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キラリ輝くものづくり人づくり 平成18年度掲載企業

株式会社 南陽

南陽は、各種化粧料充填機、化粧料容器の設計・製造・販売、食品・医薬品などの充填機も取り扱っている。海外を含め実用新案など特許取得は20件を越え、他社がまねをできない数多くの技術的特長を持ち、得意先で必要な物を必要なときに必要なだけつくる、がモットー。「売上高や資本の大きさを競う会社ではなく、技術に優れた会社、人間関係を優先する会社にしたい」という嵐田光雄社長は「得意先の担当者はよきブレーン」と呼ぶ。ISO9001を取得しての社員教育、人づくりを実践している。

トップインタビュー(株式会社南陽 代表取締役 嵐田 光雄さん)

会社、特に中小企業が元気ある秘訣は人だといわれます。人材育成にどんなことを行っているのですか。

 「私たちのような規模の企業は、社外の人材養成教室などに長期出席させることは不可能です。社員の士気をどのように高揚させているかといえば、ISO活動を中心に活用しています。2003(平成15)年にISO9001の認証を取得しました。ISO活動には教育訓練という章があり、それに基づいた教育と人づくりといえますでしょうか。」

ISOを取得した理由と、それに基づく人づくりということを教えて下さい。

 「わが社は海外にも得意先があり、輸出活動を行っています。国内外のISO取得会社・得意先とお付き合いしてもらうためには、わが社にも同等のシステムと共通の話し合いができるレベルが必要ということです。
 ISO活動には「製品の品質だけではなく、会社の品質」まで範疇にしていると理解しています。企業には人、物、金、つまり従業員、製品、経営資源がありますが、それらをトータル的に基準づくりして、基準を満たす活動がISOの一番の目的です。ルールづくりから受注、見積もり、製造、製品管理、お客様の立ち会い、アフターサービスまで、一貫したやりかたを実践して継続する。それが社員の教育にも大きく役立っているのです。」

ISO活動が人づくりにつながるということを、具体例をあげて話していただければ幸いです。

 「わが社は経験10年未満の社員が工場長やISO推進委員になっていますが、ISO取得前は、物づくりのプロである年長の職人さんを使い切れていませんでした。取得すると有資格者リストが作成され、例えば工場長は外注管理、資材発注権などを含む資格が明確にされ、職人さんたちは管理部門には不向きですが、役割分担、指揮命令が明らかになったことで、職人さんへの伝達がスムーズになりました。職人さんの資格も有資格者リストで、旋盤、フライス盤などと明確にされ、物づくりへのプライドの高揚にもつながり、作業効率がアップしました。」

全従業員が集まる会合があると聞きました。

 「品質目標、品質方針など年1回全員で決めていますが、私が入らない全社員の集会があります。一人が必ず一件、何でもいいから気がついたことを発言します。そこで決まったことは、「経営者としてどうしますか」と私の所に持ち込まれます。できることとできないことがありますが、PDCA手法(プラン、行動、チェック、アクト)で、改善が進んでいきます。職人さんは自分で使う工具は大切に保管管理しますが、共用の場所・共用工具などはどうしても管理が行き届かなくなります。うちのトイレはピカピカでしょう。トイレの手洗場をもっときれいに、という声があがったからです。化粧品屋さんがくると、うちの工場よりきれいだと言われます。これも顧客満足・製品品質につながっています。」

ISO活動で、中小企業の特徴というか難しさはありますか。

 「大企業を中心としたISO活動は、私たちに合いません。ですからコンサルタントを3人面接しました。担当者が何人もいる大企業は、活動すべてを記録に残しなさいという考え方です。担当替えがある会社と、うちのように替わらない会社では当然、やり方が異なり、うちはどうしても記録に残さなければいけないもの以外、一切紙は使うなという考え方です。職人さんは物づくりのプロですが、日報を書くなど文章化は苦手で、ならば文章は必要ない。例えば加工した図面に年月日と自分の職印を押せばOKです。それで製品に対する責任範囲が明確化されるからです、うちは紙を含め廃棄物を極力出さず電子データとして記録します。従って環境ISOの取得は当面必要ないと考えています。」

一度ISOを取得すると維持管理費の問題もあり、更新しない中小企業もあると聞いていますが、どうですか。

 「費用対効果でしょう。うちはこれまで申し上げたように予想外の効果が上がっているのです。今後とも継続的活動が大切だと思っており、お客様の立ち会いといいましたが、現場の職人さんとお客様を絶えず合わせ、お客様の思いが現場に直接伝わりますから。「ありがとう」の言葉がダイレクトに聞ければ、楽しく仕事ができるようになり、より責任と提案を持つようになるからです。」

数多くの特許を取得して参入障壁を築いていることが大きな力になっていると思います。取得への意欲、具体的な名称も教えてください。

 「この業界では私は後発です。認知されるためにはどうしたらいいのか、それは特許権法の工業財産制度を利用するのが一番早いということです。最初に勤めた会社は化粧品の「中身」をつくる会社で、そこでの経験が基本になっていると思います。独立前に外国製を含め数々の機械を使いましたが、全部納得いきませんでした。機械屋さんが機械をつくっているからで、化粧品屋が化粧品の機械をつくれば負けないはずだ、という思いでした。うちの基本は小分け充填方式です。例えば口紅はどろりとした塊で、そのままでは使えません。きれいにデザイン化され付加価値がつけられて初めて商品になります。それが小分け充填です。うちの特許の延長線で、小分け充填がかなり標準化されてきたと思います。各種化粧料の圧縮成形装置・粘状化化粧剤多色充填機・口紅充填成形機などが代表的特許です。」

海外に目を向け、自社製品を輸出しているそうですね。優秀な製品のコピーなど気になりませんか。

 「世界各国が相手ですが、昨年3月からは台湾の機械メーカーと契約して、技術移転し機械の製造販売を始めています。コピーされれば、うちの機械がそれだけ優秀だということ。自分で考え出した技術が人のためになり、世の中に役立って初めてその技術は完成されたと思っています。私はコピーされれば本物、それ以上の製造技術を考えればいいと思います。日本の技術は高い。先週は台湾、インドネシアの人と打合わせました、今度はフランスの大手メーカー本社から技術相談と見学に来ます。」

技術に優れた会社にしたいということですが、化粧料充填機類の粉末圧縮・成型技術を他分野でも展開したいとお聞きしました。

 「手始めにインターネットの技術者系サイトの「イプロス」にPR掲載したところ、紛末圧縮成型技術に付いて、食品や薬品会社、電気メーカーから大きな反響があり試作商談中で、異業種で共通技術の要求があることに驚きました。
産学連携では大阪産業大学と、燃焼合成法による金属粉末の圧縮成型技術が採用されました。川崎市内の会社とは、粉塵のでないチョーク「キットパス」の話が進んでおり、口紅の充填技術が産業廃棄物であるホタテ貝の殻を粉砕してチョークに活用するもので、環境と人体に優しいおもしろい試みだと思っています。」

社員のコメント ISO管理責任者 嵐田 雄一さん

ISOを取得する前までは、工場長はいるんですが名前だけで、権限が明確でありませんでした。仕事を頼む時でも「これお願いしたいんですが」と下から出るような感じで、「できない」と言われればそれまでで、会社の中が組織化されていない状態でした。取得後は役割分担がはっきりし、責任と権限が明確化されることにより指示系統が確立され、効率があがりました。ISOは改善の提案も求めており、現場からの提案でまた効率があがるということです。社長にものを言えるようになり、仕入れ先を変更してもらったこともあります。うちの社長は発想力がすごい。だれも思いつかないことがどんどん頭に浮かび、お客さまにも従業員にもうそをつかないところがいいですね。だから皆ついてくるんです。わたしは大企業に勤めていましたが、小さい会社の方が全てにおいて小回りがきくと身にしみて感じ、今後もISOの継続的活動に励みます。 

【事業内容】

 ●化粧料充填機類の設計、製作、販売
 ●化粧料容器の設計、製作、販売
 ●化粧料の輸出販売

【代表的な製品】

写真左 口紅金型充填機でつくられた商品<br>写真右 多色粉末供給圧縮成形機の商品
写真左 口紅金型充填機でつくられた商品
写真右 多色粉末供給圧縮成形機の商品
【会社概要】

■社 名 株式会社 南陽
■設 立 1984年
■所在地 〒213-0002
      神奈川県川崎市高津区二子5-14-40
      TEL044(811)5661 FAX044(811)5672
■代表者 代表取締役 嵐田 光雄
■URL    http://www.nanyo.org/
■E-mail  nanyoo@mwb.biglobe.ne.jp

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