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キラリ輝くものづくり人づくり 平成19年度掲載企業

営電株式会社

 試験用のテレビ信号発生器を主力製品に、世界へと販売先を拡大している栄電。
 製造したテレビがきちんと映像を映せるかどうかを確認するのに、試験用の信号が不可欠で、同社の国内シェアは9割に達する。さらに、アナログ波からデジタル波へとテレビ用電波が大きく変換してゆく時期にさしかかり、世界へと市場が広がる。栄電の深川正人取締役業務企画室長に自社の技術の強みや世界戦略についてうかがった。

トップインタビュー(営電株式会社 取締役業務企画室長・深川正人さん)

試験用の信号発生器とはどのようなものですか?

 「例えば、日本で中国のテレビを製造し、また逆に中国で日本のテレビを製造するなど、いまやテレビは自国以外のさまざまな国々でも製造されています。製造したテレビは、当然のことながら、きちんと映像を再現できなければならない。ところが、その検査をしようとすると、問題が起きます。日本、中国、米国、欧州などでそれぞれの電波のタイプが異なっているためです。そこで必要になるのが、当社が手がける信号発生器。この装置は、例えば中国にいながら、日本のテレビ信号と全く同じタイプの試験用信号を発生できます。日本にいるのと同じ環境で日本向けのテレビがきちんと映るかどうかを検証できるわけです。米国にいて欧州向けのテレビを、中国で米国向けのテレビを、といった具合に、さまざまな製造場所での検証が可能になります」

世界ではさまざまなタイプの電波が使われているわけですね。

 「世界のテレビの電波は、大きく分けてアナログ3種類、デジタルは現在5種類になります。これらすべての電波の信号発生器を手がけるのは世界でも当社だけです。日本でのシェアは9割に達します。手がける装置は1台で200万円から800万円程度と高額な機械です。あるアジア系大手電機メーカーの製造工場では、生産ラインの真ん中に当社の信号発生器をずらりと重ねた大規模な『信号室』を備えるケースもあります。しめて3億円ほどの機材です」

取引先にはどのような企業がありますか。

 「取引先にはNHKや民放テレビ局、通信、電機メーカー、ITなど日本の大手メーカーが多数あります。海外では中国の長虹電子や韓国のサムスン電子、LG電子、また欧米のメーカーなど多数あります。中国、台湾、ブラジルなど世界30カ国に製品を出しています」

地上デジタルなど、デジタル化が進んでいます。

 「現在、日本では地上波デジタル放送へと向けて急速に動いています。しかし、世界を見渡せば、まだ『9割以上がアナログ』というのが現状なのです。つい先だっても、ベトナムのメーカーから『アナログのテレビを作るから』と信号機の注文を受けました。その世界の電波がこれから続々とデジタルへと変わっていこうとしています」

海外市場ではどこが伸びていますか。

 「中国の放送科学院と提携し、デジタル放送の測定器を納入しています。また、中国の清華大学、上海交通大学とも技術提携しており、中国のデジタル放送向けには、うちが『いの一番』で機器を出しています。中国では清華大学方式と、上海交通技術大学方式の二つのデジタル方式になる動きで、これに対応して当社は両方でライセンス契約を結んでいます。このように、以前は、海外というと中国との取引が多かったのですが、このところ、ブラジルとのつきあいも深まってきています。ブラジルでは2007年12月からデジタル放送が始まり、ちょうど機器の生産が始まるタイミングです。そのブラジルで、先ごろ、『デジタル放送とはこういうもの』と、デジタル放送を説明するセミナーを開きました。テレビメーカーや研究関係など約300人もが集まってくれました。日本が2011年にデジタル化するのに続き、ブラジルは2015年、中国も2020年にデジタル化します。このように、デジタル化の波はこれから、ブラジル、米国、中国、さらにベトナム、インド、アフリカへと展開していきます」

デジタル化を含め、技術開発のスピードが非常に速い分野ですね。

 「デジタル化の進展の中、つい先だっては薄さ3㍉の有機ELが発表されるなどテレビは急速に変わってきています。この状況の中で、国内のライバルが出る前に、いの一番にデジタル化に合わせたビジネスを展開していきます。なぜ、それが出来るのかと言えば、信号発生器に特化しているのは当社だけ、という強みです。生産から開発、設置工事まで全部やるところが、うちのメリット。せっかく発生する信号がよくても、それを送るのに変なケーブルが使われたり、また、ケーブルの長さ、ケーブルの曲がる角度などによっても、よい信号が流れなくなってしまうことがあります。それらをすべて自前でまかなって、よい信号を送ることができるのがうちの強みです。当社はアナログ時代から高周波の信号の技術が高いく、信号の質が非常によい。実放送以上のレベルの試験用電波を出すことができます。特許も取得していますが、むしろ、技術は特許で守るよりも、完全にブラックボックス化して守っています。公共の電波で特許を増やしてゆくことはやりづらい面があります」

社員の方は技術者が中心ですか。

 「社内は技術者が8割です。文化系の人が多い企業と違って、社内で上下関係にからんだつきあい残業などはほとんどありませんね。営業畑でもつきあいゴルフなどにほとんど縁がない。これら技術者のうち、半数以上に海外勤務経験があります。当社が、ここまでやってこられたのは、生産から販売まで自社で独自に行ってきたから。販売でも、代理店を通さずに直接販売しています。直接販売するのは、お客さんの生の声を聞くことがとても大切だからです。『もっと、こうしてくれないか』『このあたりが壊れやすいのだが…』などと顧客の声を直接知ることが何より大切です」

従業員の研修はどのようにしていますか。

 「入社して1年間は研修。1カ月間は机上で学び、その後、お客さんの所を一緒に回ります。2カ月後に製造部門に配属。その間、英語の研修を月2回、1年間かけて続けていきます。なにより、ものづくりを学ぶのが基本になります。はんだづけも自分の手で経験する。技術者が開発に回ったときに、作りやすい商品を開発するためです。いくらよいコンセプトでも、作りにくいものでは困ります。そのためにもまず製造で学ぶこと。もう一つ大切なことが人間関係です。会社の全員を知ることが求められ、そのためにも人数の多い製造部門で学ぶことが求められるわけです」

採用面で苦労することはありますか。

 「採用面でも、認知度が上がってきました。これから大学のゼミとの関係を深め、ゼミの先生とのつながりから採用を進めていきたいですね。いったん入社すると、離職率はゼロに近いのが自慢です。やりたいことがやれて、やりがいを持てる点や、人間関係がよく、アットホームなことがよいのでしょう。むしろ、もっと競争心があってもいいくらいと感じます。採用に当たっては、ものづくりに興味があること、成績や大学でなく、自分でものをつくることの喜びを感じる学生がほしいですね。実際、当社に入ってくる学生は、何かものを作った経験を持っています。今の時代は、7割方がソフトになっていますが、ソフトはまねが出来てしまう。その点、ものづくりは真似できないですからね。入ってきた若者には、『どうせ仕事をするのなら、海外をまたにかけた技術者になれ』と呼び掛けています」

業績は好調ですね。

 「当社はもともと、川崎・久地で創業しました。手狭になり、10年前にこのマイコンシティに、一番早く来ました。これまで赤字を出したことはなく、売り上げは年に5%程度の伸びになっています。昨年は十数%伸びました。2007年3月期の売り上げは43億円。このうち35%は海外向けです。今後は、現在の技術をコアにして、世の中の趨勢を見極めながら、海外のデジタル化に合わせた商品を作っていきたいと考えています」

クラブ活動も盛んだと聞きます。

 「野球やフットサル、つり、ボウリング、さらにミュージカルを鑑賞する芸術鑑賞部もあります。野球は各社対抗の野球の黒川リーグに参加して、2週に1回程度、ナイターで練習します。20人ほど集まり、中には女性もいて、一緒にプレーしています」

社員のコメント 青木常真さん/第三技術部第一課

 昔からものづくりに興味がありました。大学で勉強した電気のことを仕事に生かして、自分自身でものを作りたいと考えてこの会社に入りました。変調器の基板の図面を引くところから始めました。いま手がけている信号発生機は、一つで放送局ができてしまうような機器で、これまでのものに比べて大幅に小型化した商品です。初めて設計を任されたのがこの装置です。3人で1年くらいかけてきましたが、最終的に一つにまとめ上げるのが大変でした。コミュニティー放送局などで使える機器であり、売れてほしいと思います。

【事業内容】

●放送・通信機器、電子応用計測器の開発・製造・販売
テレビ信号発生器のISDB-T MODEL3520A
テレビ信号発生器のISDB-T MODEL3520A
【会社概要】

■社 名 営電株式会社
■設 立 1964年10月
■所在地 〒215-0033 
            神奈川県川崎市麻生区栗木2-7-1
      TEL044-988-2111  FAX044-987-7053 
■代表者 代表取締役社長 深川嘉男
■URL    http://www.eiden-gp.co.jp
■E-mail  弊社へのお問合せは、ホームページのお問合せフォームをご利用下さい。