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ZOOM UP:かわさきの元気企業

第2回 株式会社沖セキ 緑間浩市社長に聞く

“お墓博士”緑間社長にインタビュー

2010/07/30

業績躍進の陰に探究心と向学心

 「墓石ディレクター」をご存じですか? 日本石材産業協会による検定試験にパスした”墓石博士”で、株式会社沖セキ(本社・川崎市砂子)の緑間浩市社長がその人です。土木建築分野から墓石業界に参入して十年に満たないが、神奈川県で卸売高ナンバー・ワンを誇る。業績を伸ばし続ける理由は「お墓のことならなんでも聞いてください」と胸をはる豊富な知識とアイデアがあればこそ。「この業界は成長産業」と、緑間社長は熱っぽく将来を見据えている。
墓石について熱っぽく語る”お墓ディレクター”緑間社長
墓石について熱っぽく語る”お墓ディレクター”緑間社長
訪れた事務所はJR川崎駅からほど近いところにあった。墓石の卸売ときて、さまざまな石材が置かれた広大な敷地を想像していたら、なんとビル中のこじんまりとした部屋だった。
笑顔で迎えてくれた緑間社長。
「卸商でもこんな町中に事務所を構えているところは少ないですね。ここには営業部隊だけがいて、実際はここから離れた水江町の倉庫から(各地に)配っているわけです」。

市場は中国産墓石がトップ

最上級の墓石「庵治石細目」 目の細かさが特徴です。
最上級の墓石「庵治石細目」 目の細かさが特徴です。
事務所内の棚には各種の墓石の見本がずらり。国産はもとより中国、インド、韓国、スエーデンなどの外国産まで。色彩、模様、光沢が微妙なアヤを放っている。壁には日本全国と世界の銘石産地を紹介したマップ。
「墓石は国産でも五十種類近くはありますが、流通している墓石の八割は中国産です。福建省は中国でも屈指の石の産地で業者も多い。次いでインド、韓国。私も仕事でよく出かけます。仕事が趣味みたいな感じで…」と、緑間社長。
棚からサンプルを取り上げて説明してくれる。
「これはスエーデンのファイングレーです。外国産では最上級ですね。国内産ではこちらの庵治石細目が最高級品になります。」

ふるさと沖縄の“お墓文化”自慢

海外と日本の墓石産地地図を背景に説明する緑間社長
海外と日本の墓石産地地図を背景に説明する緑間社長
緑間さんは沖縄生まれ。家業は「今も兄が継いでいる石材商」というから、墓石事業とは決して縁がないわけではない。郷里沖縄の“お墓文化”は独特で、地元の有力者だった故人の墓には、なんと1億2千万円をかけた墓があるという。職業柄、沖縄と縁が深い同席したK担当課長は「立って歩いて入れるほどの大きな墓を見たときはびっくりしました」。
小学校まで沖縄で過ごし、中高は九州でも屈指の進学校久留米大附。「先輩に孫正義さん(ソフトバンク社長)。後輩にはあのホリエモン(堀江貴文)も…」と同窓談義も。
大学を卒業した緑間さんは銀行マンから商社マンへ。サラリーマン生活を二年数か月過ごす。折しもバブル景気がはじけ、その波をもろにかぶった。
「景気が悪くなり私がいた部署が機能しなくなった。それでは独立するしかないと決めたわけです」。平成3年、現在の会社沖セキを創業。社名は出身の沖縄の沖と「石だけにとらわれたくない」ことから片仮名に。

エコ活動にひと役かった段ボールこん包

土木建築業界の低迷から脱するきっかけとなったのは自ら考案した石材の輸入を扱う段ボールこん包だ。木材こん包を段ボールに替えた。産廃処理コストが省かれたうえ、開梱時間も大幅に短縮、石材の傷みも解消という三拍子そろった緑間さんのアイデアである。不要になった段ボールはリサイクルされてエコ活動に再利用されている。
「昨年は直径40センチ、4メートルぐらいの木を一万本切らずにすんだほどですが」と緑間社長。エコ活動を表したはがき大の絵はがきを一般配布しているが、「なかなか理解してもらえない」とちょっぴり残念そうだ。
エコ活動PRのための絵はがき(表)
エコ活動PRのための絵はがき(表)
(裏)
(裏)

母校千葉大とコラボレート

社長手描きの座右の銘 『情熱』
社長手描きの座右の銘 『情熱』
墓地もサマ変わりしつつある。お化けが出るイメージも今は昔。都市部の新しい墓地は公園化し、故人の趣味や好みを模したオブジェと化した墓石も珍しくない。「デザイン性はこれからもますます変わっていくでしょう」という緑間さんは、若手デザイナーからもデザインを広く公募中だ。一昨年のかわさき産業デザインコンペで優秀賞を受賞したアーチ形の墓石「シルエット」は本職のデザイナーによる作品だが、緑間さんもアレンジにひと役買った。昨年からは母校千葉大の工学部デザイン学科とのコラボレーションでアートコンペを開いている。こうした積極的な活動ぶりも「県下でぎりぎりまでシエアを広げていきたい」という”情熱”(緑間さんの座右の銘でもある)があればこそ。

お墓も都心部へ集中

都市への人口集中は今にはじまったことでもないが、地方の墓地に風化した墓石を垣間見ることがある。そのことに触れると、緑間さんはにっこりうなずいて、語った。
「地方から都市部に墓を移動している人たちが増えています。ふるさとには管理してくれる人がいない。自分たちも(ふるさとに)帰ることもなくなったといった人たちですね」。地方から都市部への墓石の移動で、百四十万都市・川崎市でも需要の高まりに期待を寄せている。

海外旅行では必ず墓地見学

川崎市内の本社内には各地から集められた各種の墓石サンプルがズラリ
川崎市内の本社内には各地から集められた各種の墓石サンプルがズラリ
「神奈川県の石材産業協会のホームページにアクセスしてみてください。一番上にわたしの名前があります」と緑間さん。お墓ディレクターの検定資格者にアクセスすると、神奈川県で1級資格者38人のトップに名前を発見。
「海外旅行すると必ず一日はお墓見学。家族と出かけても一人で出かけても必ずします。うんちくを広げて仲間に自慢したい。ドイツの墓地は森林公園、アムステルダムのきれいなガラス細工の墓。楽しいですよ」
“お墓のソムリエ” の着実な事業展開は、持ち前の探究心と向学心に裏づけされている。(前田)

◆株式会社沖セキ
http://www.okiseki.com/
<プロフィル>
昭和40年生まれ。久留米大附中・高-千葉大。東海銀行-日商岩井でのサラリーマンをへて独立。公園管理運営士、(財)公園緑地管理財団認定1級施工管理技師(土木・造園)2級施工管理技師(建築・仕上)。藤沢市在住。

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株式会社フューチャーリンクネットワーク(TEL:047-495-0635)
川崎市経済労働局労働雇用部(TEL:044-200-2276)

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