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かわさきマイスター活動レポート

2011てくのまつり・取材リポート

マイスターが川崎最高峰・匠(たくみ)の技を披露

提供:川崎市

川崎最高峰の技をマイスターが披露

2011てくのまつり 取材リポート

「2011てくのまつり」が2月20日、川崎市高津区溝ノ口の、てくのかわさき(川崎市生活文化会館)で行われました。川崎市が極めて優れた技術、卓越した技能で市民の生活を支えている技術・技能者として認定している「かわさきマイスター」が、川崎最高峰の匠(たくみ)の技を来場者に披露しました。
川崎市技能職団体連絡協議会の技術・技能者も、訪れた子どもはじめ市民のものづくり体験を援助したり、相談に応じました。
この日、てくのかわさきでは、「すくらむ21まつり」「大山街道フェスタ」の「地域の祭り」も開催され、大にぎわいでした。
「てくのまつり」を主催したのは、川崎市生活文化会館(指定管理者・公益財団法人神奈川県労働福祉協会)。川崎市技能職団体連絡協議会と、かわさきマイスター友の会が協力しました。大山街道活性化推進協議会が後援しました。

地元農産物即売も行われ、にぎわう会場
地元農産物即売も行われ、にぎわう会場
マイスターの会場案内を見る来場者
マイスターの会場案内を見る来場者

5人のマイスターが実演

かわさきマイスターの石渡弘信さん(手描き友禅染めの製作=高津区在住)、石井一夫さん(刃物研ぎ・鋸目立て=多摩区在住)、浅水屋甫さん(広告看板製作=幸区在住)、飯嶋義弘さん(時計技能士=川崎区在住)、田中司好さん(食品サンプルの製作=宮前区在住)が、長年かけて身につけた匠の技を実演しました。
会場に訪れた人たちは、匠のくりひろげる技に見入り、「へー」「すごいね」「さすがにマイスター…」と感嘆の声をあげ、拍手を送っていました。

手描き友禅の石渡弘信さん

石渡さんの筆の動きを見る来場者
石渡さんの筆の動きを見る来場者
「川崎マイスターの方々の実演が始まります」と場内放送が流れました。最初に実演したのは手描き友禅染めの石渡弘信さんでした。
中年の女性が石渡さんのテーブルを囲み、生地に描く筆の動きをじっとみつめます。
石渡さんは筆を止め、「染め物屋に入ったころは雑用ばかりで、いつ染めの仕事ができるのだろうかと思ったものです。初めて仕事をさせてもらったときはうれしかったでしたね」と、見ている人たちに修業時代の体験を話しました。
数々のコンテストで賞を獲得している技の一端を見た中年の女性は「苦労されて身につけられた技を見せていただき、ありがとうございました」と述べていました。
石渡さんは日本の伝統文化である友禅染めについて「習得するのにとても時間がかかります。そういうこともあって、後を継ぐ人をつくるのが大変です」と現況を語りました。そして「この地域に私のような者が友禅染めで暮らししているんだということを知ってもらえる機会(実演)をつくっていただき、感謝しています」と話していました。

石渡さんの詳しい紹介はこちら

刃物研ぎの石井一夫さん

研いだ刃を来場者に見せる石井さん
研いだ刃を来場者に見せる石井さん
「お願いします」といって中年の主婦が刃に少々さびの浮いた包丁を差し出しました。
石井一夫さんが「包丁はね、気をつけて使えば長持ちするんだよ」といいながら、手にした包丁を研ぎ始めました。刃物研ぎの実演開始です。
しばらくして、見守る主婦の前で石井さんが研いだ刃の切れ具合を見せました。主婦は笑みを浮かべ「ありがとうございました」と頭をさげました。
包丁の切れ味を蘇らせた石井さんは、長年修業して刃物研ぎ、鋸目立ての第一人者の技術を身につけました。
実演では、そのごく一部を披露しました。
石井さんが「奥さん、包丁を水につけたりしてジャブジャブ洗ったらだめだよ。(刃をはさみ、とめている柄を示しながら)ここに水が入り込み、刃がさびていく。刃をさびさせないために、柄も濡れ布巾でていねいにふいて、水分をとること。これを忘れないようにね」と助言をしました。
「お客さんがあってこそ、いまの自分がある」を肝に銘じて日々の仕事をしている石井さんは、実演を見にきた人たちを「得をした」(中年の主婦)気分にさせていました。

石井さんの詳しい紹介はこちら

広告看板製作の浅水屋甫さん

来場者の注文に応えて書く浅水屋さん
来場者の注文に応えて書く浅水屋さん
実演場の壁に真っ白な模造紙が張り出されました。小学校3年生の男の子がサッと、「歩」と手書きしたメモ用紙を差し出し、「相撲の字で書いてください」と声をかけました。浅水屋さんが模造紙に向かいました。大きな筆が動き始めました。あの大相撲の場でお目にかかる書体による「歩」が書きあがりました。
注文した男の子と、その母親がじっと「歩」の字を見つめます。男の子が「すごい。うれしい。おじちゃん、これ、僕がもらっていいの?」と声をあげました。浅水屋さんは「いいよ。あげるよ」と答えました。
顔中笑みでいっぱいの浅水屋さんは「こうして、喜んでもらえると、とても、やりがいを感じるね」といいながら、男の子に「歩」を書いた模造紙を手渡しました。
中学校卒業後、看板店に住み込んで修業し、腕を磨いた浅水屋さんは「実演は、こんな仕事(広告看板製作)が川崎にもあるのだよと、多くの人に知ってもらえる機会になったと思う」と話していました。

 ■浅水屋さんの詳しい紹介はこちら

時計技能士の飯嶋義弘さん

飯嶋さんの技を映し出す大画面(右)
飯嶋さんの技を映し出す大画面(右)
定時で列車を運行する要である鉄道員の持つ時計の分解が始まりました。実況する大きな画面に映し出される机上に並ぶ極小のゼンマイはじめ部品。分解後は組み立て。元通りの時計が画面に現れるまで20分余です。
2.5倍の大きさで見える「きずみ」というレンズを片目につけ、時計の一つひとつの部品と向かい合う飯嶋義弘さんの実演は、訪れた人たちを驚かせていました。「なんといっていいか、とにかく、すごいというほか、言葉が出てこない」と高齢の男性が感想をいっていました。
「故障した時計で、直せないものはありますか」と若い男性が質問しました。飯嶋さん「直せないものはないね。パーツのないものは作らなければならないので、修理代が高くつく。直す、直さないは、その人の持っている時計の価値観の問題だと思うね」と語りました。
50年余、この道一筋で磨き上げた技術を多くの人たちに「認められる」ことを「最高の喜び」として、来場者に実演で技をみてもらい、相談に応じていました。

■飯嶋さんの詳しい紹介はこちら

食品サンプル製作の田中司好さん

作ったキャベツを見せる田中さん
作ったキャベツを見せる田中さん
実演する田中さんのテーブル前で子連れの父母たちがケーキやカレイの煮付け、エビの天ぷらなど食品サンプルを見ながら「食べたくなったわ」「おいしそう…」と語り合います。
田中さんが、鍋の湯(水温約40度)に薄い黄緑のロウを流し込みました。〝葉〟のようになったロウをすくいあげます。次に、すくいあげた〝葉〟を先にすくった〝葉〟に巻きます。大きくなった玉を手の平に載せ、包丁で切りました。「キャベツそっくり…」と中学校2年生の女生徒が声をあげました。
田中さんが「やってみる?」と声をかけ、女生徒に湯の中で浮く〝葉〟をすくい取らせました。女生徒が〝葉〟を重ねますが、形が整いません。田中さんが手助けをしました。女生徒が「私も作れた。うれしい」と声をあげ、手の平に載せた〝キャベツ〟を眺めました。
田中さんは1960年から食品サンプルづくりをしています。本ものを見ずに形、色を本ものと同じように作り上げます。田中さんは「みなさんに、喜んでもらえるよう(研究し、技術を高めるよう努力し食品サンプルを)作ってきました」と話していました。

 ■田中さんの詳しい紹介はこちら
会場に掲示された「かわさきマイスター」を紹介するパネル
会場に掲示された「かわさきマイスター」を紹介するパネル

勢揃いし展示、相談に応じる

1階工作実習室のマイスター・配置図
1階工作実習室のマイスター・配置図
川崎市最高峰の匠(たくみ)マイスターを紹介するパネルの展示や、実演も行われ、来場者を魅了した4階会議室に特設されたコーナ
川崎市最高峰の匠(たくみ)マイスターを紹介するパネルの展示や、実演も行われ、来場者を魅了した4階会議室に特設されたコーナ
作品展示や相談に応じた4階展示室
作品展示や相談に応じた4階展示室
ハムなどの試食も行われた5階調理室
ハムなどの試食も行われた5階調理室
かわさきマイスターが勢揃いして、製作実演、作品の展示・販売、来場者の質問、相談などに応じました。また、かわさきマイスターの活躍を紹介するビデオ上映やパネル展示も行われました。
かわさきマイスター友の会の大橋明夫会長(プレス順送・金型設計製作=川崎区在住)も自ら作った製品などを展示しました。縦横15㌢ぐらいの金属板が直径数ミリの自動車用の部品に出来上がっていく製造過程を示す実物を展示し、来場者に説明をしました。
大橋会長は「(来場者が)私たちの仕事に関心、興味をもっていただいていることを、質問を受けて感じました。うれしいですね。工場の中で黙々と仕事をしているので、人と話しをすることが少ないのです。こういう場で、いろんな人と話しができ、とても勉強になりました。マイスターとしての責任を強く感じました」と述べました。
この催しに取り組んできた感想を大橋会長は「私たちがどういうことをしているかを、たくさんの人に知ってもらうことができて、とてもよかった」と話していました。

作り上げた製品の説明をする大橋さん
作り上げた製品の説明をする大橋さん
多くの人たちが訪れた、かわさきマイスターが一堂にしての製品展示コーナー
多くの人たちが訪れた、かわさきマイスターが一堂にしての製品展示コーナー
洋菓子の元のひとつになっているチョコレートの試食が「とても美味しい!」と来場者を喜ばせた洋菓子士の浅谷理明さん(多摩区在住)の展示

ミニュチュア布団、座布団づくりの実演、展示、販売をしながら手作り布団の良さを語り、相談に応じる寝具技能士の内海正次さん(多摩区在住)
紳士服、婦人服の展示、生地の販売、パターン配布をする日本デザイナークラブ春夏モードショー優秀賞など受賞している只木角太郎さん(幸区在住)
熟練した高度な技能を示す掛け軸、屏風の展示や、封筒の展示、販売をしながら来場者の相談に気軽に応じる表具士の若林近男さん(幸区在住)
古くなった和服の汚れを取り、繊維全体を生き返らせる洗い張り「伸子(しんし)張り」にかかわる展示、実演をする小林伸光さん(左端市、川崎区在住)
来場者に縁結びの指導もし、創案した「夢のある編み込み」作品の展示、実演をする美容師界第一人者の三上峰緒さん(左3人目、多摩区在住)
食の安全にこだわった無添加ハム、ソーセージなどをつくって展示し、来場者に試食をすすめ、販売をする食肉加工士の畑幸男さん(右、麻生区在住)
色彩鮮やかな高精細な印刷ポスターなどを展示し、色を再現する印刷の相談に応じる印刷技能士の流石栄基さん(高津区の日本プロセス株式会社勤務)
細密精密な自動車部品にかかわるゲージ、治具、工具や電子部品にかかわる精密金型部品の展示をする円筒研削技能士の竹内三郎さん(川崎区在住)
世界にひとつの手づくり装飾品・ジュエリーの製作を実演しながらジュエリーの相談にていねいに応じるデザイン彫金士の久保田宗孝さん(川崎区在住)
アンテナや照明器具の反射板、灰皿、花器、各種パイプなど身近なものから、ボーリングのピン、カメラ部品、3次元加工品、ロケットの先端部分までバラエティに富んだ製品を手絞りで作る鍵屋清作さん(高津区在住)は金属ヘラ絞りによる作品を展示、販売
根付、シルバーリング作り体験、展示をする全国各地の神社、仏閣、宮殿の修理改修をしている神社寺院銅版屋根工事の関戸秀美さん(多摩区在住)

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