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かわさきマイスター活動レポート

震災被災者向け介護グッズを小中学校連携で制作第1弾

手作り介護グッズを被災地へ贈るプロジェクト~登戸小学校編~

提供:川崎市

「かわさき」から発信!手作り介護グッズを被災地へ贈るプロジェクト~第1弾・登戸小学校編~

 マグニチュード9.0という未曾有の大地震となった「東日本大震災」。少しずつ復興に向けた取り組みが行われてはいるものの、まだまだ不自由な生活を強いられている被災者の方が多いのが実情です。中でも身体に障害を抱えた方の多くは、さらにきめ細やかな支援を必要としています。
 そんな震災被災者のための支援の一環として、被災地の身体障害者の方々が少しでも快適に暮らせる支援をすべく、かわさきマイスターの栗田佐穂子さん指導による震災被災者向け介護グッズの製作が川崎市立登戸小学校と同市立枡形中学校の連携で実施されることとなりました。
 今回、ご紹介するのはその第一弾となる、登戸小学校で行われた取り組みについてです。

傘の布から材料となる「生地作り」に挑戦!

プロジェクトの講師を務めた、かわさきマイスターの栗田佐穂子さん(平成14年度認定/洋裁・介護服)
プロジェクトの講師を務めた、かわさきマイスターの栗田佐穂子さん(平成14年度認定/洋裁・介護服)
 7月14日(木)、力強く照りつける太陽と真っ青な空が拡がる夏の日に、かわさきマイスターの栗田佐穂子さんと、スタッフの方々が登戸小学校を訪れました。
 体育館で行われた今回の取り組みは、栗田さんをはじめ、登戸ドレスメーカー学院の先生や生徒さん、ボランティア団体「糸の詩」のメンバーの方等、総勢23名がスタッフとして参加、同小学校5年生の全4クラスの児童計132名を対象に、3・4時限目の授業を使い、介護服作りに欠かせない「生地作り」が、同小の体育館で行われました。

栗田 佐穂子(くりたさほこ)さん

あらゆる人にとっておしゃれで着やすい洋服「ユニバーサルファッション」の研究開発に取り組む先駆者であり、登戸ドレスメーカー学院・副校長として服飾全般の教鞭をとるかたわら、テレビや書籍等で広くその技術の普及に努めています。また、ボランティア活動にも積極的に取り組み、川崎市内を中心に活動するボランティア団体「糸の詩(いとのうた)」を主宰。10代~80代という幅広い年齢層のボランティアメンバーとともに「着やすくおしゃれな服や小物」を研究・製作し、その作品を医療施設等へ提供したり、ユニバーサルファッションショーといった普及イベントも開催しています。
平成14年度に認定されたかわさきマイスター。
★栗田先生の詳しい紹介ページはこちら
【連絡先】
登戸ドレスメーカー学院 アソシエCHACO

■住所:    川崎市多摩区登戸2130-2 アトラスタワー向ヶ丘遊園2F
■電話/FAX: 044-900-8844 / 044-900-8845
■営業時間: 10:00~20:00
■定休日:  日曜・祝日休み
■HP:   http://www.a-chaco.com

プロジェクターを使い、栗田先生らが手順を説明。熱心に耳を傾ける子どもたち
プロジェクターを使い、栗田先生らが手順を説明。熱心に耳を傾ける子どもたち
 介護服用の「生地」は、水に強く、汚れにくい布が最適です。とはいえ、そのような特殊な生地を購入すると材料費が高くなってしまいます。そこで、考え出されたアイデアが、撥水効果が高く、汚れにくい「傘の生地」の再利用。今回の取り組みで必要な分は、チラシで呼びかけて収集にあたったほか、市バスの忘れ物として保管されていたものの、持ち主が現れず廃棄処分が予定されていた「傘」を提供してもらうなど、約140本が集められました。
「不要となって捨てられたものではなく、落し物なので、新しい状態のものも多く、生地の状態がとてもいいです。チラシの呼びかけを見て提供してくださった方をはじめ、市営バス関係者の方々のご厚意には本当に感謝です」(登戸ドレスメーカー学院・束野菜穂子先生)
 作業手順の前に、実際に傘の布地を使って作られた洋服の紹介が行われると、子どもたちから「すごい!!」などの歓声があがりました。
 その後、栗田さんから傘をほどいて布の部分だけを取り除くという作業手順がプロジェクターを使って丁寧に説明され、「傘の骨の部分を目に当てない。ハサミで手を切らない」などの注意事項がしっかりと伝えられると、早速1クラスごとに3チームに分かれ、子ども達一人ひとりに傘が手渡されて作業が開始されました。
このプロジェクトのために善意で集められた傘約140本は、スタッフの方々が炎天下の中、学校まで運んでくれました
このプロジェクトのために善意で集められた傘約140本は、スタッフの方々が炎天下の中、学校まで運んでくれました
傘の生地を使い、介護服に仕立てた作品を紹介
傘の生地を使い、介護服に仕立てた作品を紹介

真夏の体育館もなんのその、作業に夢中になる子供たち♪

各チームにスタッフがつき、丁寧に指導が行われる中、暑い体育館内でも作業に集中して取り組む子どもたち
各チームにスタッフがつき、丁寧に指導が行われる中、暑い体育館内でも作業に集中して取り組む子どもたち
 材料となる生地を取り出すため、出来るだけ布の部分を切らないように、骨と布を結び付けている糸の部分を切る作業は、慎重さと丁寧さが要求される作業です。その細かい作業は、図工用の大きなはさみを使って行われました。
 開始早々、早い子は10分ぐらいで作業が終わりそうになるほど、器用に傘の骨組みと布の部分を切り離していく子もいれば、傘の仕組みの複雑さに悪戦苦闘する子も…。ただ、どの子どもたちも夢中で作業に取り組むその姿はとても印象的で、指導にあたるスタッフの方々からは「みんなとても熱心で一生懸命。集中力も高い」など賞賛の声が上がっていました。
 また作業中、進み具合が遅れ気味の子が「ちょっとやりにくい!!」と声をあげると、作業が進んでいる児童が進んでコツを教えたり、手伝ってあげるなど、みんなで協力して作業を進めていく姿をあちこちで見ることが出来ました。空調は扇風機だけという夏の体育館で、汗を流しながら作業を行い、しかもみんなの作業が終わるまでしっかり維持できる集中力の高さとチームワークは本当に立派でした。
 作業を見守っていた同小学校の井上なおみ校長は「今回の震災をただ“大変だ”で終わらせるのではなく、困った人に対して自分が出来ることは何かを考え、身近に出来ることがあればそれを行動に起こすこと。人のために自分が出来ることを積極的に取り組むボランティア精神を、この貴重な体験を通して学んでもらいたいなと思っています。そしてもちろん、その気持ちは大人になっても持ち続けて欲しい。そのためにも、こうした体験のチャンスを作っていくことが大切だと思います」とお話をしてくださいました。
スタッフの方にコツを教えてもらいながら「こうすればやり易いよ」と友達同士で協力しつつ仕上げていきます
スタッフの方にコツを教えてもらいながら「こうすればやり易いよ」と友達同士で協力しつつ仕上げていきます
ケガには十分気をつけつつ、傘の骨組み1本1本から糸を切り離していきます
ケガには十分気をつけつつ、傘の骨組み1本1本から糸を切り離していきます
汗だくになって真剣に作業する姿は、まるで小さなマイスターの風格が…
汗だくになって真剣に作業する姿は、まるで小さなマイスターの風格が…
布部分を取り除き、傘の骨組みだけになった部分をまとめて、後片付けもしっかり
布部分を取り除き、傘の骨組みだけになった部分をまとめて、後片付けもしっかり

被災地と関わっていく気持ちを持ち続けるきっかけに

子どもたちに感想を聴く栗田さん。子どもたちからは「面白かった」の声
子どもたちに感想を聴く栗田さん。子どもたちからは「面白かった」の声
 一通り作業が終わると、栗田さんが今回のプロジェクトの感想を子供たちにインタビューしました。子どもたちは「面白かった」「大変だったけど頑張った」と笑顔でこたえてくれました。
 栗田さんは「今日、作ってもらった生地を今度は枡形中学校に持って行き、最初に見てもらったようなお洋服やバッグなどを作ります。つまり、皆さんが作業して作ってくれたこの布をバトンとして、中学校のお姉さんやお兄さんに渡します。そして、この流れをゆくゆくは高校や大学に至るまでどんどんつなげていければいいなと思っています。
 もしかしたら秋から来年以降にかけて、皆さんが今日作業してくれた布で作ったバッグや洋服を着て喜んでくれる人をテレビや新聞で目にすることがあるかもしれません。どうか、楽しみにしていてくださいね。そして、今日ある幸せに感謝し、大切に資源を使っていくことを忘れないでください。」と子どもたちにあいさつし、無事イベントが終了しました。
 イベント終了後、栗田さんは「今回の震災では、子どもたち自身も地震で怖い思いをしたことと思います。でも、今回のプロジェクトを通して、モノを大切にする喜び、誰かの役に立つかもしれない喜びを経験することで、子どもたちが自分よりももっと大変な思いをしている被災地に対してより深い関心を持つ機会になればと思います。そして、そんな子どもたちの真摯な心が、忙しい大人をバックアップする力になることを期待しています。川崎から被災地へ、心を痛めているいる人が、少しでも元気を取り戻せるよう、言葉よりも心が伝わっていくことを願っています」とコメント。集められた大量の生地を見て「さぁ、今度は縫いまくりますよっ!!」と、笑顔で意気込みを語って下さいました。
 第2弾となる川崎市立枡形中学校でのプロジェクトは7月26日(火)に開催を予定。たくさんの人を笑顔にする、素敵な服が生まれることを期待したいと思います。
傘から外された布部分。きれいに取り外すことができました
傘から外された布部分。きれいに取り外すことができました
作業後、子供たちと「プロジェクト、大成功!!」とバンザイをする栗田さん
作業後、子供たちと「プロジェクト、大成功!!」とバンザイをする栗田さん
川崎市立登戸小学校

■住所     川崎市多摩区登戸1329
■電話番号   044-911-2124
■ホームページ http://www.keins.city.kawasaki.jp/2/ke208801/