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ZOOM UP:かわさきの元気企業

第12回 (有)伊勢銀 肉の伊勢屋 畑幸男氏に聞く

素材と製法にこだわった本場の味、極上のハム・ソーセージを全国へ

2013/02/01

地元はもちろん全国にファンがいるハム・ソーセージの専門店

小田急線読売ランド前駅から1~2分程歩いたところに、「ドイツ風自家製ハム・ソーセージ専門店」と大きく掲げられた肉屋があります。清潔感のある店内に足を踏み入れると、ショーケースには、数十種類ものハムやソーセージがずらりと並び、華やかな切り口のハムや太さ、長さ、色の多彩なソーセージに出迎えられ、こんなにも種類があったのかと驚かされます。
笑顔で快く迎えてくださった有限会社伊勢銀 肉の伊勢屋(読売ランド店) 代表取締役 畑幸男(はたゆきお)さんにお話しを伺いました。


「うちはベーコンが一番売れるんです。これを食べると他のを食べられなくなるって」
「このソーセージ、中の肉は同じだけど、細いほうが羊腸に詰めたもの、太いほうが豚腸に詰めたもの。豚腸のは皮が厚い分旨味が逃げずに残っているから美味しい。一度こっちを食べると次からも必ずこっちを買っていきます」
「このコンビーフは高いけど、缶詰のものとは全く違う。スライスして温かいご飯に乗せると最高です」
「ビーフジャーキーにはもちろん和牛を使っています。ちょっと常温に置いてから食べると、柔らかくなって本当に美味しい。やみつきになります」

一見何の変哲もない肉屋に見えるこの小さなお店の奥では、知る人ぞ知る極上のハムやソーセージが作られているようです。
畑さんに、その真相を伺ってみました。


全てこちらで製造しているのですか

「そうです、ハムとソーセージを40種類ほど、私と職人2人と最近入社した若者と4人で作っています。
国産のブランド肉と本場ドイツのスパイスを使い、ドイツ製の機械で製造しています。肉をミンチにしたり、漬け込み液を作ったりという仕込みから全て手作りですから、とても手間がかかる作業です」

お客様は地元の常連さんですか

「ここら辺は海外に赴任していたことのある方が多いので、本場の味を知っている人も少なくありません。そういう人はちょっと高くても、この味が食べたくて、よく買いに来てくださいます。近所の人もいらっしゃいますが、遠くからわざわざ車で来てくださる方も多いです。

それから、全国発送もしています。贈り物として食べていただいた方から、次は直接注文が来たりもします。
お中元やお歳暮の時期になると400もの注文がきます」


「肉の伊勢屋」がハム・ソーセージの専門店になるまで

平成16年に食品加工士として、川崎市が認定する川崎市内最高峰の匠”かわさきマイスター”に選ばれた畑さんに、これまでのことを伺いました。

ハムやソーセージを作るようになったきっかけを教えてください。

「お店を開いたのが45年くらい前です。当時は精肉だけで十分に採算がとれました。ですが、スーパーが出来始めて、数年でお客をとられてしまうだろうと、言われていました。その頃、店の売上は最盛期だったのですが、先のことを考えて、肉屋として生き残るために加工品へシフトして行こうと思いました。そこで、本場ドイツで8年間修行してきた職人さんのところへ習いに行きました。その当時、1日10万円の講習料とこれらの機械を買うことを条件に教えてもらいました。

かなりの投資でしたが、当時は余裕がありましたからね。おかげで、今も店を続けていられます。
売上の数字は以前ほどではありませんが、悪くもありません」


インタビューの最中も、次々と来店するお客様の注文に、ハムをスライスしたり、肉を量ったり、手際よくこなしていく畑さん。
「元気だった?」「今日は何にする?」と常連さんとの会話もはずみます。

どれくらい修行すると一人前になれるのですか

「その人次第かな。
肉を練るのも、スモークするのも機械ですが、その加減を調整するのは、やはり職人の勘です。勘が鋭い人もいれば、じっくり覚える人もいます。どちらがいいとは言えません。

レシピはドイツのものを日本語にしてあって、最初は教わった通り、レシピに忠実に作ります。塩分濃度は、ドイツのものとはちょっと変えています。気候が違うし、ドイツ人と日本人とでは味覚も違います。慣れてくると、自分で工夫して具材を変えてみたりもします。例えば、大葉とか桜の葉を入れて季節感を楽しんだり、チーズを入れてみたりするとまた美味しくなります。

お客様に飽きられないように、常に新しい味に挑戦しています。
今も鴨をスモークしてみようと思い、調味液に漬け込んでいるところです」

商品へのこだわりを教えてください

「本物を作ることです。
素材は“かながわ夢ポーク”と国産の天日干しの天然塩。レシピとスパイスはドイツと同じものを使い、ドイツ製の機械で作ります。混ぜ物(増量)は一切しません、保存料などの添加物も使わないので、真空パックしているもの以外は賞味期限も長くありません。

それに、うちの商品は安くありません。こだわりぬいた素材で、職人が十分に手間をかけて作っているからです。ソーセージを作るのに1人の職人が4時間以上かけています。

この味と値段に納得して買いに来てくださるお客様のために作っています。
本物を売ることによって、お店の信頼につながり、プロとしての自信も持てますから」
畑さんの穏やかな口調の中に、職人としての誇りと自信が伝わってきました。
「本物を作る」ということが如何に大変か、世の中には本物でないものがどれだけ出回っているか……ふと考えさせられました。



職人として、経営者として、「常に先を見る」

店内には、“かながわ名産品”に認定された和牛ビーフジャーキーとコンビーフの認定証、“かわさきマイスター”の認定証に加えて、これまで畑さんやお店のスタッフが受賞してきたコンテストの賞状やメダルがずらりと飾られています。

コンテストにこだわる理由は

「店に貫禄が出ます、本場の賞ですから。
それに、技術向上にもなります。金賞をいくつも受賞したりすると、新聞やテレビで取り上げてもらえたりして、そうすると、本物を求めていらっしゃるお客様が増えますね。1年くらいは影響があり、いい宣伝になります。

今年(2013年)の5月には4年ぶりにコンテストに出る予定です。
まだまだ挑戦していきます」

仕事をしていく上で心がけていることは

「プロとして、まず、先を見ること。
追われるのではなく、仕事を追う。これが一番大切。どんな商売でも先を見ないと人様から遅れをとる。絶えず先を読んで、先を見て仕事をしていく。新しいことに挑戦していく。職人として作業をこなすだけではなく、世の中の流れを見て、ある程度先を読んで、どんどんやっていかないと。

そういう気持ちがあるから今まで出来たんじゃないかな。私は職人でもあるけど、経営者でもあるから。全部をマスターしなきゃという気持ちでいつも考えています、まだまだこれからも」

肉屋の最盛期にハム・ソーセージの加工にシフトし始め、今も常に新しい商品を模索していく畑さんの言葉には説得力がありました。

職人として畑さんの技と心を継いでくれる人はいらっしゃいますか

(左から柴谷さん、森さん、畑さん)
(左から柴谷さん、森さん、畑さん)
「若い頃から手伝ってきた娘(次女)と職人歴20年の柴谷(しばや)隆英さん、それから最近脱サラしてうちに勉強しに来ている森浩太郎くんとで、よくやってくれています。
私ももう歳なので、そろそろ2代目に任せて、監督になろうかと思っています。

そうなると、(惣菜や精肉は減って)手間のかかる加工品に絞られていくと思います。本当に手間がかかりますから。
こだわって、手間ひまかけて作ったものを、この店と長女がやっている新百合ヶ丘の店で、目の届く範囲で売る。電話注文も受けますけど、この規模で品質を落とさずに出来る範囲のことをしていきます」
優しい口調の中に凛とした職人魂が感じられる畑さん。
そんな畑さんに“2代目”と認められている柴谷隆英さんは、

「若い頃からこの店で働いてきたことを良かったと思っています。おやじさんがやってきたことを崩さないように、ゆくゆくは超えられるようにと思っています。今までは職人として作ることがメインでしたが、これからは経営のことも勉強しないと」

と、作業の手を止めて語ってくださいました。

引退をほのめかしながらも次のコンテストや新商品開発への意欲を見せる畑さんの、その“本物”へのこだわりと新しいことに挑戦し続ける心意気が、2代目の柴谷さんにもしっかりと受け継がれているようです。

畑さんが作る極上のハム、ソーセージを食べてみたい方は、ぜひお早めに。
そして、これからも、畑さんが弟子に伝える「肉の伊勢屋」の味は、ずっと受け継がれていくことを確信しました。



かわさきマイスター 畑幸男さんの紹介ページはこちら

有限会社伊勢銀 肉の伊勢屋 読売ランド店
神奈川県川崎市多摩区西生田3-9-20
TEL:044-966-9336
定休日:日曜、祝日
営業時間:9:00~20:00
※「肉の伊勢屋」ホームページは近々開設予定。

お問い合わせ

株式会社フューチャーリンクネットワーク(TEL:047-495-0635)
川崎市経済労働局労働雇用部(TEL:044-200-2276)

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