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ものづくりの魅力を聞こう

平成24年度 ものづくり講演会レポート(2)

手塚健一郎さん(専修大学にて)

川崎市では、「ものづくり夢先案内人事業」(次世代を担う若者の人材育成事業)の一環で、「ものづくり講演会」を開催しています。

講演会は市内の大学や高校に通う学生に、社会へ出るモチベーションを高めてもらうことを目的として、市内の元気なものづくり中小企業の経営者の方々に、常に新しいことに挑戦し続けるチャレンジ精神について語っていただいています。

平成24年度は専修大学で5回、県立向の岡工業高校で2回、県立川崎工科高校で1回開催し、ものづくりの魅力について、多くの学生に知ってもらう絶好の機会となっています。

川崎市の寄付講座として専修大学で講演会を開催。平成21年度から実施し、今年度で4年目。
川崎市の寄付講座として専修大学で講演会を開催。平成21年度から実施し、今年度で4年目。
今回は専修大学で開かれた講演会の様子を紹介しましょう。

■日時:平成24年11月16日(金)
■対象:専修大学経済学部(3・4年次)・経営学部(2年次以上)の学生 計80人
■講師:三和クリエーション株式会社 代表取締役社長 手塚健一郎さん
(三和クリエーション株式会社のWEBサイト http://www.sanwa-creation.co.jp/
講師紹介
手塚健一郎(てづかけんいちろう)さん

昭和40年(1965)、東京生まれ。昭和63年(1988)、慶應義塾大学商学部を卒業。安田生命保険(現・明治安田生命)に入社し、人事部などに勤務する。平成9年(1997)、31歳で有限会社三和超硬に転職。平成11年(1999)、三和クリエーション株式会社を高津区下野毛で設立し、現在は中原区宮内に本社工場を置いている。
平成24年(2012)、微細・精密研削加工技術「ナノ・グラインド」が川崎を代表する技術として、「川崎ものづくりブランド」に認定。

講演会のテーマ:就職? 起業? 中小企業も選択肢の1つに!

硬くて切削が難しい素材に高い精度の研削加工を実現

髪の毛より細い直径0.05~0.09mmの超硬ミクロンピン。シャープペンの芯0.5mmと比べると、その細さにびっくり。
髪の毛より細い直径0.05~0.09mmの超硬ミクロンピン。シャープペンの芯0.5mmと比べると、その細さにびっくり。
手塚さんが社長を務める三和クリエーション株式会社は、現在創業14年目で従業員数は31名。平均年齢31.5歳の若さあふれる会社です。
おもな事業は、超硬合金やセラミック、ダイヤモンドなどの硬い素材を研削する技術「ナノ・グラインド」によるピンやシャフトの製造。ディーゼル自動車の燃料噴射装置のノズル穴を開けるときに使う道具「超硬ミクロンピン」と人工透析の器械や家庭用燃料電池に使う部品「定量ポンプシャフト」が教室内にまわされると、学生たちは興味津々で見入っていました。

手塚さんは、「わが社のビジネスコンセプト(=他社との違いは)は、1つの製品をつくる会社というより、硬質材を高精度に微細化した道具や部品を提供し、高品質で長寿命な製品づくりに貢献する会社です」と説明。今後は新素材やコーティング技術の開発に取り組むとともに、これまで培ってきた加工技術を次世代通信端末や環境などの先端成長分野でも展開し、事業を広げたいと話しました。

独立志向が強く、自由なものづくりに惹かれて製造業へ

大学は商学部に進み、文系の学生だった手塚さん。具体的にしたいことは決まっていなかったものの、30歳を過ぎたら独立したいと考えていたことが起業への第一歩となりました。
31歳で保険会社を退職。保険業と製造業の2社に声をかけられ、自分がつくりたいものをつくれるフィールドに惹かれて製造業(有限会社三和超硬)へ。大手2社の下請け会社で、従業員5人の典型的な町工場だったそうです。
手塚さんは保険会社の人事部にいた経験をいかして不十分だった会社体制を整え(良い人材を集めるには、会社の体制やルールをしっかり整備することが重要だそうです)、技術力の向上と製品の開発に邁進。「2年間で業績を2倍にするという会社との約束のもと、売り上げ6000万円を1年後には1億円、2年後には1億2000万円に伸ばしたところで事業を受け継ぎ、新会社(三和クリエーション株式会社)を設立しました」と話し、学生たちの目を輝かせました。
「ダイヤモンド製や精密金型の部品、切削工具や治工具も製造し、<br>スマートフォンやLEDに使われている部品もつくっています」と手塚さん。
「ダイヤモンド製や精密金型の部品、切削工具や治工具も製造し、
スマートフォンやLEDに使われている部品もつくっています」と手塚さん。

中小企業の経営者のなかには協力してくれる人がいる

「自分の思いが強ければ、中小企業では早くから一線で活躍できる!」と、手塚さんの言葉は熱い。
「自分の思いが強ければ、中小企業では早くから一線で活躍できる!」と、手塚さんの言葉は熱い。
三和クリエーション株式会社はITバブル崩壊やリーマンショックの影響を受けながらも、業務提携や事業譲渡によって成長。その過程において、信頼でき、刺激し合えるパートナーの存在が大きいことを実感し、地域の企業や行政、人との関わりを大切にしてきました。
「ものづくりは1社ではできません。例えば、新事業を立ち上げるとき、中小企業だと設備を整えるのに時間がかかり、メーカーが要求するスピードに追いつけない。でも、うちの場合はパートナー企業が約20社あり、お互いの強みを出し合って対応できます。中小企業は協力し合い、共存共栄していけるパートナーが必要なんです」
中小企業には意欲的で、ともに躍進しようと考える経営者、特に海外では30代、40代の若い経営者が増えているそうです。中小企業では、思いが強ければ第一線で活躍できるという特長があります。また、起業のハードルも下がっていると言われています。例えば、不特定多数の人から資金を集める「クラウドファンディング」という方法も社会に浸透しはじめていますし、『情報化時代の次はものづくりの時代がやってくる』というITのプロフェッショナルもいますと手塚さん。
「自分にしたいことがあるなら、それができる場所を自分でつくるのも1つの手。中小企業の経営者にたくさん会ってみてください。もし起業したい場合は、起業に協力してくれる人がきっといるはずです」と、学生たちの職業選択の道しるべとなる心強い言葉で講演を締めました。

次世代を担う若者へメッセージ

「新しいゴム製品を開発するとしたら、どんな製品を発想しますか?」。手塚さんの問いかけに、学生たちからさまざまなアイデアがでる場面も。
「新しいゴム製品を開発するとしたら、どんな製品を発想しますか?」。手塚さんの問いかけに、学生たちからさまざまなアイデアがでる場面も。
いまは正解がない時代です。新製品の開発には、固定観念に縛られない自由な発想が求められます。とくに技術の世界では、“実現できるわけがない”ではなく、“実現できるかもしれない”と考え、自分が持っている情報をつなげ、何度も修正しながら答えを導きだしていく力が必要です。
そして、仕事をするうえで大事なことは、心の込もった「ありがとう」「ごめんなさい」を言うこと、自ら考えて自ら行動すること、自分の思いを伝えることです。せっかくいい考えを持っていても、話さないとだれにも伝わりません。ぜひ、自分の思いを言葉にして発してください。
専修大学で開かれた講演会(全5回)
◇11月9日(金)
 テーマ:“こだわりのメーカーでありたい”高電圧・高周波を使った製品の開発
 講師:春日電機株式会社 取締役 コロナ処理技術部長 櫻井行平さん、総務部長 酒井好夫さん
◇11月16日(金)
 テーマ:就職?起業?中小企業も選択肢の1つに!
 講師:三和クリエーション株式会社 代表取締役社長 手塚健一郎さん
◇11月30日(金)
 テーマ:できなかったモノ、真似されないモノを形に
 講師:株式会社協同インターナショナル 代表取締役社長CEO 池田謙伸さん
◇12月7日(金)
 テーマ:失敗恐れず、新規事業にチャレンジ
 講師:株式会社日本エレクトライク 代表取締役CEO 松波登さん
◇12月14日(金)
 テーマ:ロボット技術で社会に貢献
 講師:(株)イクシスリサーチ 代表取締役 山崎文敬さん