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ものづくりの魅力を聞こう

平成24年度 ものづくり講演会レポート(1)

伊藤直義さん(県立川崎工科高校にて)

川崎市では、「ものづくり夢先案内人事業」(次世代を担う若者の人材育成事業)の一環で、「ものづくり講演会」を開催しています。

講演会は市内の大学や高校に通う学生に、将来の職業や進路の選択に生かしてもらうことを目的として、市内の中小企業でものづくりに携わっているプロフェッショナルの方々に、仕事の楽しさや厳しさを語っていただいています。

平成24年度は専修大学で5回、県立向の岡工業高校で2回、県立川崎工科高校で1回開催し、ものづくりの魅力について、多くの学生に知ってもらう絶好の機会となっています。

講演会は川崎市と川崎工科高校が連携。<br>毎年1回行っており、今回は4回目。
講演会は川崎市と川崎工科高校が連携。
毎年1回行っており、今回は4回目。
今回は川崎工科高校で開かれた講演会の様子を紹介しましょう。

■日時:平成24年10月18日(木)
■対象:神奈川県立川崎工科高校 1年生 235名
■講師:有限会社伊藤工業 代表取締役 伊藤直義さん
(有限会社伊藤工業のWEBサイト「工人」 http://www1.odn.ne.jp/~koujin/
講師紹介 伊藤直義(いとうなおよし)さん
昭和22年(1947)、川崎市幸区生まれ。昭和40年(1965)、県立川崎工業高校(川崎工科高校の前身)機械科を卒業。富士電機株式会社に入社し、水力発電のタービン(水車)の開発・設計に従事する。昭和58年(1983)、幸区で製造設備機器や医療機械器具などの開発・設計・製作・販売を行う有限会社伊藤工業を設立。現在は高津区野川で操業している。
平成22年(2010)、「かわさきマイスター」に認定。他の企業ではできないものを次々と考え、作り出してしまうことから、大手企業や大学の研究者などから「機械開発の駆け込み寺」のような頼りになる存在。

講演会のテーマ:ものづくりの魅力

50年前の学校生活とマイスターならではの手作り機械

伊藤さんは川崎工科高校の前身である川崎工業高校を卒業。在校時の写真をスクリーンに映しながら、当時はバイク通学が許可されていたこと、自動車部があって車が校内を走りまわっていたことなどを紹介すると、学生たちから驚きの声があがりました。
また、伊藤さんは豊富な知識や経験、創意工夫をもとに、横浜国大と世界初のスパイラルモータを共同開発したのをはじめ、農業用作業車や車椅子用体重計、軽油の粘度測定器や液体の表面張力測定器など100種以上もの機械製品を開発・製作。そのなかから持ってきた小型のシャボン玉発生器と蒸気ピストン式オシレーチングエンジンを学生たちは手に取って眺めたり、実際に動かしたりしました。
スクリーンには次々と50年前の写真。<br>九州への修学旅行のバスガイドさんの写真もあった。
スクリーンには次々と50年前の写真。
九州への修学旅行のバスガイドさんの写真もあった。

機械作りを仕事にすることを決意するまでの道のり

伊藤さんのアイデアたっぷりの手作りの機械に学生たちの歓声があちこちで湧き起こる。
伊藤さんのアイデアたっぷりの手作りの機械に学生たちの歓声があちこちで湧き起こる。
機械いじりが好きだった伊藤さんは、小学校に入る前から時計やおもちゃを分解。学校の行き帰りには建築現場の大工さんや風呂釜の職人さんなどの仕事をよく見ていたそうです。
高校卒業後に入社した大手の電機会社では、設計の基礎や工業規格の知識などを修得。好奇心旺盛で短大にも通い、機械ではなく営業について学んだと言います。
やがて、大手会社勤めに違和感を持ち、5年で退社。火災報知器を設置する仕事でお金を稼ぎ、国内を旅するなどしているうちに「自分は機械作りが好きだった」と思い出し、注文を取って機械を作る仕事をしようと一念発起します。そこで、高校や大学時代の友人に何か作らせてほしいと営業。初めは仕事がなく苦労しましたが、少しずつ軌道に乗り、36歳で会社を設立したと説明してくれました。

日々の積み重ねのうえに本領を発揮する場がある

「好きなことをヒントに、これが自分なんだと自覚と自信を持ち、自分に合った仕事を見つけてほしい」と伊藤さん。
「好きなことをヒントに、これが自分なんだと自覚と自信を持ち、自分に合った仕事を見つけてほしい」と伊藤さん。
現在、伊藤さんは毎日朝9時から夜9時まで仕事をし、休みは月に1~2回。「仕事とは世の中のために自分ができることを一生懸命行うもの」という思いで取り組み、仕事の95%は黙々と働くものと言います。また、仕事の基本をしっかりと身につけるために資格を取るなど、勉強を続けることも必要で、日ごろの鍛錬があるからこそ、新しい機械をどのように作っていくか考えるのが楽しく、ほかにはないアイデアが生まれてくるとのこと。本領を発揮できるものはたった5%と、仕事の厳しさを話してくれました。
けれどもその一方、伊藤さんは自分で家を建てたり、ヨットを造って海外へ渡航したりするなど、自分の楽しみにも力を抜きません。仕事と遊びのバランスをうまく取りながら、これからもさまざまな機械を作っていきたいという話で講演を終えました。

次世代を担う若者へメッセージ

講演会後、生徒代表が伊藤さんに挨拶。「自分で家やヨットまで造ってしまうのがすごい。その発想はどう湧いてくるのだろうと思いました」と感想を話し、興味は尽きないようだった。
講演会後、生徒代表が伊藤さんに挨拶。「自分で家やヨットまで造ってしまうのがすごい。その発想はどう湧いてくるのだろうと思いました」と感想を話し、興味は尽きないようだった。
「だれにでも好きなことがあると思います。その好きなことについて情報を集め、突きつめることが大切です。例えば、ものづくりなら、作りたいものを頭に描き、紙に描いてみる。どうしたら作れるか問題点まで考え、情報を集めて1つ1つ解決し、形にしていくことです。
日本はいま、国内の工場が減少するなど、ものづくりには厳しい時代です。しかし、仕事はだれかに与えられるのではなく、自分で時代に合ったものを開拓していかなければならない。
情報はインターネットなどで昔よりずっと簡単に集められます。昔はよかったと思うより、自分たちはおもしろい時代に生きているぞと思いたいですね」