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かわさきマイスター活動レポート

「かわさきマイスター匠展」3日目レポート

提供:川崎市

実演コーナー 5人のマイスターが魅せた名人技

最終日の9月3日(金)は、5人のマイスターが登場。閉幕まで、来場者の人波が途切れることはありませんでした。参加されたマイスター(認定年度、職種)は、関戸秀美さん(平成13年度、神社寺院銅板屋根工事)、若林近男さん(平成13年度、表具師)、三上峰緒さん(平成14年度、美容師)、久保田宗孝さん(平成21年度、デザイン彫金士)、小林伸光さん(平成14年度、和服洗い張り)です。

■1日目、2日目の様子はこちらでご覧いただけます。
 マイスター匠展 1日目
 マイスター匠展 2日目

関戸 秀美さん(神社寺院銅板屋根工事)―鏨(たがね)を使ってのシルバーリング、根付け製作体験

「荒らし鎚(あらしづち)」を使ってスプーンに模様をつけます
「荒らし鎚(あらしづち)」を使ってスプーンに模様をつけます
主に神社仏閣の修理改修を手掛ける関戸さん。最終日は1日目に続いて、鏨や鎚(つち)を使ってシルバーリング、銅の根付け、真鍮製のスプーンに模様をつける実演、来場者の製作体験を行いました。また、銅板屋根を飾る鬼板、銀瓶、建水(けんすい、茶道具のひとつ)なども展示され、来場者の注目を集めました。

土台に薄い金属板をかぶせてなじませ、鎚で叩いて整形する「絞り」は板金の高等技術。関戸さんは0.3ミリ~0.5ミリの薄物から、1~1.5ミリの厚物まで自在に絞りをこなせます。また、金属板を鎚で叩いて工芸品を作る「鎚起(ついき)」という技に卓越しており、塔の上などにつける「宝珠(ほうじゅ)」作りに長けています。関戸さん製作の宝珠に縦一直線に光が入るのは、ひずみがない証なのです。

あちこちの問屋から修理の依頼が持ち込まれる関戸さん。「難しいものほど面白い」と言い切る、「匠」の名にふさわしいマイスターです。
販売・製作体験のシルバーリングと真鍮製の根付。鏨を組み合わせ、様々な模様を作ります
販売・製作体験のシルバーリングと真鍮製の根付。鏨を組み合わせ、様々な模様を作ります
匠の磨きこまれた道具の数々。すべて手作業という仕事には様々な道具が欠かせません。使い勝手がよくなるよう、道具も自ら加工します
匠の磨きこまれた道具の数々。すべて手作業という仕事には様々な道具が欠かせません。使い勝手がよくなるよう、道具も自ら加工します

若林 近男さん(表具師)―手作り額の「裏打ち」

表具師とは、掛け軸、襖、屏風などを扱う職人のこと。若林さんは経験と技術が物を言う修理・修復を得意とする、最高峰の腕前を持った表具師です。生地選びから糊張りまで、熟練の技能を発揮します。修理・修復では失敗が恐くて表層を剥がすこができない職人も多いそうですが、若林さんの正確な仕事は多くの顧客から厚い信頼を得ています。
初日に表具師の技能で最も難しい「裏打ち」を披露した若林さん。この日は襖紙を使った和封筒の販売で参加されました。品のいい手作り封筒を手に取り、気に入って購入していく来場者の姿が後を絶ちませんでした。

三上 峰緒さん(美容師)―結ぶ・編むの基礎を実演指導、「夢のある編み込み」の紹介

美容界の第一人者である三上さん。日本の礼法や中国古来の思想を取り入れて考案した「夢のある編み込み」は、髪型を芸術の域にまで高めた作品です。テーマを考えてから創作するのが流儀。作品には世相も反映させるといい、今回の展示にはありませんでしたが、不況が長引く今年、創作したのが「融通の風」。金色の水引を用い、みんなが幸福になるようにとの願いを込めました。
来場者の手を取りながら、編む・結ぶの基礎を指導。組みひもを自由自在に操り、次々とお手本を示していました
来場者の手を取りながら、編む・結ぶの基礎を指導。組みひもを自由自在に操り、次々とお手本を示していました
「編み込みは世界四大文明の頃からあり、『夢のある編み込み』もその流れに沿ってあるんです」と三上さんは話します。方々の美術館を巡ったという研究熱心なマイスター。作品の素晴らしさもさることながら、その知識の宝庫に驚嘆させられます。



久保田 宗孝さん(デザイン彫金士)―加工実演、写真とフォトフレームで作品を紹介

デザインから加工、リフォームまで、ジュエリーに関する相談はなんでも受け付ける久保田さん。噂を聞き付け、他店で断られたデザインや修理の注文がたくさん、舞い込んできます。初参加の匠展では、「自分の仕事を紹介したい」と意欲を燃やしていました。

昨日に引き続き、今日も多くの来場者が指輪の修理、加工を注文していました。プラチナリングのサイズ直しの場合、いったんリングを溶かし、過去に直している部分があれば、そこにプラチナを挟んで鑞付けし、サイズを大きくします。
久保田さんのように、現代的なものからアールヌーボー調のアンティックデザインまでこなすのは、この世界では珍しいといいます。「僕はなんでもやります」とマイスター。確かで高度な技術を持っているからこそ、言える言葉です。

「ジュエリーは高価なだけに、物語があります。お客さんと知り合うとドラマが見えてくる、それがこの仕事の面白さです」と語ってくれました。

★久保田さんのより詳しい情報はコチラ

小林 伸光さん(和服洗い張り)―洗い張り「伸子(しんし)張り」

伝統技法「洗い張り」の工程のひとつで、「伸子」と呼ばれる細い竹棒を使って布をのばす「伸子張り」の技法に優れている小林さん。伸子でぴんと張られた生地の美しさは会場でも一際目を引き、大勢の来場者が足を止め、眺めていました。中には、「昔、母がやっていたのを手伝ったことがあるわ」と、懐かしむ方も。
「洗い張り」で鮮やかな色合いによみがえった生地で仕立てたミニチュア着物
「洗い張り」で鮮やかな色合いによみがえった生地で仕立てたミニチュア着物
伝統技法を継承しているだけでなく、丁寧で端正な仕事はマイスターの証です。よそで断られたというお客さんが全国から、小林さんの腕を見込んで、注文してきます。

「洗い張り」の工程の中で、最も難しく熟練の技が必要とされるのは、「汚れをブラシで水洗いすること」と小林さん。古くなった生地が水を吸うと、艶を取り戻して生き返ります。また、水だけで洗うから、絹に汚れが吸着しません。

古くなった着物もこうした手入れをすることで、何世代にも受け継いでいくことができるのです。