K君の文法はサポートに徹したと前回書きましたが、これがお互いに大変なことになったのです。大変でしたが、私の大学受験指導の転換点になったとも言えますから、貴重な体験でもありました。私的な話で恐縮ですが、私は学生時代に英語を学習した時「せっかくやるなら使える英語を学習したい」と思い、音声から学習しました。耳で聴いた英語を発音し、それを記憶し、蓄積することで英語の知識を身につけて行った「音声過激派」だったのです。他方のK君は、英語を読む時、全ての単語にSVOCだとか品詞や関係詞をメモしないと読めないという、かなり極端な文法過激派でありました。私が訳を教えてあげても、K君は「なぜそうなるのかを文法的に説明して欲しい」と要望しました。講師としては当然それに応える義務があります。それからは本当に必死でした。なにしろ音声過激派の私が、Ｋ君の脳の中に入り込まなければならなかったのですから。まるでその辺の通行人をつかまえて「エスパーになれ！」という無茶振りか、イスラーム教徒に「仏教徒になって」と無理矢理転向させるような酷なことです。