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技連協活動レポート

「技能職者に学ぶ」職種別講座(菅生中)

提供:川崎市技能職団体連絡協議会

菅生中学校 9職種に1年生195人受講

川崎市技能職団体連絡協議会(川崎技連協)は市内の中学校生徒を対象とした「技能職者に学ぶ」職種別講座に講師を派遣しています。講座は、川崎技連協が川崎市と連携して2000(平成12)年度から後継者育成事業として取り組んでいるもので、今年度で12回目の職種別講座です。

今年度は例年よりも規模を拡大し、市立中学校8校で行われました。協力団体は24団体、派遣された講師数は延べ231名、受講した生徒は全部で1147名にもなります。

2012(平成24)年3月14日(水)は川崎市立菅生中学校(宮前区)にて「技能職者に学ぶ」職種別講座、8職種が実施されました。
講座と講師
参加した職種は以下の通りです(カッコ内は団体名と派遣講師数)。

◎花き装飾(神奈川県生花小売商協同組合川崎北支部・2名)
◎着付士(川崎着付士協会・4名)
◎板金技能士(神奈川土建川崎中央支部・4名)
◎寿司職(川崎市寿司商連絡協議会・4名)
◎造園工(植木職)(社団法人 神奈川県造園業協会川崎北支部・3名)
◎電気技能士(川崎市内電気設備業連絡協議会・4名)
◎美容師(川崎市美容連絡協議会・3名)
◎洋裁師(川崎洋装組合・4名)
◎和裁師(神奈川県和服裁縫協同組合川崎支部・3名)
最初に全体集会があり、松井隆夫校長先生からは「今日1日で職人の技術を身につけられるわけはありません。今回講師として来てくださっている皆さんは匠の方々が集まっていますので、その『心』を学んでほしい」と生徒達に向けて心構えについてお話されました。
次に川崎市の職員の方から、「匠の世界のよさは、人生の終わりまで自分の好きな仕事を続けられることでもあります。5年後、10年後、今日の経験がみなさんの花を咲かせるための役に立てばいいなと思います」と挨拶があり、各講座の講師の紹介が行われました。
生徒の代表からは「僕達はまだ『働くということ』について、まだよくわかっていません。今日は多くのことを学んでいきたいです」と講師の皆さんに向けた挨拶がありました。

全体集会後、それぞれの教室に分かれて授業が行われました。今回は、9つの講座の中から「電気技能士」「花き装飾」「寿司職」の講座の様子をご紹介いたします。

電気技能士

電気技能士の講座では、電気技能士の仕事の内容について講義とテーブルタップの製作体験が行われました。
電気技能士の仕事の内容について講義では、次のような内容が話されました。
電気技能士の仕事は、主に住宅、店舗、工場などの電気設備の工事を行う仕事で、他には発電所、変電所でも工事を扱います。例えば一般住宅には電気回路が集中している場所(分電盤)があり、そこにはブレーカーなど(漏電遮断器や配線遮断器など)いくつかのコントロール遮断器があります。また、家電製品や電話器・パソコンなどの通信機器、アンテナ、防犯、防災の装置も全て電気回線でつながっていますが、それらを設置・配線したり、修理したりする仕事です。
従って仕事は外の仕事や天井裏、床下など厳しい環境下が多いですが、自分達でしかできないという自負と、電気が回復した時にお客さんから喜ばれるとやりがいのある仕事だと言われます。電気工事には国家資格が必要なのですが、1つだけではなく例えば高圧電気を扱う場合、高い場所での作業の場合、クレーンが必要の場合、樹木を切る場合などそれぞれの作業に応じて資格が必要となり、それらの免許を取って1人で何役もこなしている講師もいると、5枚の免許証を見せていました。
今日の体験学習は、電気の最も単純で基本となる作業がテーマです。電気を接続する部分、つまり日常生活の中ではプラグとテーブルタップ(延長コード)を電気が漏れたり切れたりショートしないように結ぶやり方を体験しました。これが不充分だったりすると熱を帯びて発火する危険性のある、極めて大事な作業です。講師の工程順の作業手順と1工程ずつの手助けによってしっかりと電気コードをつながったプラグとテーブルタップを完成させ、生徒たちは自分が作ったものを持ち帰ることとなりました。
線を包んでいるビニールだけをペンチで切りはずし中の電線をむき出します。
線を包んでいるビニールだけをペンチで切りはずし中の電線をむき出します。
その先に端子を圧着ペンチでつぶしてしっかり接続します。
その先に端子を圧着ペンチでつぶしてしっかり接続します。
それをテーブルタップの方に取りつけます。
それをテーブルタップの方に取りつけます。
一方プラグの方にも同様にむき出した電線をしっかり巻きつけ、ドライバーで固定します。
一方プラグの方にも同様にむき出した電線をしっかり巻きつけ、ドライバーで固定します。
でき上がった自分の作品をもって記念撮影
でき上がった自分の作品をもって記念撮影

花き装飾

花き装飾の講座では、フラワーアレンジメントの体験をしました。まずは、講師の都倉正明さんより、今日の授業についてお話がありました。
「今日はみなさんにフラワーアレンジメントの体験をしてもらいます。その人の作品には、その人の性格が見事に表れますので、真剣に作業してください。また、何でも見て覚える、作って覚える、書いて覚える。社会に出て認められる人というのはそういう人です。
花を切るということは、花の寿命を短くすることです。しかし、そのおかげで私たちの生活にうるおいを与えることができます。
今日の内容も少しでも覚えて帰ってください。」
そして制作作業に入ります。
まずは、用意されていた容器に3分の1くらい水を入れ、容器に持ち手をつけます。そして一人ひとりに配られた花の束を開きます。今日用意された花はミモザアカシア(黄色い細かい花)、スプレーカーネーション(黄色い背の高い花)、なでしこ(ピンク)でした。
ここで都倉さんより、花を切るときのポイントが話されます。表面積を広くするためになるべく斜めに切るようにし、硬い部分には「分け」を入れるようにします。こうすることで切り花に水をうまく上げることができるようになります。こういうことも覚えておいてくださいね。
いよいよアレンジメントに入ります。まずはミモザアカシアを最初に容器に入れ、次の花を入れる土台を作ります。そこからは、それぞれが思うままに作業をしていきます。「点数もつけません。色合いやバランスなどを考えて自分で生けてください」。

作業が少し進んだところでバランスを考えていくときのポイントがいくつか紹介されました。中心を決め、左右対称に、ポイントとなる「おへそ」を決める。そして、空間に花を挿していくようにします。お花屋さんという商売では、お客さんの希望する値段との兼ね合いもあり、少しの材料でも大きく見せる工夫が必要です。そのようなエピソードも交えて説明されました。
作業が開始すると、生徒1人1人の個性がよくわかります。作業の早い人、じっくり考えてから切る人、ためらいのない人、同じ材料を使っていても出来上がりは全く違います。講師として参加していた都倉八重子さんは「あまり知識のない子ども達の方が作品に個性がよく出る。大人はどうしても見本に近づけようとしてしまうので、子どもたちが自由に作品を作る様子はとても面白い」とコメントされました。

生徒の作品

正面を決めてバランスを考えていきました。横から見てもきれいに見えるように工夫をしました。
正面を決めてバランスを考えていきました。横から見てもきれいに見えるように工夫をしました。
つぼみの将来を期待して、この配置にしました。これが開いてくれれば。
つぼみの将来を期待して、この配置にしました。これが開いてくれれば。
個性的にしたくて持ち手に花をつけました。
個性的にしたくて持ち手に花をつけました。
都倉さんはこの生徒にアドバイス。
「アイデアはとてもいいね。でも、このままでは花が水を吸えなくてすぐに枯れてしまいます。切り口に水を含ませた綿をつけるなど、方法はあるので覚えておいてくださいね」
生徒の体験が終わると、次は都倉八重子さんによるアレンジメントのデモンストレーションが行われました。八重子さんは世界らん展日本大賞のフラワーデザイン部門で3年連続優勝の実績を持つ国家検定フラワー装飾1級技能士です。ショーに出るときの経験を話しながら、次々に生けていきます。
八重子さんのアレンジメントは、まず何を作ろうと決めてから取り掛かりません。容器や花の両でどれくらいの大きさができるか想像し、手に取ったものをどうやって挿そうか、その場で考えながら作品に仕上げていきます。このようなことができるのも、基本をしっかり理解しているからこそ。勉強することが大事です、と生徒たちに語りかけます。
八重子さんは作業をしている間にも、「忙しい時期はいつですか?」「上手く作れるコツは?」「作ったアレンジメントはどこで使われているのですか?」など、生徒から次々に浴びせられる質問に答えます。

生徒たちと話をしているうちに、約10分でアレンジメントが完成しました。お花屋さんとしてお客さんから注文を受ける場合も、やはり同じように会話をしながら、約10分弱で仕上げないといけません。今回は、そのスピード感も知ることができたデモンストレーションになりました。
最後に、講師の都倉さんから
「今日の作品は家に持って帰って、お父さんお母さんに見せてあげてください。そして、見えるところに飾って、私が作ったのよ、と会話をしてください」とお話がありました。また、デモンストレーションで作ったアレンジメントは、最後の全体集会のときに校長先生へプレゼントすることになりました。

寿司職

寿司職の講座では、寿司についての座学と、かんぴょう巻きの制作体験が行われました。

最初に座学として「寿司職人の仕事とは」と「寿司について」のテーマでお話がありました。料理を作る人はコックやシェフと言いますが、寿司の場合は板前とか寿司職人といい、専門の調理技術を習得した人を言います。すしを握る、箱に詰めて押す、巻き簾で巻く、の一連の作業は「手」によって行われます。世界中で料理を手だけで仕上げていくのは寿司だけだそうです。それだけにすし職人は手を大切にすると共に生き物を扱うだけに清潔ということに最大の注意を払っています。握り寿司は魚と米を材料に酢の酸味を利用しておいしく作られた食べ物で、長い間の歴史が育んできた日本固有の食文化です。
このようなことを学んだ後は、楽しみにしていたかんぴょう巻きの作製体験です。今回、学校では生魚は扱えないため、かんぴょう巻きが選ばれました。
すでに用意された材料は、酢めし、よく煮込まれ味付けされたかんぴょう、のり、道具は巻き簾、包丁です。
まず、手を徹底的にキレイに洗います。
巻き簾の上にノリを敷きその上に適度の量の酢めしをのせ伸ばします。
その上にかんぴょう、これも適度の量をのせ端から巻き簾を巻きます。
最初のうちは酢めしの量が多くて、巻き簾をほどいてみるとのりから酢めしがはみ出ているのが多く見られましたが、慣れてくるとそれもなくなり、たくさんのかんぴょう巻ののりと酢のいい香りが部屋いっぱいに広がってきました。
適度の量の酢めしを手にとり、のり上に乗せて広げます。
適度の量の酢めしを手にとり、のり上に乗せて広げます。
それを巻き簾で巻いてでき上がり。
それを巻き簾で巻いてでき上がり。
巻き終えた後は注意深く包丁の使い方を教えてもらい、一口大に切り分け、お皿への盛りつけ方を教えてもらいました。
最後はみんなでわいわい楽しそうに食べてお開きとなりました。筆者も食べさせてもらいましたが本当においしいものでした。
講師の先生によると、酢は高級な酢でかんぴょうも良いものを腕によりをかけて作ったものだそうです。「子ども達にこういう機会においしい本物を味わってもらいたかった」とのことでした。
包丁で切ります。
包丁で切ります。
最後の仕上げの盛りつけ。講師の見本
最後の仕上げの盛りつけ。講師の見本

生徒の感想

「本当においしかった」
「めしの量がうまくいかなかった」
「何ともいえないくらいおいしく楽しかった」
「スーパーでいつも買うかんぴょう巻きより抜群においしかった」
「今まで食べた中で一番おいしかった」
「お米がちがうみたい。普通の寿司屋ともちがう」
「かんぴょうにコクがあった」

と大絶賛でした。

「仕事に対する『志』を学ぶことができました」 と生徒がお礼の言葉

最後にはまた全体集会が行われました。
各講座から代表の生徒が、何を体験したのかを話した後、学年代表の生徒が挨拶をしました。ここで花き装飾の講座での実演で制作されたフラワーアレンジメントも校長先生に渡されました。

生徒代表からの挨拶

今日、自分の仕事に誇りを持って続けてこられたみなさんからのお話しを聞けて、僕らは今後の仕事についての「志」を見つけられたのではないかと思います。みんな笑顔で体験した内容について話していたことからも、どの講座もとても面白かったということがわかります。ありがとうございました。

生徒からお礼の合唱が

そして、生徒たちから講師へお礼の合唱が送られました。これから仕事について考えていく生徒たちにとって意味のある言葉「明日を探そう(Let’s serch for tomorrow)」という曲です。とてもすばらしい合唱に、講師からも大きな拍手が起こりました。

都倉正明さんからの挨拶

最後は、川崎市技能職団体連絡協議会を代表して、技連協の副会長で花き装飾の講師、都倉正明さんより挨拶がありました。

まず、すばらしい合唱のお礼を述べた後、「技能職者に学ぶ」では体験をしてもらいましたが、この短い時間では「技能」は身につけることができません。ご飯を食べるときの箸の持ち方、歩き方などと同じように、社会に出ていろいろな体験を通し、見て、聞いて、記すことで身につけていくものです。私も、海外へ行くことがあるとホテルのロビーに飾ってある花を見ては「この国にはこういう花があるのか」と勉強をします。人生は終わりになるまで勉強です。自分はこうだ、と決めたらそれに向けて一生懸命勉強して、社会に貢献してください。

全8校で開催された「技能職者に学ぶ」。その道のプロから直接講義をしてもらい、実際に体験する経験は、これからの生徒たちの職業選択の幅を広げる機会になることでしょう。