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福祉・介護職のお仕事特集

福祉の仕事知る懇談会

 高齢化社会になり、年々需要が高まる介護職。
 暗い、給料が低いというイメージがありますが、現場で働く方はそんな意識がなく、仕事に前向きで毎日が充実しているようです。
 11月3日(土)。かながわ県民センター12階で『福祉の仕事を知る懇談会』(神奈川県社会福祉協議会・かながわ福祉人材センター主催)が行われました。約40名の20代から40代の男女が参加したこのセミナーは、介護の仕事の喜びとやりがいが感じられる素晴らしい内容でした。
 セミナーには2人の講師をお招きし、自分の体験をもとに福祉の仕事の魅力を語り、参加者の質問に答えました。

押さえておきたい職種

 はじめは、かながわ福祉人材センターの仲川様から、福祉の職種紹介がありました。
 福祉の仕事は要介護者に触れて行う仕事もあれば、相談や手続き等、ご家族や施設利用者さんと話しながら今後を考えていくという仕事もありますので、知っておくといいでしょう。

・施設の介護職員(介護の仕事)
 要介護者に対して生活援助の中心を担う職種です。食事や入浴、排せつ、衣服の着脱や移動など、入居者の生活全般にわたって必要な支援を行います。
 国家資格には、介護福祉士があります。ただし、介護福祉士の資格がなくてもこの職種に就けます。しかしながら実情としては、介護職員基礎研修修了やホームヘルパー養成研修修了等、なんらかの資格を必要とする求人が多いです。

・ホームヘルパー(介護の仕事)
 施設を利用する高齢者や障害者、あるいは在宅で生活をする高齢者や障害者のご自宅を訪問して、主に介護や生活援助のサービス提供する職種です。食事や入浴、排せつなどの介護、調理、洗濯、掃除、買い物などを行います。利用者本人や家族への精神的ケアを行うほか、家族に介護の技術的な指導を行うことも大切な仕事です。

・介護支援専門員(相談援助の仕事)
 介護保険事業における居宅介護支援事業所や介護保険施設などで、要介護者からの相談に応じ、心身の状態に応じて適切にサービスが利用できるようケアプラン(介護支援計画)を作成し、関係機関と連絡調整を行います。
 都道府県が行う受講試験に合格し、介護支援専門員実務研修修了の認定を受けることが必要です。

・理学療法士・作業療法士(看護リハビリテーション関係の仕事)
 これらの職種は、高齢者や障害児・者を対象に、心身の機能訓練を行う施設や事業所に配置され、機能の維持回復を図るための訓練を行います。
 国家資格である理学療法士、作業療法士の資格が必要です。

知っておきたい福祉の職場

 福祉施設といってもその種類は様々です。対象者(老人、児童、障害者など)や目的(生活援助、リハビリ、自立援助など)によって種類分けされているので、福祉の仕事に興味ある方はぜひ覚えてもらいたいと思います。

・特別養護老人ホーム
 要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて食事・入浴・排せつなどの介護、日常生活上必要な援助、機能訓練、健康管理及び療養上の援助を行います。

・養護老人ホーム
 65歳以上で、身体、精神上または環境上の理由および経済的理由により、家庭での生活が困難な人が入所します。

・老人保健施設
 要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて看護・医学的管理下における介護、機能回復訓練、その他医療ならびに日常生活上必要な援助を行います。

・老人デイサービスセンター
 居宅で生活している要介護者・要支援者に、入浴・食事の提供、日常生活上必要な援助、機能訓練を行う適所施設です。

・障害者支援施設
 障害者のための、多くの介護や支援を行う施設全般を指します。ホームヘルプ、デイサービス、療護施設や更正施設など様々なサービス形態があり、施設によって内容が変わります。

 このほかにも児童や生活保護者のための施設などもあります。

苦労と感動の理学療法士 ~講師:大貫泰紀氏~

 最初は大貫泰紀 講師です。大貫講師はマイクをもちながら、ときおり遠くを見つめて話しました。参加者は熱心に耳を傾けます。

「私が介護の仕事をはじめたのは25歳のとき。当時は、生協(コープ)で働き、営業やトラックの運転をしていました。
 そんな折、老人ホームで働く高校の先輩が結婚することになり、二次会に参加したのですが、そこで入居者様からのお祝いのテープが流れました。私はこれまで福祉の仕事に暗いイメージをもっていましたが、家族のように明るくお祝いする入居者様の声を聞いてすごく感動し、福祉の仕事に興味をもちました。
 その後、生協を退職し、障害者のホームヘルパーのアルバイトをしながら就職活動。生協時代のトラック運転の技術を買われ、デイサービスセンターに就職しました。そこで働くうちに入居者様にもっとできることはないかと考え、理学療法士の仕事が浮かびました。そして資格をとるべく、働きながら学校に通い、卒業して資格を得たのです。
 卒業後はデイサービスの仕事を辞めて、理学療法士の仕事に応募。ですが、これが難しく、その時の私の歳は40を過ぎており、また未経験のため、なかなか採用してもらえませんでした。それでも就職活動を続けるうちに、現在の職場である『かわいの家』に「1人職場だが、未経験でも私たちがフォローしていくので、働きながら勉強してもらえばよい」と言っていただいて仕事に就きました」

 次に説明したのは、仕事中にあった感動のエピソード。
 笑顔を浮かべる入居者をスクリーンに映して、理学療法士の仕事の尊さをお話しました。

「ある日、ご家族参加でケアカンファレンス(介護の計画を立てる会議)を行ったとき、入居者ご本人様から「歩行練習をしたい」との要望がありました。その理由は「妻の墓参りに行きたいから」ということでした。
 しかし、そのお墓の場所は階段100段を上った高台にあり、入居者様はもともと体力的な不安を抱えており、10年もの間、出かけることができませんでした。そこで、私たちは入居者様の願いをかなえるため、リハビリのメニューを作り、職員と一緒に練習を行いました。
 そして当日、入居者様は墓参りにいくことになったのです。
 無事、階段を上り終えた入居者様は、10年ぶりのお墓参りに感動していました。その後は、施設での生活が明るく楽しいものになり、今年もきちんと墓参りに行ってきました」

 講演の終わりに、大貫講師は楽しそうに介護の仕事の魅力を語ります。

「この仕事の魅力は、入居者様の喜怒哀楽に寄り添えることです。そばで見守ることで、感情を共有することができます。
 また、福祉の仕事は趣味・特技を活かせます。老人ホームでは、楽器演奏や絵画、釣りなどのイベントを開き、入居者様を楽しませ自分も楽しむことができます。趣味や特技がイベントに繋がるので、どんな方でも自分の長所を発揮できるのです。
 感謝されることの多い仕事ですが、つねに入居者様を敬う気持ちを忘れず、向上心をもって臨んでもらいたいと思います」

入居者の回復を目指して ~講師:上田有里子氏~

 次の講師は、介護の仕事が3年目の上田有里子講師。
 前職のアパレルの仕事から一転して、介護職に移ったことには大きな理由がありました。

「私が介護の仕事を志すようになったのは、父の死があってからです。私の父は病気で倒れ、元気に復活するだろうと考えていましたが、そのまま眠りにつきました。私はそのことにショックを感じました。
 残った母親にしてあげられることを考えたとき、浮かんだのが介護でした。いつか身体が弱くなる母を介護することが親孝行だと思い、この道を選びました。
 はじめに行ったのは、ヘルパー2級の資格をとったことです。その後、ハローワークの職員さんから「さわやか苑」の職員募集の紙をもらいました。職場が家から近く、経営理念にも共感できたので、体験ボランティアからはじめて、そのまま「さわやか苑」に就職にしました。
 しかし、仕事の知識がまったくなかったので、毎日が驚きと苦労の連続でした。食事を食べさせることや汚物交換などに慣れず、また思いのほか仕事内容が体力勝負だったので、とても疲れました」

 入職した頃に感じた仕事の大変さを力説する上田講師。ですが、それ以上に仕事の大切さや感動をお話しくださいました。

「ある入居者様が認知症になりました。それまでは車椅子の移動が可能で、コミュニケーションもよくとれました。ところが、2年ほど前から理解力の低下が見られたので転倒を避けるため、車椅子を使わず、備え付けのソファで過ごすようにしました。その後、体調不良から義歯が合わなくなったことを機に、異食(周りの方の食事を取る、指しゃぶりをする、食べられないものを口にするなど)行動が見られるようになりました。
 そこで、なぜ異食行動が起きるのかを職員全体で考え、その入居者様専用のノートを作り、毎日、1日の動きを記しました。すると、異食を防ぐ手がかりが見つかり、試行錯誤しながら、異食防止の取り組みを始めることができるようになったのです。
 食事では、味覚を戻すためにココアや栄養補助食品、排便をよくするために新鮮野菜とカルピスを混ぜた飲み物を提供し、食事の量を減らして小分けに渡しました。それ以外は、義歯の新たな作成や、車椅子対応の時間を長くし、コミュニケーションの機会を増やすなどを行いました。
 それにより、異食行動が目に見えて減少。たまに異食行動を行っても、食べ物でないとわかると、すぐに口から出すようになりました。コミュニケーションが増えたことで他の入居者様と会話することもあり、本来の活気を取り戻したのです。
 お花見では、桜を見て「綺麗だな」と笑みを浮かべるようになり、私たちはとても感動しました」

 講演を終えた上田講師は、きょうまでの仕事を思い出し、介護の仕事の素晴らしさを語りました。

「この仕事のやりがいは、入居者様と一喜一憂できることです。
 日々状態の変化する入居者様に対して、私はいま行っているケアが適切かどうか悩み落ち込むことがあります。それでも入居者様の笑顔を見た瞬間に、疲れや不安は吹き飛びます。介護には答えがないので、アイディアが成功したときの喜びは、言葉では言い表せません。
 施設には年配の方が多いため、お話などを聞いて人生の勉強をすることができます。
ぜひ1度、現場を見学してみてください」

参加者が目を輝せる討論会

 2人の講演が終わると、今度は円座になって自由討論を行いました。会議室の真ん中に衝立を設置し、2つのグループに分かれて、参加者が講師に質問していきます。
 参加者は次々と手を上げて、仕事中の苦労や気を付けなければならないことなど、講師に尋ねました。

 以下が自由討論の内容です。いくつか抜粋しました。
Q「理学療法士の資格を取るため、働きながら学校に通ったと言いましたが、勉強は難しくありませんでしたか?」
A「難しかったです。また、自分より若い人のところで勉強することもありましたので、いろいろと苦労しました。年齢については同級生に30代40代もいたので、一緒に勉強しました。途中で挫折する方もいるので、自分も辞めようか悩んだものです」

Q「採用される年齢ですが、若い人ばかり求められているのでしょうか?」
A「デイサービスの仕事では、利用者様とお話しが通じるという理由で、年配の方も採用されます。また、車の運転もするので、免許取り立ての若い人ではなく、運転経験の豊富な方が採用されます。ただし若い人の採用がないわけではありません」

Q「業務に汚物の交換や入浴などありますが、性別等の問題はありますか?」
A「基本は同性介護で行いますが、シフトの問題で、すべて基本通りできるわけではありません。女性の入居者様は、男性職員の排せつ業務等に抵抗がありますので、シフトをずらしたり、担当を変えたりしながら入居者様の満足する対応をしています」

Q「介護の仕事は必ず資格が必要になるのでしょうか?」
A「職場によって異なります。私の勤める『かわいの家』は無資格の方が多いです。働いてから資格を取る方もいるので応募先の情報はよく知っておくといいでしょう」

参加者の感想

 29歳女性
「福祉関係の仕事に就きたいと思い、手がかりを探していました。障害のある方の福祉を希望していましたが、今回のセミナーでは、お話を聞くことができませんでした。ですが、特別養護老人ホーム、老人保健施設、障害者支援施設の違いや、福祉の仕事全体が人と人とが繋がっているものだとわかりました」

 53歳 男性
「もうすぐ支援福祉の仕事をするので、何か有益な情報がもらえればと思い、このセミナーに参加しました。
 私は震災のボランティア活動を行っており、その活動の中で知り合ったある施設の施設長とお話しする機会がありました。そこでボランティア活動と今後のことへの想いを伝えると「ぜひともこちらで働きませんか?」とお誘いがあり仕事を決めました。
 セミナーはとても勉強になり、今後、社会や被災した方に、仕事を通して貢献できればと考えております。また、今回来た参加者やこれから就職活動する方も、自分のように1歩踏み出していただけると嬉しいです」

講師のメッセージ

 大貫講師
「介護職の相談をされると、資格や経験など必ず聞かれますが、それよりも大事なのはやる気と誠実さです。その誠実さは、仕事だけでなく、お年寄り(利用者さん)にも向けてほしいと思います。たとえ経験や資格がなく、また年齢が高かったとしても、興味があればぜひチャレンジしてください」

 上田講師
「このようなセミナーでお話をするのは今回が初めてでした。私よりも知識をもっている方が多く、逆に勉強になりました。
 今日参加されている方で、子どもを育てた方も多いと思いますが、福祉の仕事はそれを活かすことができます。病気についても、ご自身が経験してきたことが活かされることもあります。そのような意味では経験豊富な方が介護の仕事に就いてくれると助かることもあります。
 介護の仕事は3Kと言われていますが、実際に働くとそんなことは気にならなくなりますし、何よりもやりがいがあります。それに、入居者様の笑顔を見られるのは嬉しいです。
 求職に熱心な方が多いので、まずは1歩踏み込んでほしいと思います」

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