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かわさきマイスター活動レポート

都倉正明さんのフラワーアレンジメント講習会

マイスターと作るお正月の生け花

提供:川崎市
都倉さんがアレンジメントした生花
都倉さんがアレンジメントした生花
かわさきマイスター・都倉正明さんを講師に迎えての「お正月用フラワーアレンジメント講習会」が12月26日(日)、高津区の川崎市生活文化会館(てくのかわさき)で開かれました。これは、てくのかわさきで毎年年末に開催され、10年以上も続いている恒例の教室。毎回申し込みが殺到、リピーターも多く、キャンセル待ちも出るという大人気の講習会です。この日も川崎市だけでなく、県内各地から参加者が集まり、都倉さんの講義を聞いた後、指導を受けながらお正月向けのフラワーアレンジメントを楽しみました。午前と午後の部(各定員30人)のうち、午前の講習会の様子をお伝えします。

マイスター紹介/都倉 正明さん

祖父の代からの花卉栽培農家に生まれ、その後、生花店を営む都倉家へ婿入りして宮前区で都倉生花店を経営している都倉さん。長年、花の栽培や管理で培った専門知識がフラワーアレンジメントの技能にも生かされており、98年には世界らん展フラワーデザイン部門で最優秀賞に輝きました。生涯現役を掲げて作品作りに挑戦するとともに、生花業界の役員として後継者の育成にも力を注いでいます。フラワー装飾1級技能士。平成10年度かわさきマイスター認定。平成13年度卓越した技能者(「現代の名工」)表彰。平成19年度黄綬褒章受賞。

都倉さんの紹介ページはこちら

遊び心を大切にアレンジを楽しむ

参加者のみなさんは都倉さんのお話に熱心に耳を傾けていました
参加者のみなさんは都倉さんのお話に熱心に耳を傾けていました
川崎市からの紹介の後、都倉さんは「みなさんと一緒に花を生けることができてありがたいことです。一生現役でこうした教室を続けていきたい。また、それが生き甲斐だと思っております。花に始まり、花に終わる、そういう人生を送りたいと思っております」と挨拶されました。

続いて講義を開始。五葉松、若松、千両、ピンポンマム、黄スプレーカーネーション、撫子の6種の花材を前に、「今日はお正月用ということで、1月7日の松の内まではもつ花材を揃えました。花も人間と同じ生き物ですから、作ったものは水をあげてきちんと管理して下さい」と都倉さん。丸いぼんぼりのような形が愛らしいピンポンマムについては、「これは菊の改良種です。この種類の葉はもたないので、坊主にしてしまいます。可哀想ですが、こうすれば、最低でも1ケ月はもちます。種類によってはこうした作業も必要だということを覚えて下さい」と説明を加えました。
本日の花材。左から五葉松、千両、撫子、若松、黄スプレーカーネーション、ピンポンマム
本日の花材。左から五葉松、千両、撫子、若松、黄スプレーカーネーション、ピンポンマム
次は生け方について。「まず中心とおへそを決めてから生けてください。中心に挿す枝の長さは容器の約3倍が適当です。それから、枝を挿すのに何度も場所を変えない。何回もやっていると、スポンジの穴が増えてお花の形が崩れてしまうので、決めたところにぱっと挿していただきたい。挿す時は枝が倒れないようにぐっと挿し込んで下さい。揺れても形が崩れないのは技術のひとつですが、それを覚えて下さい」とのお話に、参加者のみなさんもじっと耳を傾けていました。

フラワーアレンジメントで都倉さんが特に大事にしているのは、個人の自由な発想。生け方のポイントを指導した後、都倉さんは「中心を決めたら、後はみなさんのお好みで自由自在に作って下さい。遊びを兼ねてというか、いろいろな形が作れればそれだけ楽しみがあるということですから、お花の向きもあれこれ自由に生けてもらいたい」と話し、生徒さんの独創性を促していました。

段差をつけて空間を生み出す

ピンポンマムの葉をむしって準備万端
ピンポンマムの葉をむしって準備万端
ピンポンマムの葉をむしって、いよいよ生徒さん達が作品作りに取り掛かりました。教室のあちこちから、パチン、パチンと花ばさみの小気味好い音が響いてきます。都倉さんは教室を回り、悩んでいる生徒さんを見つけるとアドバイス。あちこちから「先生、これはどうしたらいいですか?」と声がかかります。都倉さんは「松は切り残しの短い枝も下の方を埋めるのに使えるので捨てないでください」「まっすぐでなく、斜めに枝を切ると挿しやすいですよ」「長い枝、短い枝を作って段差がつくようにして下さい」などと教えて回ります。千両を生けるのに苦労している生徒さんには、「実のついた枝を中央に挿す時は後からやると実がこぼれるので、先に入れた方がいいですよ」などと、細かいアドバイスをしていました。
まずは中心に若松を挿します→
まずは中心に若松を挿します→
次にピンポンマムでおへそ(下)を決めてから全体を作っていきます
次にピンポンマムでおへそ(下)を決めてから全体を作っていきます
生徒さんの相談にのる都倉さん
生徒さんの相談にのる都倉さん
「段差をつけて挿してください」とアドバイス
「段差をつけて挿してください」とアドバイス
長女の都倉八重子さん(左)
長女の都倉八重子さん(左)
都倉さんにとって心強いアシスタントが、長女で後継者の都倉八重子さん(日本マイスターフローラルアーティストスクール主宰)。都倉さんと同じフラワー装飾1級技能士の資格を持ち、数々の受賞歴を持つ実力者で、オートクチュール・フルールの講師でもあります。父娘ともども教室を回り、生徒さんにアドバイスしていました。
「どこに挿そうかしら」と枝をかざして考える生徒さん
「どこに挿そうかしら」と枝をかざして考える生徒さん
手早く生けていく人、枝をいろいろな角度にかざしては考え込む人など、生徒さんはそれぞれのペースで作品作りに取り組んでいました。一人だけ、立って枝を挿している生徒さんも。「玄関の上に飾りたいので、立っている人に見てもらう事と玄関のスペースをイメージしてアレンジを考えました」とのこと。
玄関の上に飾りたい、と言っていた生徒さんの作品。ほぼ完成です
玄関の上に飾りたい、と言っていた生徒さんの作品。ほぼ完成です
短い枝で下の部分を埋めていきます
短い枝で下の部分を埋めていきます

充実の講習会に大満足、の生徒さんたち

参加者のみなさんにお話を伺いました。

「お花が大好きなので、ふだんからお花を買ってきては生けています。この教室はお友達に誘われたのがきっかけで、今回で3回目です。都倉先生は、この通りに生けなさいとおっしゃるのではなく、自由にやりなさいと言って下さるところがいいです。大事なところだけをしっかり教えてくれて、後は自分で考えながらアレンジして生けることができます」

「先生に枝に段差をつけて空間をあけるようにアドバイスしてもらい、変化が生まれたと思います。使うお花がいろいろな色があってきれいなので、生けていて楽しかったです。花をいっぱい刺せたのでボリュームも出て、大満足。今回で2回目ですが、この教室は自分で作って、部屋に飾れる、ふたつの楽しみがあります。夢中になれるし、いい気分転換になりました」

「どこから見てもスポンジが見えないように工夫して生けました。お花は癒されるので大好きです。生花があるとお正月らしいので、この教室はお正月の花を生けるのにちょうどいいなと思って参加しました。申し込みが遅かったので、参加できてラッキーです」
完成しました!
完成しました!
教室終了後、生徒さんは作品を紙袋に入れて大事そうに持ち帰りました
教室終了後、生徒さんは作品を紙袋に入れて大事そうに持ち帰りました

日本古来の生け花を普及したい

教室終了後、都倉さんにお話を伺いました。

「日本のお正月なので、日本的なものを教えたい、とこの講習会を開いています。特に日本古来の生け花を普及したい、という気持ちがあります。私のフラワーアレンジメントの特徴は自然の枝を生かすところですが、それは生け花に通じると思います。花の枝にはどれも違いがあり、それを生かすのが技術です。フラワーアレンジメントの基本は、中心とおへそを決めること。そして、今日のポイントは花の使い方です。これは私独自の発想ですが、花の色ごとに分けて生けるときれいに見えます」

「私は海外に行くと、まず、ホテルのロビーにある花を見ます。すると、その国の今が分かりますね。例えば、フランスはファッションの国ですが、花の流行とファッションの流行が共通しています。以前、ホテルにひまわりがあった時は、黄色い服が流行っていました」
「この講習会の生徒さんは年々、完成させるのが早くなっていると感じます。数回来ている方もいるので、要領がわかっているんでしょう。若い人と年配の方では、生け方も違います。同じ花を使っても、若い人は華やかですね。花を見れば、その人の性格まで分かります。頑固な人もいれば、几帳面な人もいる。こうした教室は人それぞれの個性が出て、教えていて楽しいですね」

「生け方がわからないで悩んでいる方には、その場で教えてあげます。今日は枝の使い方や挿す順番などについてよく聞かれました。生徒さんはどうしても、花を寄せてしまいがち。また、後ろもなるべく枝で埋めてくださいと教えました。こうした事を自分で生けながら勉強してもらい、できあがったものに満足感を感じてほしいと思います」

長年、生花に携わってきた都倉さんは、花を人と同じように気遣う言葉をしばしば口にされていました。そんな都倉さんが作品作りで最も大切にしていることは、個人の自由な発想。優しい人柄と遊び心を併せ持つマイスターは、大勢のお客さんや生徒さんに支持されています。

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