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ZOOM UP:かわさきの元気企業

第7回 東洋大柴田範子准教授に聞く

在宅介護の“研究”と“実践”を励行

2011/02/17

 介護の領域にかかわって20年余。教職として介護・福祉の指導、研究の傍ら、実際にデイサービスセンターを川崎市内に設けて地域密着サービスを実践している人が、東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科の柴田範子准教授だ。“在宅介護”が専門の柴田准教授は教壇から現場へ――を実践。NPO法人「楽」を設立し、川崎市内に2か所の介護事業を運営するなど、福祉関係志望の学生への教育の傍ら、市民の福祉・介護事業に取り組んでいる。そんな柴田准教授にお話を伺った。

考えているだけでは物事は進みません

在宅介護が専門の柴田准教授
在宅介護が専門の柴田准教授
――NPO法人「楽」を立ち上げられて今年で早7年。当時のいきさつから。

 上智社会福祉専門学校で教える立場になって、学生の巡回実習に付き合いますね。現場での人に対する対応が非常に雑なことが分かり、自分たちが変えていかなければ…という実感でした。優秀な学生が実習に行ったあと、職員の流れ作業的な対応に失望してやめていく者もいました。考えているだけでは物事は進みません。2004年4月NPO法人「楽」を設立しました。6月にデイサービス“ひつじ雲”を開所して、2006年小規模多機能型居宅介護施設として現在に至っています。川崎市内のもう一つの“くじら雲”は認知症デイサービス施設として若年認知症ケアにも取り組んでいます。

在宅の限界に挑戦です

玄関前に掲示されたお食事会の案内
玄関前に掲示されたお食事会の案内
――小規模多機能型居宅介護は2006年4月の介護保険制度改正で創設された地域密着型サービスの一つですね。

  教育に関わった当初の私の研究のキーワードは“生活とは”、“高齢者と家族”、“ホームヘルプ”でしたが、現在はそれに“認知症ケア”、“地域”をプラスしています。この仕事は地域の人にかかわっていく仕事だと思います。地域の人と親しくなり、地域の人がこの事業に理解を示してくれること。ひつじ雲のすぐ近くにお茶や食事会ができる交流の場を安価に提供してくださる方もいれば、お風呂屋さんが利用してくださいと声をかけてくださり、本当にありがたいですね。人間関係や生活環境をできるだけ維持できるよう、在宅の限界に挑戦といったところでしょうか。
――先生は大学で指導したり研究したりすることと、こうして現場で実践しておられることの比重は?

  研究だけでは私の存在はありません。むしろ実践のほうが割合は高いですね。介護実践を教育に活かせますから。(笑)

脊髄カリエスで重度の障害を患った父の姿が介護の世界に

自らが経営する”ひつじ雲”の前で。
自らが経営する”ひつじ雲”の前で。
――介護の道に入られたきっかけは。

 父は7年前亡くなりましたが、秋田で結構大きな養鶏業を営んでいました。その父は重度の脊髄カリエスで障害1級。私が幼いころ父と認識したときには、2本の杖が欠かせませんでした。そのころの父の姿が脳裏から離れず、成長するにつれ(障害があることは)大変なことだと…。川崎市福祉事務所で働くことになったのも、そんな父のことがあったからのことです。

介護には雑学こそ必要です

――先生は「介護には雑学も必要だ」と言っておられますが、具体的に。

  若い方々に足りないのは生活経験です。向かい合うお年寄りは人生の先輩。なんでもいいから人の道に外れない遊びや好きなことはどんどん体験しなさいと言います。それが話題となって人とのつながりができる。それでなくとも何かとつながりが希薄ないまの社会ですよね。いま介護現場で足りないのは生活経験豊かな人たちです。本当は様々な企業での経験をした40~50歳代の方々を求めたいのですが、自分の価値観が出てしまって相手の価値観を受け止められない例も少なくない。これがネックだなあ、と。雑学が必要なのはもちろん私を含めてのことです。

――大学で指導している学生の印象は。

 介護を学ぶ学生にも時代の波があるんだなぁ…と。目標がはっきりしている子は1年時と4年時と比べたら見間違うほど立派になります。彼らにはこれから介護・福祉のリーダーになってほしいですね。4年間で得た知識は現場できっと役立ちます。

「人とつながる」

――これからの介護の在り方について

 単に組織のなかでサービスを提供しているだけでは(つながりは)広がらないはずです=色紙=。地域の人にも分かってもらえる双方向的なあり方が大事なのではないでしょうか。介護するというより、生活を継続するといった趣旨ですね。

                                                              (聞き手 前田)

<取材後記>

“楽”の名前の由来をお聞きしたところ、苦笑いされた。その理由は「“自然体で楽しく”と思ってつけましたが、あとで知ったら飲み屋の名前の多いこと。失敗でした…」

<プロフィール>

秋田県生まれ。19歳で上京。民間会社に勤務後、川崎市福祉事務所でホームヘルパーとして勤務。平成11年上智社会福祉専門学校専任講師。16年4月特定非営利活動法人「楽」を設立。6月認知症デイサービス・ひつじ雲を開所。17年東洋大学ライフデザイン学部専任講師に就任。21年度から准教授。
専門は在宅介護。18年5月ひつじ雲を小規模多機能型居宅介護とし、新たに認知症デイサービス・くじら雲を開所。18~20年日本介護福祉会の副会長に就任。現在は全国小規模多機能型居宅介護連絡協議会理事、神奈川県社会福祉審議会委員、川崎市第4期保健福祉計画策定委員、介護福祉士国家試験委員など。
「どこまで許されるホームヘルパーの医療行為」(一ツ橋出版、共著)「失敗例から学ぶ介護職のためのコミュニケーション術」(中央法規)など著書多数。東京新聞コラム「より添う介護」執筆中。川崎市百合ヶ丘在住。

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