させるなど能力に合わせて工夫すれば健常者と同じ作業ができることに気づかされました」

健常者と差がなく生産性を上げられると言うことですか。

 「障害者1人では健常者に当然かないません。しかし、数人で取り組めば同等の仕事がこなせます。例えばビデオカセットの組み立て。健常者ならば1人で1日1000個手掛けられます。以前、大手メーカーから請け負った時、この製造工程を5つにわけて5人にまかせました。1人はカバーをかぶせ、1人はネジを付けるといった具合に分散すると障害者5人で1日5000個を組み立てられました。大切なのは能力に合わせて作業を考え、ひとり一人に向いた仕事を与えること。そうすれば能力を最大限に発揮し、決して健常者に劣らない仕事ができると考えています」

適材適所で活用することで人材育成を図ると言うことですね。

 「当社は知的障害者を採用していますが、採用の基準は自分の身の回りのことや返事が出来ること。一生懸命で、周りに迷惑をかけない子供であれば大丈夫です。それと親の理解があることも重要です。障害者は親切な子供が多いのも特徴です。あるレベルになればポジションのリーダーを任せることで各人のモチベーションアップも図っています」

障害者雇用で得られたことはありますか。

 「ある大手企業の特例子会社(法律で決められた率の障害者雇用達成を目的に設立された特別な子会社)の社長さんがおっしゃってました。『赴任当初はとまどった。しかし、一緒に働いてみてすごく張り合いがある。数十年働いてこれほど充実した仕事ができるのは初めてだ』と。この気持ちは非常に分かります。健常者の意識だけでなく、障害者の視点から考えてお互いに課題を解消していく喜びは通常の工場では味わえません。こうした取り組みを通じて私たちも成長していきたいと思っています」

大山社長は03年まで社団法人全国重度障害者雇用事業所協会会長を務められ、障害者雇用促進の呼びかけを進めてこられました。今後の普及にはどのような取り組みが必要でしょうか。

 「障害者の法定雇用率は1.8%。全国的に未達の地域はまだ多いのが現状です。雇用率を引き上げるには重度障害者の雇用を増やすことと雇用負担の軽減が必要です。ベルギーでは知的障害者を受け入れるに際しては企業に対して国が最低賃金額を助成する制度が定着しています。日本でも同様の制度があれば良いのですが、日本の財政改革の方向性からは実現は困難でしょう」

具体的な改善策はありますか。

 「提案したいのは国の、企業に求める最低賃金維持の解釈の見直しです。現状では重度障害者は働けないと見なして障害者基礎年金により月額6万~8万円の所得保障を行っています。私の主張はこの年金と、企業から支払う賃金との合計が地域ごとの最低賃金をクリアすれば『最低賃金維持』していると解釈し、届け出制によって許可するよう改善して頂きたいということです。いろいろな考え方があると思いますが、国の財政支出を抑制し、企業の負担も減らせることで障害者雇用を促進できると考えています」

日本理化学工業の今後の事業展開をどう考えいらっしゃいますか。

 「これまでチョーク、プラスチック製品の成型・組み立てを手掛けてきましたが、今後、ダストレスチョークに変わる柱を育てていきたいです。その一つがマーカーチョーク『キットパス』です。滑らかな書き味で、粉が飛散しないのが特徴です。口紅などに使われる樹脂を原料にしているのでホワイトボード用マーカーのような揮発臭がなく、滑り過ぎずに書ける。いまボードも開発中で学校やオフィス向けにも需要開拓を進めています」
 「もうひとつダストレスチョークではホタテ貝の貝殻を再利用し、原料の炭酸カルシウムの代替材料として混入する環境対応にも乗り出しています。今後は環境配慮型の商品開発で事業を拡大する一方、障害者を雇用できる受け皿をさらに広げるよう取り組んでいきたいと考えております」

社員のコメント 製造部 佐藤 緑さん

皆の成長を日々感じながら製造部で従業員の指導育成に関わってきました。いつもと違うことにすぐには対応できない特徴のある従業員も多く、そういった点で一般企業と違い多少難しいこともありますが、従業員の成長によって、私自身も勉強になることが多くあります。
 現場では、仕事と仕事の切り替えがすぐにできない人には、一日の予定を表にして貼っておく、集中力が続かない人には短い時間内での目標設定をこまめにして、集中が続くようにする等、取り組みやすい状況を作りながら作業を進められる工夫をしています。
 それぞれが自分の決めた目標が達成できた、と嬉しそうに報告してくれるときが最も嬉しい瞬間です。そのような報告が毎日たくさん聞けるように、一緒に成長していきたいと思っています。

代表製品

キットパス
(全8色:白・赤・黄・青・緑・黄緑・橙・黒
税込価格:キットパス1本入157円、補充用2本セット157円)
○キットパスは、書いても消しても粉の出ない新しい筆記具です。
○鮮やかで見やすく、ソフトで快適な書きあじが楽しめます。
○チョークやマーカーのように消したときに粉が出ないので清潔です。飲食店や病院、OA機器の多いオフィス、教室などに最適です。
○固形マーカーなので揮発しないため、キャップの閉め忘れで使えなくなることもありません。人体に無害で刺激臭もないから安心です。
○最初から最後までかすれずに書くことができ、ホルダーを繰り返し使える補充用も用意しているため経済的で環境にやさしい商品です。
○キットパスカラーボード、キットパスシールなどのキットパス専用板面、消しやすい専用クリーナーと一緒にご利用下さい。
【会社概要】

■社 名 日本理化学工業株式会社
■設 立 1937年2月
■所在地 〒213-0032
      神奈川県川崎市高津区久地2-15-10
      TEL 044-811-4121(代) FAX 044-811-4441
■代表者 代表取締役 大山 泰弘
■URL   http://www.rikagaku.co.jp/
■E-mail consumer@rikagaku.co.jp

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