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かわさきマイスター活動レポート

「かわさきマイスター匠展」2日目レポート

提供:川崎市

実演コーナー 息を呑むマイスターの熟練技

9月2日(木)も、会場となった多摩区総合庁舎1階アトリウムで、マイスターたちの熟練技が繰り広げられました。参加された5人のマイスター(認定年度、職種)は、浅水屋甫さん(平成16年度、広告看板製作)、栗田佐穂子さん(平成14年度、洋裁・介護服)、只木角太郎さん(平成11年度、洋服仕立て)、三上峰緒さん(平成14年度、美容師)、久保田宗孝さん(平成21年度、デザイン彫金士)です。

■1日目、3日目の様子はこちらでご覧いただけます。
 マイスター匠展 1日目
 マイスター匠展 3日目

浅水屋 甫さん(広告看板製作)―手描き表札作り

手描きの良さを追求し、あらゆる書体を筆一本で描くことができる浅水屋さん。前日に続いて表札作りを披露し、白木のヒバ材に一気呵成に描きあげる早業で来場者を感嘆させていました。
まずはお客さんに名前を書いてもらいます
まずはお客さんに名前を書いてもらいます
「20分で仕上げちゃうよ」とマイスターが声を掛けると、「それなら描いてもらおうかな」と来場者。匠の見事な筆跡で描かれた表札が破格の1,500円で購入できるとあって、飛ぶような売れゆき。1日で用意してきたヒバ材が完売しました。中には昨日、会場を通りかかり、「今日は是非ほしい」と注文にやってきた方もいました。
こんなに大きな筆もあります
こんなに大きな筆もあります
この道60年の浅水屋さん。子供の頃から文字や細かい作業が好きだったといいます。「丁稚奉公は辛かったけれど、結局、自分に合っていたんだろうね」と笑いながら話してくれました。普段は小さな看板広告だけでなく、工場やガスタンクに文字を描くなど、地上数十メートルの高さで仕事をすることも。そんな時は1文字2メートルの大きな文字を描きます。

栗田 佐穂子さん(洋裁・介護服)―帽子、手提げ袋講習会、ユニバーサルデザインの紹介

栗田さんは誰もが着やすく、なおかつお洒落な「ユニバーサルファッション」の先駆者。会場にほど近い小田急線「向ヶ丘遊園駅」前の「アソシエCHACO」で、介護服の相談に乗っています。「機能性を備えただけの服では、出かけられない場所もあります。障害を持った方や介助が必要なお年寄りでも、TPOに合わせて着られる服を着て、外に出かけて元気になってほしい」と話します。
「らくらくベスト」(男性マネキン)と、マグネット式のボレロ、ひざ掛け(女性マネキン)
「らくらくベスト」(男性マネキン)と、マグネット式のボレロ、ひざ掛け(女性マネキン)
一見、普通の洋服なのに、脇のボタンをはずすと1枚の布状になり、寝たままの着脱が可能な「らくらくベスト」や、リューマチなどで指先に力が入りにくい方でも簡単に着脱できるマグネットボタン式のボレロ、スカートに見えて実は1枚布のひざ掛けなど、機能性やデザイン性に優れた洋服が展示され、来場者の関心を集めました。

男性用はベストとネクタイ、女性用はワンピースをプリントしたエプロンもあります。「たった一枚のエプロンだけど、これをつけただけで、お年寄りの表情が生き生きとしてきます」と栗田さん。全国から相談が寄せられるますが、服を着た人や介護する家族の笑顔を見ると、また作ろうという意欲が湧くと言います。「人に喜んでもらいたい」という気持ちがマイスターの原動力です。
栗田さんはボランティア活動にも熱心です。この日は、人が笑顔になれる活動の輪を広げたいと、本来はX線治療で髪の毛が抜けた人がおしゃれに装える帽子と、裁縫は苦手という人向けの簡単な手提げ袋の無料講習会を開きました。栗田さんは各地でこうした講習会を開いており、中には数年来、通ってくる熱心なファンも。帽子はたった2枚の余り切れがあれば、作れる手軽なもので、習ったことをお友達に教える参加者も多いと聞きました。
手作りの帽子をかぶり笑顔の講習会の常連さん(右)と栗田さん
手作りの帽子をかぶり笑顔の講習会の常連さん(右)と栗田さん
講習会はこの日も大盛況で、参加者は楽しそうにミシンに向かっていました。常連の方も、50年ぶりにミシンを踏んだという方も、手作りの帽子をかぶってにっこり。「健康な人も障害を持った人も、皆同じなんだと気づいてもらえる場を提供したい」と栗田さんは語ります。

■アソシエCHACOのホームページ
http://www.a-chaco.com/

只木 角太郎さん(紳士服と婦人服の洋服仕立て)―シャツジャケットの仮縫い、紳士服の展示

只木さんは、日本でただ一人、紳士服と婦人服の双方を仕立てることができる匠です。オートクチュールからデイリーユースまで、あらゆる洋服を扱っています。また、デザイン、仮縫い、パターンを引く、縫製の全行程をひとりでこなせる、万能の仕立て職人です。
今年の秋用にデザインした、ウール素材の軽い男性用ジャケットの仮縫いを実演。鮮やかな手並みに、来場者は足を止め、見入っていました。ある女性は旦那さんのジャケット作りについて熱心に相談。只木さんは裾や見返しの取り方のコツをポイントを押さえて伝授し、女性は「困っていたので、とても助かりました」とプロの適切な指導に感激していました。仮縫い中の只木さんは部位によってアイロンで生地のくせをとったり、数ミリ縫い目をずらすなど、着心地や仕上がりの美しさを想定し、随所に工夫を凝らしていました。
無尽蔵のアイディアと抜群のセンスを示すたくさんのデザイン画
無尽蔵のアイディアと抜群のセンスを示すたくさんのデザイン画
オーダーメードの良さを尋ねると、「着心地、着やすさ、その人にフィットすること。既製品ではこうはいかない」と只木さん。「手作りする人が増えてほしい」と話します。市民祭や区民祭では無料で配る型紙が大人気です。

只木さんは、一目見ただけでお客さんのサイズを見抜いてしまうといいます。最初に見立てた生地が気に入るお客さんばかりというお話に、抜群のセンス、見立ての確かさを感じました。
台湾でのファッションショーに出品した紳士用ジャケット
台湾でのファッションショーに出品した紳士用ジャケット
国内外でのファッションショーの経験も豊富な只木さん。毎年ヨーロッパとアジアで交互に開かれるショーには30年来、参加しています。

展示品のジャケット、ベスト、シャツは今年参加したばかりの台湾のファッションショーへ出品した作品です。紳士物ジャケットは日本は6着に制限されていましたが、そのうちの一着がこれ。袖からネックポイントまで、一枚の布で作った美しいラインが特長です。

「本当はもっと派手なデザインが自分らしい」と笑うマイスター。その道を極めながら、創作意欲はますます盛んです。

★只木さんのより詳しい情報はコチラ

三上 峰緒さん(美容師)―結ぶ・編むの基礎を実演指導、「夢のある編み込み」の紹介

水引や組みひもの編む・結ぶの技や慶弔の知識を取り入れ、三上さんが独自に考案したのが「夢のある編み込み」。この技術を学ぼうと、全国で研究会が開かれています。「普段はできない作品としての髪型だから、この名前を付けたのよ」と三上さん。想像上の鳥、鳳凰を象った「鳳凰子飛(ほうおうここにとぶ)」や、たわわに実った稲穂を表現した「一粒万倍(いちりゅうまんばい)」など、ファンタジックで華麗な作品の数々が、来場者の溜め息を誘っていました。
「鳳凰子飛(ほうおうここにとぶ)」。冠(赤いとさか)は鮑結びで先は老の波という、たいへんおめでたい意匠です
「鳳凰子飛(ほうおうここにとぶ)」。冠(赤いとさか)は鮑結びで先は老の波という、たいへんおめでたい意匠です
「一粒万倍(いちりゅうまんばい)」。小さな三つ編みの束で米粒を表現しました
「一粒万倍(いちりゅうまんばい)」。小さな三つ編みの束で米粒を表現しました
造形だけではなく、色合いの妙も実に見事。色が持つとされる意味を考え、バランス良く組み合わせてあります。「夢のある編み込み」の他、全10色、10本の水引を組み合わせて編んだ「十編み花」も三上さんならではの作品。色の法則に親しみ、興味を持ってもらおうと作ったといいます。ここ数年、インターンシップ制度で高校から研修生も受け入れるなど、後進の育成にも力を注いでいる三上さん。「物事の表面ばかり見るのではなく、色に意味があるように、元があることを知ってほしい」と語ります。
組みひもで作った「四葉のクローバー」
組みひもで作った「四葉のクローバー」
実演指導では、ワイヤー入りの組みひもを使い、来場者に手本を示しながら、編む・結ぶの基礎を指導。最初に「これを知っていれば、他の形に応用できる」という「柏」の結び方・編み方、次に簡単な応用編として「四葉のクローバー」、その一葉を棒状にのばして「剣カタバミ」などを教えていました。「とても上手よ」と褒めながらの指導に、来場者は時の経つのを忘れて熱心に取り組んでいました。

匠展初参加のマイスター

久保田 宗孝さん(デザイン彫金士)―加工実演、写真とフォトフレームで作品を紹介

デザイン、修理、加工まで、ジュエリーや時計に関するすべての工程を一人でこなす久保田さん。「全部やらないと気が済まない。自分が納得しないと、お客さんに嘘をついているようで申し訳ない」と話します。初参加の匠展では、これまで製作した作品を写真とフォトフレームで紹介する他、来場者のジュエリーの修理、加工を受付け。次々と注文が入り、大忙しの様子でした。
ダイヤの指輪のサイズ直しを注文した女性は、「よそではカーブができないと言われたり、パターンに合わないから直せないと断られたり。長年、考えていたことなので、よかった」と感激。また、指輪の石がはずれてしまったという女性は「対面だと、確かだし安心」と話し、石をはめ、爪を内側にしっかり立て直してもらった指輪に大満足の様子。「ああ、嬉しい」を連発していました。

指輪のサイズ直しや一般的な修理、加工なら、マイスターの熟練技にかかれば、ほんの数分で仕上がってしまします。久保田さんはバリをとり、ピカピカに磨いてからお客さんに渡します。最後まで丁寧な仕事です。
バーナーの炎でリングを溶かします
バーナーの炎でリングを溶かします
「リュ―ター」という機械でリングを研磨
「リュ―ター」という機械でリングを研磨
はずれた石をはめる修理もほんの5分程度。まっすぐだった既製品の爪が内側に倒され、石がはずれにくく、爪がひっかかりにくくなりました
はずれた石をはめる修理もほんの5分程度。まっすぐだった既製品の爪が内側に倒され、石がはずれにくく、爪がひっかかりにくくなりました
「職人は人前に出ることがないので、こうした機会は嬉しい」と久保田さん。30年前の独立も、お客さんの顔を直接見て、イメージにあったものを創作したいという気持ちからでした。

「その人に合わせて作れるのが手作りの良さ」といいます。リングひとつとっても、既製品は枠がありますが、久保田さんは石に合わせてリングを作ってくれます。
指にぴったりのサイズに指輪を直してもらい、大喜びのお客さん
指にぴったりのサイズに指輪を直してもらい、大喜びのお客さん
オーダーメードでは、様々な作品を手掛けてきました。変わったものでは、事故で指2本をなくしたお客さんからの注文で、プラチナと金にダイヤをはめ込んだゴージャスなサックを創作したことも。「楽しくお酒が飲めるようになった、と聞きました」と、マイスターも嬉しそうです。この日は、お任せで7万円のペンダント加工の注文も入りました。

自然の中での遊びが好き、というマイスター。花にとまった蜂をデザインに生かしたり、遊びはアイディアの源にもなっています。

★久保田さんのより詳しい情報はコチラ