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キラリ輝くものづくり人づくり 平成19年度掲載企業

アップコン株式会社

「コンクリートを上げるから『アップコン』の松藤です」。松藤展和社長のブログの書き出しだ。『アップコン』とはその名の通り、沈んだコンクリート床を床下から持ち上げて修正する工法のこと。社名にもなっている。工期がぐっと短縮でき、営業を止めずに施工できることから、各方面から注目を集めている。また全国放送にも取り上げられ、『アップコン』の認知度も高くなってきており、施工体制の強化、新技術の開発など、更なる事業拡大のために、新しい優秀な人材の確保にも力を注いでいる。

トップインタビュー(アップコン株式会社 代表取締役・松藤展和さん)

コンクリート床スラブ沈下修正工法『アップコン』とは、どんな工法なのでしょうか?

 「軟弱地盤や地震、機械などの重みが原因で沈下したコンクリート床にドリルで小さな孔を開け、そこにウレタン樹脂を注入し、樹脂の発泡圧力で床下からコンクリートを押し上げて平らにする工法です。マーケットは、コンクリート床のある建物。例えば、工場・倉庫・店舗・学校・住宅などです。実は社名も『アップコン』といいます。社名と工法名を同じにしたのは、社名と製品名を同じにしているコカ・コーラからヒントを得ました。その方が憶えてもらいやすいと思ったからです」

元々海外にあった工法だそうですが、松藤社長は、日本で起業した経緯は。

 「このウレタン樹脂を使用する床沈下修正工法を知ったのは、海外で十数年建築関係の仕事をしていた時です。従来のように、コンクリートを打替えることなく、凹んだ部分をフラットな状態に戻してしまう、見たこともない工法を目の当りにして、感動したものです。地盤沈下の多い日本においてこの工法は役立つのではないか、この社会貢献度の高い事業を日本中に広めたいと思いました。
 その後独自に研究を重ね、京都議定書に先駆けて、完全ノンフロンのウレタン樹脂を開発し、また日本の狭い道路事情にも対応できるよう機械も小型化し、新工法『アップコン』を開発して、2003年6月に事業をスタートしました」

従来工法である、コンクリートを一度取り払い再度流し込む『コンクリート打替え』工法に比べて、アップコンではどんな利点があるのですか。

 「業務を止めずに短時間で修正ができる。」という点です。コンクリート床の沈下修正は、現在でも、『コンクリート打替え』が一般的ですが、(1)時間・コストがかかる、(2)騒音・ほこり・振動がある、(3)産業廃棄物(コンクリート塊)が出る、(4)大型プラントの設置が必要、(5)沈下の原因である軟弱地盤が改良されていない、といった問題点があります。これらの点を全て解消したのが『アップコン』工法なのです。
 創業当初、大手物流業者から倉庫の沈下修正工事を受注し、1万㎡を超える面積を施工して高床式コンクリートスラブの沈下を約130ミリ修正しました。この工事は『コンクリート打替え』に比べ約半分のコストで済み、商品の保管や出荷等の業務を止めることなく施工できたので、お客様に大変喜ばれました」

地震国・日本では地盤沈下も多く、まさに引く手あまただと思います。昨年(2007年)は能登半島沖、新潟県中越沖と大地震が続きましたが、事業は忙しかったのではないですか。

 「忙しかったです。能登半島沖地震、新潟県中越沖地震だけでなく、大きな地震が発生した後は、いつも以上にお問合せを頂きます。地震は予期せぬ天災なので、お問合せ内容も、「早く修正したい。」というのが多くあります。昨年夏、能登半島沖地震の影響で沈下した石川県内にある工場の床を施工させて頂いたのですが、「突然の地震で床が沈下しました。工場が休業しているお盆の期間内に修正したい。」というのがお客様の要望でした。その修正面積はトータルで約2,400平方メートル。最大で約140ミリ沈んでいました。お客様の要望に応えるため、施工スケジュールを調整し、お盆休み中に修正させて頂きました。
 お問合せはこのような工場の他、倉庫・店舗・学校や、住宅など沢山頂きます。創業から少しずつ施工体制を強化し、当初1台だった施工機械も、現在は4台になりました。今後は更に、施工機械台数やスタッフを増やし、施工体制を強化していきたいと考えています」

地盤沈下が起きてしまった後の修正について話を伺ってきましたが、被害を未然防止・軽減させるために取り組んでいることはありますか。

 「コンクリート床の「沈下修正」の他、軟弱地盤を圧密強化し改良する「地盤改良」、地盤だけ下がり床下と地盤の間にできる隙間を埋める「空隙充填」なども展開しています。現在は、武蔵工業大学と共同で、「耐震対策」技術の研究・開発に取り組んでいます」

事業の拡大ぶりは、07年4月に初めて大学新卒者8人を採用したことからもよくわかります。松藤社長は、入社希望者一人一人に2時間ずつかけて面接しているそうですが、求める人材や面接の際のポイントは?

 「面接のポイントは、「やる気があるかどうか。」です。具体的には、中途採用の面接の場合は、仕事においての失敗談を聞きます。例えば、失敗を小さい段階で隠さずに手を挙げたか、ダメージを小さく食い止めたか、失敗で何を学んだか、などです。新卒採用の面接の場合は、新卒者は社会経験がないので、失敗談ではなく、「あなたの良いところだけを出して下さい。」と言います。中途でも新卒でも、面接で多くある質問が、会社の“現状と将来”です。知名度が低い当社ですので当然の質問でしょう。ですから2時間の面接は、その大半をアップコンという会社の情報提供に当てます。」

会社の組織の在り方について、松藤社長よくロケットに例えるそうですね。

 「スタッフ一人一人をエンジンに例えれば、今は25基のエンジンです。会社が更に成長するには、一人一人が、より速く、より高く、より遠くへ真っ直ぐ飛んで行かなくてはなりません。人を増やせばパワーアップするかもしれませんが、一方向だけ強ければ、斜めに飛んで落ちてしまう可能性もあります。「こちら方向が強いから、今度はこちらが必要だ。」と、今必要なタイプの人間を判断して採用するようにしています。また当社では「仕事は自分がつくるもの。」との精神で、新しい取り組みも、手を挙げた人がリーダーとなって業務を進めています」

社員の資格取得を積極的にバックアップしているそうですね。

 「社員が取得したい資格があれば、手を挙げさせて、勉強してもらっています。一人が受験するときは、職場でカバーするし、受かったらテキスト代や受験料を出しています。今では技術部のほとんどが1級土木施工管理技師なんですよ。私はみんなに「会社をうまく利用して、自分が成長して下さい。」とよく言っています。個人の成長こそが企業発展の原動力だと考えているからです」

最後に、将来的にアップコンをどのような会社にしていきたいとお考えでしょうか?

 「現在の工法に満足することなく、ウレタンという無限大の可能性を持つ材料を使い、新しい施工機械を開発することによって、2の矢、3の矢と新しい工法をどんどん市場に出し、未来に向け更に成長していければと思っています。土木・建設業界に、「より経済的で、効率の良い、安全な、そして環境に優しい新工法」を提案し続けていく研究・開発型企業でありたいと思っています」

社員のコメント 戸田律子さん/営業部・マーケティングGグループ

 前職は大企業で、建築にも土木にも無縁な、海外営業・貿易実務の仕事をしていました。でも、「こうすればいい、ああすればいい」と思っても、組織が大きすぎて、自分の意見で会社を動かすことはできない。転職を決めたのは、「自分の意見を聞いてもらえる仕事をしたい」という思いからです。“未経験でもやる気のある人”というキャッチフレーズでマーケティング担当を募集しているアップコンの広告を目にしたのは、ちょうどその頃です。
面接をして頂いて驚いたことは、その時間の長さです。志望動機や転職理由など聞かれるかと思っていたのですが、私はほとんど話をせず、その大半は、アップコンに対する社長の熱弁でした。しかしその目はきらきら輝いていており、話から会社の成長性が伝わってきて、是非アップコンで働いてみたいという強い気持ちになりました。
 入社した頃は、実は色々苦労しました。スタッフは社長を含め5名しかおらず、マーケティングというポジションはアップコンにとって初めてのこと。また、私自身も建築・土木の経験もない、マーケティング業務も未経験という状況にも関わらず、特にこの業務を教えてくれる担当者もいない状況でした。直属の上司である多忙の社長を捕まえて仕事を教えては頂きましたが、社長はマーケティングを担当している訳ではありません。試行錯誤をしているうちに、アップコンでは、自分から手を挙げて進んで業務に取り組まなければならないことを、実感しました。
 今年6月には、当社は創業から丸5年を迎えます。今ではスタッフの数も25名になりました。社長の採用のお考えなのでしょうか、なぜか個性が強い人ばかりです。正直、まとめることが難しいこともありますが、様々な意見が出て勉強にもなります。会社が成長するということは一歩一歩ですから、マーケティングという側面からアップコンという会社に貢献できるよう、今後も試行錯誤で頑張っていきたいと思います。

【事業内容】

●土木工事、建築工事業
 コンクリート床スラブ沈下修正工法「アップコン」による施工・施工管理
 (沈下修正、空隙充填、地盤改良、止水、断熱)
 コンクリート床スラブ沈下修正工法「アップコン」の技術的研究・開発
学校の教室の床も沈下修正
学校の教室の床も沈下修正
床下に潜って特殊樹脂を注入する
床下に潜って特殊樹脂を注入する
●企業方針
健康第一・安全第一・家庭第一を理念とし、スピードと環境を重視した経営を行い、社会貢献度の高い研究開発型の企業となることを目指す。
【会社概要】

■社 名 アップコン株式会社
■設 立 2003年6月
■所在地 〒213-0012 
      神奈川県川崎市高津区坂戸3-2-1 KSP東棟611
      TEL044-820-8120 FAX044-820-8121
■代表者 代表取締役 松藤展和
■URL    http://www.upcon.co.jp/
■E-mail info@upcon.co.jp