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技連協活動レポート

「技能職者に学ぶ」職種別講座 (井田中学校)

提供:川崎市技能職団体連絡協議会
川崎市技能職団体連絡協議会(川崎技連協)は市内の中学校生徒を対象とした「技能職者に学ぶ」職種別講座に講師を派遣しています。講座は、川崎技連協が川崎市と連携して2000(平成12)年度から後継者育成事業として取り組んでいるもので、今年度で12回目の職種別講座です。

今年度は例年よりも規模を拡大し、市立中学校8校で行われました。協力団体は24団体、派遣された講師数は延べ231名、受講した生徒は全部で1147名にもなります。

2012(平成24)年3月13日(火)、午後は川崎市立井田中学校(中原区)にて「技能職者に学ぶ」職種別講座、8職種が実施されました。

井田中学校 8職種に1年生192人が受講

講座と講師
参加した職種は以下の通りです(カッコ内は団体名と派遣講師数)。

◎着付士(全日本みやうち着付士技能者の会・4名)
◎大工職(横浜建設一般労働組合川崎支部・4名)
◎鍼灸マッサージ師(川崎市鍼灸マッサージ師会・5名)
◎理容師(川崎市理容協議会・2名))
◎美容師(川崎市美容連絡協議会・3名)
◎和裁師(神奈川県和裁縫協同組合川崎支部・3名)
◎洋裁師(川崎洋装組合・4名)
◎塗装技能士(一般社団法人 川崎塗装業協会・4名)

全体集合(開講式)
全体集合(開講式)
職種別の講座が行われる前に、体育館において担当の先生方、受講する生徒、講師の方々が一堂に会して全体会が行われました。生徒の代表者から「本日は私たちのために貴重なお時間ありがとうございます。真剣に学んで将来の進路を考える糧にします。本日はよろしくお願いします。」と歓迎の言葉がありました。

続いて、技連協副会長、後継対策委員長である山本知男さんが8職種の講師の方々を紹介し、次のように挨拶を述べられました。
「私は中学生の時、大工さんの仕事にあこがれて弟子入りし、一途にこの道に励んできました。そしてもっと上を目指して高校大学と進み、建築士の資格をとって現在建築設計事務所を経営しています。みなさん方もこういった機会に技術や仕事というものについて講師の方々から学びとってもらって、若いうちから志を立てて一生懸命頑張っていけば、すばらしい人生を送ることができるようになります」。
また、この日は途中、砂田慎治川崎市副市長が、この体験学習を視察にみえました。

ここでは、「鍼灸マッサージ師」「塗装技能士」「着付士」「理容師」の講座について紹介していきます。

鍼灸マッサージ師

まず、講義として、経穴(ケイケツ《ツボ》)に鍼(ハリ)で刺激を加える鍼、火をつけたもぐさを経穴にあてる灸(きゅう)、あん摩、マッサージ、指圧というこの仕事の技能と効能について話がありました。この技能は、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師という3つの分野で国家資格が分かれていること、そしてこの試験を受けるには高校卒業後、国が指定する学校(大学、短大、専門学校)のいずれかで3年間知識・技能を学ぶ必要があることが述べられました。
また、この職業を目指したい人へのアドバイスとして知能や技術の習熟は当然として、患者さんの痛みや心の悩みを誠実に聴き取り共感することのできる人間性が特に求められる職業であることが強調されていました。
鍼をうつ練習
鍼をうつ練習
次に実技の体験学習です。

鍼については、人体の感触に似せて作られたものに本物の鍼を打ち込んで感覚を確かめていました。メインで行われた体験は「按摩マッサージ」で、肩、足のふくらはぎ、腰などいろいろな部位について、マッサージを施す側と患者を交互に行い、わいわい楽しんで行っていました。
電気治療
電気治療
腰のマッサージ
腰のマッサージ
ふくらはぎのマッサージ
ふくらはぎのマッサージ
肩のマッサージ
肩のマッサージ
終了記念写真
終了記念写真
帰ったら、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんにしてあげて下さい、という講師の話に、生徒たちは元気な声で「ハーイ!」と答えて、終了となりました。
終了記念写真
終了記念写真
終了記念写真
終了記念写真

塗装技能師

最初に講義として、塗装技能士の仕事の説明がありました。「塗装」といっても、木工塗装、金属塗装、噴霧塗装など数種類の分野があり、現在は単に色を塗るだけでなく、色の顔料も抗菌、脱臭、防水など新しい機能素材も増えて、下地処理も高度化され、高い技術が必要とされるようになり、国家資格を要とする仕事となっています。

防汚服と軍手で準備完了
防汚服と軍手で準備完了
今回は木のすのこにペンキを塗る体験学習が行われました。ペンキの塗り方など作業の工程と内容を説明し、実技に入りました。
まず、準備として白いつなぎの防汚服(作業が終わったら持ち帰ってよい)を着用し軍手をはめます。
そして最初の作業が下地処理です。この作業は色の一様の定着と保ちに影響する大事な作業です。今回の場合、あらかじめめ用意されたすのこには下地処理は施されており(白い塗料が塗ってあります)、それを上からサンドペーパーで下塗りがはげない程度に研磨します。
これからの作業の説明を受けます。
これからの作業の説明を受けます。
ハケの使い方
ハケの使い方
生徒は指導通りに注意深く研磨した後、いよいよ塗料をハケで塗る作業に入ります。白、赤、青、黄、黒5色のチューブの塗料を、白を基調にそれぞれ好きな色を混ぜ合わせて水を加えます。そしていよいよハケでまんべんなく塗っていきます。
好きな色を混ぜ合わせます。
好きな色を混ぜ合わせます。
楽しそうな女生徒と、<br>見学に訪れた砂田副市長
楽しそうな女生徒と、
見学に訪れた砂田副市長
ハケへの塗料の含ませ具合、そしてムラなく、狭い所も塗り残しのないよう、漏らさぬよう注意し、講師にサポートしてもらいながら、生徒たちはみんな真剣に取り組んでいました。
プロの仕事では本来二度塗りが一般的ですが、今回は一度塗りで完成です。生徒たちは白いすのこが色鮮やかなきれいなすのこに変わって満足そうでした。
みんな真剣です。
みんな真剣です。
思い思いの色で塗り上げられたすのこを乾かします。
思い思いの色で塗り上げられたすのこを乾かします。
全員で記念写真
全員で記念写真
感想として「色をつくるのが楽しかった」「家でも塗ることがあったらやってみたい」「塗る量が難しかった」などがありましたが、みんな楽しかったという感想は共通していました。

着付士

最初は講師の田中美枝子さんが「着付士の仕事」や「着物の種類や用途」「着物のマナー」などについて講義を行いました。
「着物を相手に着せるのが着付士の仕事です。着付士は上が白、下が黒のものを着て仕事に行きます。冠婚葬祭や、スタジオ、テレビ局などに行って仕事をしています」
そして机上に並べてある振袖、留袖、訪問着、小紋をそれぞれ紹介しました。
お互いに着せあいます。
お互いに着せあいます。
実技は浴衣の着付けの体験を行いました。生徒は、男女混成での受講であることや取材等もあることから、学校で普段着ているジャージの上に浴衣を着ました。4人の講師が手に手をとりながら帯の結び方などを教えます。生徒は互いに着せあい、「きれい」「この浴衣よく似合うよ」と声をあげながら学びました。全員が着ると、記念撮影をし、次の課題に取り組みました。
着物のたたみ方を教えてもらう。
着物のたたみ方を教えてもらう。
次の課題は、着物を脱いで、たたむのです。田中さんが「着物を大事にする基本ですから、覚えておいてね」といい、手アイロン(手の平)で生地のしわを伸ばし、衿(えり)を左にくるようにしてたたむことを教えました。なかなかうまくたためず、講師の手を借りる生徒もいました。
男子生徒の浴衣姿
男子生徒の浴衣姿
この講座を受講した生徒14人中2人の男子生徒は、最初は後方の隅でじっと講師の指導をみつめていました。浴衣を身につける実技を通して、女子生徒とも話し合いながら実習に取り組むようになりました。
男子生徒のひとりは「帯をかっこよく結ぶ着物を着るのは初めて。着付けの仕事っていいなと思いました」と話していました。
女子生徒たちは「きれいに着せてもらい、うれしい」「このまま着て帰り、家族に見せたい」「脱ぎたくない」「着付士はかっこいい仕事だなと思う」など体験学習の感想を話しました。
みんなとてもきれいです。
みんなとてもきれいです。
田中さんは「着物を『このままで脱ぎたくない』『着て(自宅に)帰りたい』という声を聞いたときは、とてもやりがいを感じました。(講座では)最小限のことしか教えられなかったのですが、生徒のみなさんは積極的に着付けを覚えようとしているなと感じました。生徒のみなさんに、きものを着るのが楽しいということを知ってもらうとともに、着付士がどういうことをしているのかを、体験を通して学んでもらったと思います。将来、職に就くとき、この経験を生かしていただきたい」と話していました。

理容師

理容師は頭髪の刈り込み、顔そりなど容姿を整える仕事です。このことは理容師法で定められています。美を追求し、ヘアスタイルを整えるだけでなく、やすらぎと快適さを与える役割も担っています。生徒たちは最初、講義として、このような理容師の仕事内容と役割、理容師になるために専門の施設(学校)で学んで国家資格試験に合格しなければならないことを教えてもらいました。

そして、ウイッグ(練習用マネキン)を使用してのカット体験と、爪(つめ)を美しくするネイルの体験学習も行われました。講師の長谷川慎一さんと松本富枝さんが最初に、くしやはさみの持ち方を教えました。
くしやハサミの使い方の実演
くしやハサミの使い方の実演
講師が丁寧に説明します。
講師が丁寧に説明します。
男子生徒が「紙を切る工作用のはさみと違って、髪を切るはさみは持ちにくく使いにくい」と言います。生徒は長谷川さん、松本さんの助言を受けながらウイッグの髪を切りました。男子生徒が「いつも理容店で髪を切ってもらっているので理容師さんの仕事は知っているつもりでしたが、(講座で)髪を切る体験をして、すごく難しい仕事だなと気づきました」と話しました。女子生徒は「髪をくしでそろえて切るのはむずかしかった。先生が手をとって教えてくださったので、少しは髪をそろえて切れるようになって、うれしかった」と言いました。
ウイッグを使ってカットに挑戦
ウイッグを使ってカットに挑戦
髪の毛の長さを揃えます。
髪の毛の長さを揃えます。
ネイルの実技指導。<br>このやすりで爪を磨きます。
ネイルの実技指導。
このやすりで爪を磨きます。
講座の最後に行ったネイルでは、「先生の教えくれるとおりにしたら、爪がすごくきれいになった。私もネイリストになりたくなった」とネイルの魅力に引き込まれた女子生徒もいました。
生徒たちは終了後はきちんと<br>掃除をしていました。
生徒たちは終了後はきちんと
掃除をしていました。
講師を務めた感想について、長谷川さんは「理容の講座は刃物を使い、危険が伴うので不安でした。生徒のみなさんが一生懸命、実技に取り組んでくれたので、ケガ人を出さずにすみました。時間がなくて、丁寧に教えてあげられず申し訳ないと思いました。(講座を終えたとき)みんなが笑顔を見せ、『ありがとうございました』と言ってくれたのですよ。すごく、やりがいを感じましたね。今後、自分の仕事を選ぶとき、今日の体験を生かしてもらえたら、うれしいですね」と話しました。
松本さんは「みんな素直で、真剣に私たちの指導を受けてくれました。私も頑張って仕事をしなければならないと、みんなからパワーをもらいました」と述べました。

職種別の講座を終えて

全体集合(閉講式)
全体集合(閉講式)
生徒代表のお礼の言葉
生徒代表のお礼の言葉
全講義終了後体育館に全員集まり閉講式がありました。
最初は生徒代表の感想の言葉です。
「今まで知らなかった仕事の内容を聞きまた実際に体験をすることができて、日頃の学校では学べないことを、面白く学べて良い経験ができました。また今まで将来の仕事について考えたことがなかったので大変勉強になりました。」
次に他の生徒代表からのお礼の言葉が述べられました。
「講師の方々日頃忙しい仕事の合間に私たちのために来ていただき本当にありがとうございました。今日体験したことは、3年生になった時に、自分の進路を考える上でも、また遠い将来、就職先を選ぶ段階になったときに、きっと思い出すとことだと思います。よい体験ができました。」
川崎市技能職団体連絡協議会<br>若月会長のまとめのお話
川崎市技能職団体連絡協議会
若月会長のまとめのお話
最後に川崎市技能職団体連絡協議会の若月会長より本日のまとめのお話がありました。
「今日の講義はどうでしたか。日頃の学校の勉強と違って面白かったですか。まず世の中にはたくさんの仕事があってそれぞれ専門の分野で世の中に役に立っていることを知って欲しいと思います。そして、今日学んだ仕事は手づくりで仕事をされている方々ばかりで、機械で大量生産する商品づくりの分野とは違った人達でした。大量生産も大切なことですが、大量廃棄や使い捨てなどいろいろ弊害も出てきています。この真心の込もった手作りの長持ちする品質のよいものづくりの仕事の良さにも眼を向けてもらい、将来の職業選択のヒントにしてもらえればと思います。」