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キラリ輝くものづくり人づくり 平成19年度掲載企業

株式会社検査技術研究所

 「21世紀の安全管理をサポートします」―。検査技術研究所のカタログや会社案内には、こんな言葉とともに、イルカの姿が描かれている。イルカと言えば超音波を連想させるが、同社は、検査の対象物を破壊することなく内部の傷や劣化を見つける、超音波による非破壊検査に使われるセンサー・探触子(プローブ)を専門に年間約5000個製造・販売し、業績を伸ばしている。「求める人材の最低条件は、もの作りが好きなこと」と言う岡賢治社長に、業績好調の理由や製品開発の考え方、人材開発の秘けつなどについて話を伺った。

トップインタビュー(株式会社検査技術研究所 代表取締役社長・岡賢治さん)

超音波探傷検査とはどのような検査ですか。また現在、同検査は産業界で注目を集めているそうですが、どのような背景があるのですか。

 「超音波探傷検査とは非破壊検査の一つで、超音波センサを金属など検査対象物に当て、そのエコーから、表面や内部にある有害な傷(亀裂や劣化など)を発見し、事故を未然に防止する検査です。例えば、店でスイカを買う時、実の出来具合を、ポンポンとたたいて判断しますよね。それと同じ原理です。最近クローズアップされてきたのは、大阪・エキスポランドのジェットコースターの車軸破損事故や、航空機炎上事故、中越沖地震による原子力発電所の損傷、エレベーター事故など、安全を脅かす事故が多発していることが大きいですね。超音波の探触子専門に製造・販売している当社は2007年8月決算では売り上げを前期比2割近く伸ばしております。今や、いろんな分野でこの検査が必要とされており、乗り物では検査しないことはありえない。飛行機は揺れると怖いが、検査しているはずと信頼しているから乗ることができるんじゃないでしょうか」

超音波による非破壊検査が注目されるようになったのは、産業界の意識変化もあるそうですね。また、放射線を使う検査に比べて利点はどんなことでしょうか。

 「国民全体の安心・安全への意識が高まったことももちろんありますが、製造メーカーなどでも、モノを簡単に捨てていたバブル景気のころとは違って、設備をできるだけ維持管理をして大事に長く使い続けるように、企業の意識が変わってきました。また高品質のものをより安くて迅速に作るために、不良材料を早期に見抜く必要が高まってきました。そのため高性能なセンサーによる非破壊検査が重視されるようになったわけです。放射線の場合は、対象物の向こう側にフィルムを当てなければならないが、超音波の場合はその必要がない。限られた時間の中での検査方法として非常に有効です。また人に害を与えないという点でも超音波の方が優れているというのが私たちの考えです」

検査技術研究所は1961年に東京・蒲田で現会長の金子重雄氏さんが、非破壊試験器材の研究開発を目的に創業したそうですが、超音波探触子の開発を手掛けるようになったのはいつからですか。

 「当社では試験片(人工的に傷を作っている鉄の固まり)のほか、浸透探傷試験用浸透探傷剤を97年まで、磁粉探傷試験用探傷器を92年まで製造販売していましたが、価格破壊もあって、大手にはとてもかなわないという状況になりました。超音波のセンサーについては既に70年から製造販売を始めていましたが、人材を超音波部門に移した方がいいという判断に至ったのです。放射線については、先ほど述べた理由もあって取り扱っていません」

超音波探触子、つまりセンサーだけを作っているのは検査技術研究所しかなく、それが強みになっていると伺いましたが、どういうことでしょうか。

 「装置とセンサーの両方を作っている会社はほかにもあります。これに対し、うちではメーンの装置を作っていないから、大手に対しても全く競合しないし、むしろそういう所からも注文が来る。また、何よりも強みは、全体の9割方を占めるオーダーメードでの開発です。『ちょっと、変わったことをしたい』といった要望に応え、検査対象や形状に対応した形のセンサーを作る。大手だと普通2~3カ月かかるものが、うちなら、図面をその日のうちに書いて納品まで1週間、長くても1カ月で出せる。大量生産ではなく1個2個だけ作る。客にとっては、値段より時間優先なんです」

主力商品の「アレイ探触子」はどのようなものですか。

 「医療の分野で使われている『エコー』の工業版と言えば分かりやすいでしょう。このセンサーは当てただけで内部が3次元的画像で見える。何チャンネルも時間差攻撃ができ、ビームを振ることができる。また短時間しかいることができず、スピードが要求される原子力施設内の検査でも有効です」

検査技術研究所の評判が一気に高まったのは1988年に成功した「ちび太くん」と「ぺちゃ子さん」など小型探触子の開発ということですが、どんな商品ですか。

 「『ちび太くん』は直径2ミリの世界最小の超音波垂直探触子です。『ぺちゃ子さん』は厚さ1ミリの超薄型垂直探触子で、車の部品のすき間でもOKです。どちらも狭い所や曲がった所の傷を見つけたいなどという、ユーザーからのニーズに応えて生まれた商品です。細くて長い水浸探触子『ガリガリ君』という商品もあります。これからも新たなニーズに積極的に応えていきたい」

さて、多種多様な顧客の要望も受け止め商品を開発したり、開発から納品まで1週間というスピードを保ったりするには、技術力の高い社員の存在が不可欠ですが、求める人材や人材開発について、どのような考えを持っていますか。

 「モノを作ることが好きな人間が採用の最低条件。作るのが嫌という人には来てもらっても仕事はありません。非破壊検査は、大学の一般的な教科ではないので、社内でいろいろ訓練して知識を身につけるしかない。(1)注文を受け(2)図面を書いて(3)(社内または外注で)製作を依頼(4)図面と照合して組み立て(5)出来上がったものの性能を確認し(6)梱包・発送する―など、工程の1から10までやれる人材が必要なんです。当社は、単品種大量生産の大手とは違って一度に何百個という注文はない。1個2個の注文が何百種も付加価値が高くても来るので、いろんなものを開発し、作り、組み立てができることが必要です。同じものを作っているのは全体の1~2割にすぎず、一度書いた図面を何度も使うことはまずない。ほとんど毎日、違う図面を書き、違うものを作っています」

岡社長の掲げる経営理念を教えてください。また、定年退職以外で会社を辞めた人がいないそうですが、社員のやる気を引き出す秘けつは。

 「当社の経営理念として、(1)夢と若さを持った『ものづくり』集団を目指す82)理念とアイデアを持ち共に行動する(3)失敗を恐れず新しいものにチャレンジする(4)仕事、職場、顧客、家族を愛する―を掲げています。社員教育では、10年で課長になってほしい、という方針のもと、『指示したことをある程度やれる』までに5年、『注文を受けて図面書きや手配が自主的にできる』までにさらに5年と設定し、教育を行っており、事務職を除けば全員がCAD(コンピューター利用設計システム)をこなせるようになります。また各種資格取得や講習会受講を奨励し、社内で出来ないセミナーは商工会議所などのセミナーを活用。資格取得者には見返りとして資格手当を出しています。とりわけ協会の非破壊試験技術者の資格認定試験を積極的に受けさせています。この資格は仕事自体に必要不可欠なものではないのですが、客と話をする上で必要な知識です。ものづくり集団として、全員が自信を持ってお客様と接することが出来るように育てたいと常に考えています」

社員のコメント 平井伸一さん

ものをつくることがとにかく大好きで、知人の紹介で中途入社しました。それから10年が過ぎ、今は組み立ての仕事を中心に行っています。標準品についてはほぼ任せてもらっており、かなり神経を使う精密な作業が必要な探触子についても担当しています。
 忙しいときは非常に忙しいのですが、忙しいだけの報酬は得られます。それも満足なのですが、自分が作ったものが世の中に出ていくということに本当にやりがいを感じています。今、新幹線の車軸を検査するセンサーを作っているんですが、日本の安全・安心に役に立つと思うと、気持ちが入ります。一人で何種類も作っていて、大きな事故がニュースで報じられると、「うちに仕事が来るかな」とつい思ってしまいますね。
 あと、社員教育の面でもわが社は充実しています。社内で上司から直接指導を受けることはもちろんですが、社長の「必要な所には惜しみなく出していく」という方針のもと、資格取得に取り組んでおり、既に有機溶剤作業主任者の資格を取ったほか、いろんな講習会に出させてもらっています。とりわけ、協会の超音波(UT)探傷試験技術者の資格認定はレベル2まで取ったので、レベル3をできるだけ早く取れるよう頑張りたいと思います。

【事業内容】

●超音波探傷試験用の各種探触子、各種探触子ケーブルの製造・研究開発
●超音波探傷試験用標準試験片の検定および頒布(日本非破壊検査協会から受託)

【代表的な製品】

各種探触子
各種探触子
超小型垂直探触子「ちび太くん」
超小型垂直探触子「ちび太くん」
アレイ型探触子
アレイ型探触子
アレイ型探触子
アレイ型探触子
【会社概要】

■社 名 株式会社検査技術研究所
■設 立 1961年4月3日
■所在地 〒210-0803 
            神奈川県川崎市川崎区川中島2-16-18
      TEL044(277)0121 FAX044(277)0120
■代表者 代表取締役社長 岡賢治
■URL    http://www.PROBE-KGK.com
■E-mail  info@PROBE-KGK.com