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かわさきマイスター活動レポート

「夏休み企画 」 「びっくり!食品サンプルづくり」

川崎市内最高峰の匠・田中司好(たなかしこう)さんに学ぶ、匠の技と魂(こころ)

提供:川崎市

「まるで本物みたい♪」な食品サンプルはどうやって作られるの? 食品サンプルづくりを体験講座

食品サンプルづくりで、かわさきマイスターに平成21年度に認定された田中司好さん
食品サンプルづくりで、かわさきマイスターに平成21年度に認定された田中司好さん
揚げたての天ぷらやみずみずしい果物がたくさん盛られたスィーツなど、レストランの店頭やデパートの食品売り場等で見かける美味しそうな食品サンプル。皆さんも一度は目にしたことがあるはず。


そんな見ているだけでも楽しい「食品サンプル」を匠の技を間近に見ながら体験できる「びっくり!食品サンプルづくり」体験講座(受講料は1,500円、材料費込み)が、8月27日(土)、横浜市関内にある横浜市技能文化会館1階の匠プラザ内で開催されました。
今回の講座は、ナポリタンなど数々の食の発祥の地である横浜と、その食品サンプルをつくるマイスターがいる川崎のコラボレーション企画です。
会場では、公益社団法人全日本司厨士協会の協力を得て、食品サンプルや、皇族の方が使われた食器なども数多く展示されていました。

 講師は川崎市内最高峰の匠、平成21年度認定のかわさきマイスター・田中司好さん。テレビや雑誌などでも活躍されている「食品サンプル」づくりの匠です。
照りとツヤが食欲をそそる「金目の煮付け」。和食の中でも煮魚や焼き魚などにマイスターの腕が光る田中さんの作品
照りとツヤが食欲をそそる「金目の煮付け」。和食の中でも煮魚や焼き魚などにマイスターの腕が光る田中さんの作品
「焼き魚」も焦げ目と魚の鮮度の表現が絶妙。リアリティと美味しさのバランスを見極める感覚はまさにマイスターならでは
「焼き魚」も焦げ目と魚の鮮度の表現が絶妙。リアリティと美味しさのバランスを見極める感覚はまさにマイスターならでは
田中さんが、その匠の技として高い評価を得ているのは、どんな食べ物でも本物を見ずに色や形をリアルに再現できること。


特に再現が難しいといわれ、通常は20年以上の経験が必要とされる「生魚」のサンプルづくりは、田中さんの高度な技がひときわ光る得意なテーマです。


色彩はもちろん、生きた魚の持つハリと弾力が見事に表現された作品は、本物を忠実に再現するだけにとどまらず、食品サンプル本来の役割である「いかに美味しそうに魅せるか」というところにも匠の魂(こころ)が細部にまで注がれ、まさに「匠の技」が光る作品。


そんな田中さんの食品サンプルは、見る人の目を楽しませるだけでなく、食欲をかきたてる力をもった魅力ある食品サンプルとして、マスコミをはじめ、多くの人々からの注目を集めています。
【田中さんの連絡先】
有限会社 つかさサンプル

■所在地      川崎市宮前区水沢3-3-15
■電話    044-976-0828
■HP     http://www.tsukasa-sample.com/

■田中さんの詳しい紹介ページはこちら

見て「美味しそう!!」、触れて「あったかい!!」  歓声あがる実演披露

午前2回、午後1回に分けて、1日3回行われた体験講座には、夏休み最後の土曜日を迎えた小中学生がそれぞれの回ごとに10人ほど参加しました。講座には田中さんの息子さんの信司さんもサポートに加わり、まずは田中さんによるレタスと天ぷらの食品サンプル作りの実演が披露されました。
お湯の中にロウを流し込むだけで、もうなんとなくレタスに見えてくる…そんな田中さんの鮮やかな手さばきに子ども達も興味津々
お湯の中にロウを流し込むだけで、もうなんとなくレタスに見えてくる…そんな田中さんの鮮やかな手さばきに子ども達も興味津々
実演で最初に作られたのは「レタス」。「レタス」作りで必要な材料は、油絵の具でレタスの素材の色となる薄黄緑に着色されたパラフィン(ロウ)。これを沸騰したお湯で温めて液状にしたものを田中さんがおたまですくい、お風呂の湯船の温度と同じくらいの約41度ほどに温められたお湯の中にすべらせるようにおとします。


 お湯の中でふわぁっと拡がるロウを丁寧にすくい、手でまるめると、あっという間に小さなレタスの塊が出来上がりました。


 そんな匠の技を間近で見ていた子ども達とその保護者からは「うわぁ、すごい!!」と感嘆の声。そんな子ども達に、田中さんは出来上がったばかりのレタスをナイフで半分に切り、「さわってごらん」と差し出すと、子ども達は一斉に手を伸ばし「うわぁ、あったかい!!」「やわらかいっ」「本物のレタスみたい」と口々に感想を言い合いました。
天ぷらの衣づくりの様子。「天ぷらは少し高い位置から流し込むのがコツ」と子ども達にレクチャーする田中さん
天ぷらの衣づくりの様子。「天ぷらは少し高い位置から流し込むのがコツ」と子ども達にレクチャーする田中さん
参加した子ども達が匠の技にすっかり魅了されたところで、次は「天ぷら」づくりへ。


衣となる薄い黄色に着色された液状になったパラフィン(=衣のタネ)を先ほどレタスを作ったのと同じお湯の中に投入し、事前に準備されていたエビ、カボチャ、ナス、シシトウに順に衣をつけていきます。


先ほどのレタスとは違い、高い位置からタネをたらしていくと、それが面白いように天ぷらの衣になっていく様子に参加者の目が釘付けに!


様子を見守っていた保護者のお母さん方からは、「実際に天ぷらを作るときと同じなのねぇ」「私が作るよりも上手だわ・笑」などの声があがりました。

その声を聞き、田中さんは「お母さんが作る天ぷらの方が上手だよ」と子ども達に笑顔で話しかけつつ、「衣をつけるとき、蕎麦屋さんの天ぷらは衣が多め、高級店は少なめに。同じ天ぷらでも衣で違いが出てきます」とコツを伝授。そして、一通りの天ぷらが完成したら、それをご飯のサンプルが入った丼に盛り付けて、「天丼」が完成です!!
レタス(緑と白)と天ぷらの衣(黄色)用の材料。熱湯で温められています
レタス(緑と白)と天ぷらの衣(黄色)用の材料。熱湯で温められています
完成した天丼。エビはもちろん、シシトウやナス、カボチャの素材がしっかり見えるように、そして美味しそうに見えるように作るのがマイスターの技です
完成した天丼。エビはもちろん、シシトウやナス、カボチャの素材がしっかり見えるように、そして美味しそうに見えるように作るのがマイスターの技です
天丼が出来上がり、子ども達の歓声が上がる中、
「では、エビの天ぷら作ってみたい人いますか?」
…と、田中さんが子ども達を見ると、なんと全員が挙手。一人ひとり、天ぷらを作ってみることになりました。
初めてのサンプル作りに挑戦する子ども達は、田中さんの横に立ち、お湯の中にタネを落としそのタネの上にエビをのせ、衣をお湯の中でひっくり返しエビに形良く衣をつけていきます。少し緊張した面持ちで慎重に作業をする子や自分ひとりで大胆に衣をひっくり返す子など、田中さんは一人ひとりにアドバイスをしながら「よし、うまいぞ」「ここの衣はとっちゃおう」と声をかけて、美味しそうな海老天が完成しました。
海老天づくりに挑戦中。田中さんと一緒に高い位置から衣のタネを落としいれていきます。エビが乗りやすいように形を見定めて慎重に…
海老天づくりに挑戦中。田中さんと一緒に高い位置から衣のタネを落としいれていきます。エビが乗りやすいように形を見定めて慎重に…
衣を流しいれたら、エビをのせて衣で包みます。「余分なところはとっちゃって見栄えをよくしましょう。上手上手!」田中さんの声にちょっと緊張しながらも丁寧に形を整えます
衣を流しいれたら、エビをのせて衣で包みます。「余分なところはとっちゃって見栄えをよくしましょう。上手上手!」田中さんの声にちょっと緊張しながらも丁寧に形を整えます

最後はタルトやマカロンに色々デコレーションをして、ストラップやキーホルダー作りに挑戦

「どれにしようか迷っちゃう!!」真剣にサンプルセットを選ぶ子ども達
「どれにしようか迷っちゃう!!」真剣にサンプルセットを選ぶ子ども達
マカロンやクッキー、タルトと共にカラフルなフルーツパーツがセットになっていて、見ているだけでも楽しいサンプルセット
マカロンやクッキー、タルトと共にカラフルなフルーツパーツがセットになっていて、見ているだけでも楽しいサンプルセット
田中さんと一緒にクリームしぼり。美味しそうに見えるよう、丁寧にクリームを搾り出します
田中さんと一緒にクリームしぼり。美味しそうに見えるよう、丁寧にクリームを搾り出します
実演が終わると、最後はいよいよオリジナルのストラップ、キーホルダーづくりです。


子ども達は、タルトやマカロンの土台にオレンジやメロンなどのフルーツやチョコなどのデコレーションパーツがセットされた素材を選び、着席。その選んだ土台に田中さんと息子さんの信司さんが一人ひとりにクリームをしぼっていきます。


自分でクリームを絞りたい子には、田中さんが「コツは太く、ゆっくり」とアドバイスしながらサポートしたりするなど、賑やかに作業が進みました。


クリームが絞り終わると、その上にカラフルなフルーツのパーツを盛り付けていきます。フルーツには美味しそうに見える表面とそうではない裏面があるので注意するようにと田中さんが子ども達に声をかけると、自分のフルーツパーツを改めてみて、メロンの筋やイチゴの断面の色づけなどその技の細かさに驚く子も多くいました。
「このオレンジは右がいいかな、左かな。こっちのパインはどうしよう?」…悩むのも楽しいデコレーション作業。世界に1つだけのスィーツストラップが出来上がります
「このオレンジは右がいいかな、左かな。こっちのパインはどうしよう?」…悩むのも楽しいデコレーション作業。世界に1つだけのスィーツストラップが出来上がります
彩りをあれこれ考えながらパーツを飾る子ども達の顔はみんなとても真剣。そして自分の作品が完成すると「美味しそう!!」と自画自賛・笑。その笑顔はとびっきりのものでした。


 講座の感想を子ども達に尋ねると「面白かった!!」「出来立てがけっこう熱くてびっくりした」などの声があったほか、参加した保護者の方からは「匠の技を間近で見られて、大人も楽しめました。貴重な機会をありがとうございました」との声が多くきかれました。
 講座終了後、田中さんに今回の講座の感想を伺うと、「どの子達もみんな楽しんでくれていたので、それが何よりでした。とても上手に作る子もいて私も楽しかったです。自分達の街にこうした技術があることを子ども達を通して大人にも知ってもらうことが私の役目だと思っています」とお話してくださいました。

 実際の現場ではパラフィンを使用することはもうなくなっているそうですが、今回の講座のような場ではパラフィンを使用することで、出来立ての熱さや形が自由に変えられるということが子ども達にもわかりやすく伝わっていました。子ども達にものづくりの楽しさを伝える目的が見事に達成された今回の講座は、田中さんのこうした一工夫があるからこそ。技を磨くための労力を惜しまず、日々研究を重ねるとともに、多くの人々にものづくりの楽しさを伝えているマイスターならではの講座でした。
横浜市技能文化会館

■住所   横浜市中区万代町2丁目4番地7
■お問合せ 045-681-6551
■HP   http://gibun.jp/topics.html