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かわさきマイスター活動レポート

「かわさきマイスター匠展」1日目レポート

「次世代に伝えたい“一流の技能”をあなたに!」マイスターが集結し技を披露する匠展開幕!

提供:川崎市

「次世代に伝えたい“一流の技能”をあなたに!」マイスターが集結し技を披露する匠展開幕!

初日の会場。お昼頃を中心にたくさんの方で賑わいました
初日の会場。お昼頃を中心にたくさんの方で賑わいました
極めて優れた技術・技能を発揮して、市民生活を支えている方を対象に、川崎市が認定した「かわさきマイスター」の一流の技を間近で見ることができる「かわさきマイスター『匠展(たくみてん)』」が、8月31日(水)~9月2日(金)の3日間、10時~15時まで多摩区総合庁舎1階アトリウムにて開催されました。

「かわさきマイスター」とは、市内で活躍する素晴らしい匠の技術の継承や超一流の技能の普及・振興活動を目的に、川崎市が認めた市内最高峰の腕を持つ職人さんに与えられる、名誉ある称号です。募集は毎年、年齢が40歳以上でその職種に勤続25年以上の実績があり、優れた技術・技能を発揮している現役で活躍されている方を対象に自薦・他薦を問わず行われ、(1) 「その技術・技能が極めて優れており、欠くことの出来ないものであるか」、(2) 「現役の技術・技能職者として活躍中で、今後もその技を維持・発展できるか」、(3) 「その技術・技能を広く知ってもらうための市の事業に協力できるか」という3つの選考基準のもと、厳正なる選考審査・調査を経て、11月に認定結果が発表されています。この制度は平成9年度からスタートし、現在62名の方が認定を受け、「かわさきマイスター」として活躍されています。

開催期間中は、紀伊半島を中心に大きな豪雨被害をもたらした超大型の台風12号の接近に伴い、その影響によるお天気が初日から心配されましたが、3日間とも何とか無事に開催することができ、匠達はその一流の技を実演・展示し、訪れた来場者の目を楽しませました。

■2日目、3日目の様子はこちらでご覧いただけます。

マイスター匠展 2日目
マイスター匠展 3日目

初日は6人のマイスターによる実演披露

多摩区総合庁舎の玄関を入ってすぐの場所が会場となる1階アトリウムです。
通路をはさんだ両側に各マイスターの実演コーナーや展示スペースが設置され、入口付近には認定マイスターを紹介するパネルがずらり並べられました。紫色の「かわさきマイスター」ののぼりも立てられ、イベントの雰囲気を盛り上げていました。

8月31日(水)の初日は、初参加となるマイスターも含め、6人が実演を披露。それぞれの技を流暢な説明とともに来場者に披露しました。
参加されたマイスターは、下記の通り。※五十音順。( )内は名前読み仮名、認定年度、職種となります。

・石渡弘信さん (いしわたひろのぶ、平成9年度、手書友禅)
・内海正次さん (うつみしょうじ、平成10年度、寝具技能士)
・榎本かつ子さん (えのもとかつこ、平成21年度、美容師)
・小林伸光さん (こばやしのぶみつ、平成14年度、和服洗い張り)
・関戸秀美さん (せきどひでみ、平成13年度、神社寺院銅板屋根工事)
・只木角太郎さん (ただきかくたろう、平成11年度、洋服仕立て/紳士・婦人)

石渡 弘信さん(手書友禅)― 友禅染による小物の染 実演披露

スカーフに繊細な模様を描くのは根気のいる作業
スカーフに繊細な模様を描くのは根気のいる作業
石渡さんは、伝統的な友禅染の技法を用いて、型紙を用いずに下絵書きから彩色仕上げまでの全工程を全て一人で行う手書友禅のマイスターです。花や果物など日本の自然の豊かさ・美しさをデザインのモチーフにした作品は、深みのある上品で繊細な色合いが高く評価され、数々のコンテストで入賞。皇族のご婚礼振袖の文様を手がけたこともあります。

匠展への参加は今回が初となる石渡さんは、開場と同時に、イスに座って早速作業に入りました。まずは鉛筆でデザインの下書きです。全体のバランスを見ながら丁寧に注意深く描き始めたのは「ツユクサ」。鉛筆でさらさらと、細部まで丁寧に書き込んでいきます。
「友禅の技法は優雅な表現に適しています。昔は絵描きさんが絵の技術を上達させるために、手書友禅の職人になっていたようです。」作業の手はそのままに、そんなお話を伺えました。
友禅染の魅力を伝える石渡さん。お客様の会話もはずみます
友禅染の魅力を伝える石渡さん。お客様の会話もはずみます
生地に下絵を描き終えると、下絵にそってとめ糊を置く「糊置」の作業へ。今回は友禅の技法を使い、日本画の表現方法でスカーフにモチーフを描くということで、その工程数は多少平易なものになっていますが、その分ポイントを押さえた友禅染の工程がよくわかります。糊がかわくと、次は糊置きの内側に染料を入れる染付けの作業。ツユクサに色が入っていくと、奥深い色合いで染まったツユクサが本当にイキイキとしてきました。そんな作業の様子を熱心に見守っていた見物客の方がいらしたのでお話を伺うと「以前、友禅染の勉強がしたくて京都に行こうかと考えていたことがあったのですが…。川崎市にもこうした職人さんがいらっしゃったとは驚きと喜びでいっぱいです」という言葉を頂きました。その話しを聞き早速ご自身が自宅で開催している教室の案内をする石渡さん。そんな嬉しいご縁がつながるのも匠展ならではの出会いかもしれません。

★石渡さんのより詳しい情報はコチラ

内海 正次さん(寝具技能士)―座布団等の即売

ミニチュアの座布団にも職人の技が光ります
ミニチュアの座布団にも職人の技が光ります
内海さんは、使いこんでも緩まない「綴じ」に特徴がある冨田屋(とんだや)流の技を使い、お客様の一人ひとりが快適にぐっすり眠れる手作り布団を作る、寝具技能士のマイスター。内海さんがこだわる「綴じ」の種類は角綴じ、ハコ綴じ、三つ又綴じなど数種類あり、布団の生地や形状、用途に応じて使い分けます。また、座布団の角につける房も職人ならではのこだわりがあり、「この房があると、角が傷みにくくなり座布団が長持ちをするんです」と説明してくれました。

匠展の1日目では、マイスターの匠の技が光るイス座布団(1000円)、長座布団(3000円)、携帯置きにも最適なミニ座布団(100円~)などの展示販売を行ったほか、3日間を通して亀型・梅型といった変形座布団や本物同様、本格的な技術がつめこまれた1/25サイズの婚礼組布団やミニチュア掻い巻きなどの作品を展示。「人がやらないことに挑戦したい」という想いで作ったミニチュア作品は、川崎市内で作れるのは内海さんだけという特別な作品。通りがかる多くの人の視線を集めていました。また、熟練した匠の手によって均一に綿が入れられた、とても座り心地のよさそうな座布団を興味深く見入る見学者の方も大勢いました。
展示スペースに飾られた布団かいまきのミニチュアは職人ならではの精巧な出来栄え
展示スペースに飾られた布団かいまきのミニチュアは職人ならではの精巧な出来栄え
1日目の開会早々、内海さんの布団を見学していた来場者が早速イス座布団を購入しました。購入したお客さんに感想を尋ねると「確かな腕を持つ職人さんが作った座布団をこの値段で買えるなんてとってもお買い得だと思います!!」と嬉しそうに答えてくださいました。「お天気が悪いと座布団は持ち帰るのが大変だから心配だったけれど、お天気が持ったのでよかった」と嬉しそうに、何よりもお客様に喜ばれるものを何よりの信条としている内海さんらしい笑顔を見せてくださいました。

★内海さんのより詳しい情報はコチラ

■ふとんのうつみのホームページ
http://www9.ocn.ne.jp/~futon-u/

榎本 かつ子さん(美容師)―帯締めの実演

笑顔とトークを絶やさずに、丁寧かつスピーディーに帯結びを仕上げる榎本さん
笑顔とトークを絶やさずに、丁寧かつスピーディーに帯結びを仕上げる榎本さん
榎本さんは、美容師としてシャンプー・セット・メーク・着付けを全て一人で手際よく短時間で仕上げるマイスター。中でも和服向けのヘアアレンジと着付けは最も得意とする分野で、お客様の要望を即座にキャッチし、流行を取り入れてその人に似合う髪型に仕上げる技とアイデア、そして「楽に、苦しくなく、着崩れせずに」をモットーにした着付けは多くのお客様に喜ばれています。

紐や帯の締め方に独自の工夫をこらし、着付けをしてもらった人が「着物ってこんなに楽だったかしら?!」と驚くような技術を持つ榎本さん。当日は帯結びの実演を披露してくださいました。あでやかな緑の着物を身にまとった美しいモデルさんの横に立ち、榎本さんがいざ実演を始めると、伝統のスタイルにちょっとしたアレンジを加えた愛らしい帯結びがあっという間に完成!!10分弱という驚異のスピードで仕上げるにも関わらず、その見事な出来栄えに見物客からも感嘆の声があがりました。
多くの見物客で賑わった実演風景
多くの見物客で賑わった実演風景
「帯結びは“崩れ”を気にしてしまうと立体感が出なくなる。でもコツさえつかめば、こんな風に華やかな帯結びができるんです。アイデアはいくらでも出てきますよ」と話している間に、また新たなデザインの帯結びが完成。すると、会場から「それは、なんと言う結び方ですか?」という質問が飛びました。榎本さんが「これは文庫系の変形で特に名前は決めていないけれど…逆になんて名前をつけたらいいと思います?」と、笑顔で見物人の声にこたえると、会場から「鈴!!」という声があがり、榎本さんが「それは良い名前!この帯結びのタイトルは“鈴”です」。
そんな楽しいやり取りも繰り広げられた榎本さんの実演タイムは、軽いジョークと朗らかなトークで見物客の方の笑顔を引き出す、マイスターの人柄のおかげでとても楽しいひとときとなりました。

小林 伸光さん(和服洗い張り)―洗い張り「伸子(しんし)張木(はりて)」

伸子はりの実演をする小林さん
伸子はりの実演をする小林さん
小林さんは、和服のお洗濯ともいえる「洗い張り」という伝統技術を今に受け継ぎ、熟練した匠の技を使い古い着物を美しく蘇らせる腕を持つ、50年以上のキャリアを持つマイスター。「洗い張り」とは、まず和服をほどいて洗い→乾燥→湯のし(伸子はり)→仕上げ…という工程をすべて手作業で行う伝統技術です。お客様からお預かりする和服は高価なものも少なくなく、また思い入れの深いものを持ち込まれるケースもあるため、熟練した技術には繊細さも求められる仕事です。

会場では、伸子(しんし)と張木(はりて)と呼ばれる2種類の道具を使って行われる「湯のし(伸子はり)」の様子が再現され、小林さんが伸子はりを打つ実演を披露。見物客の方の中にはその光景を懐かしく眺め、足を止める方も多くいました。
見たことがない匠の技に子ども達も興味津々
見たことがない匠の技に子ども達も興味津々
一方で、伸子はりの様子を見たことがない若いお客さん達が足をとめると「この仕事をしていて着物というのは、生き物だなとつくづく感じます。それというのも、何十年に一度のお手入れで水を通すと、絹が生き返るのがわかるからです。そうやって大事にお手入れをすれば50年は持ちます。50年にわたって着る事ができる服というのは日本の着物以外にありません。さらに着物は、ボロになったらそれを雑巾にして使い、それも使えなくなったら燃やして、その灰を畑の肥料にしていた時代があるほど完璧なリサイクルができるものなんです。そんな日本の素晴らしい着物文化をこれからも多くの方に伝え、着物の価値を高めていきたいと思っています」と、熱く語っていた小林さん。穏やかに、でもしっかりとお話されるその姿に、失われつつある日本の伝統文化や技術をしっかりと伝えていく責任と姿勢を強く感じることができました。

★小林さんのより詳しい情報はコチラ

■港屋京染店のホームページ
http://www.e-daishi.net/0442663625.htm

関戸 秀美さん(神社寺院銅板屋根工事)―鏨(たがね)を使ったシルバーリング、根付け製作体験

銅板で出来た本瓦棒葺(軒先葺地)
銅板で出来た本瓦棒葺(軒先葺地)
精密な巧みの技はこんな調理道具にも…
精密な巧みの技はこんな調理道具にも…
関戸さんは、全国の神社・仏閣・宮殿の修理改修に携わり、50年以上の長い歳月を技能研鑽に捧げてきた銅板屋根工事のマイスター。迎賓館赤坂離宮や鶴ヶ岡八幡宮、大山阿夫利神社など、特殊な技術が必要とされる大舞台で匠の技が必要とされ、数々の実績を残してきました。「かわさきマイスター匠展」には初期の頃から参加、全国でも数少ない銅板職人としての技を今回も披露してくださったほか、展示スペースでは神社仏閣の屋根の先端に見かける飾りパーツやその卓越した技を駆使して作られた銅製の調理器具なども並べられ、訪れた多くの人がその細やかな匠の技を間近で見学することができました。
糸鋸(いとのこ)を使い、細かな模様を切りとっていく関戸さん
糸鋸(いとのこ)を使い、細かな模様を切りとっていく関戸さん
 実演スペースでは、「鏨(たがね)を使ってシルバーリング・根付作りの製作体験」を実施(料金1000円)。鏨(たがね)とは、彫金などを行う際に使用する道具のことで、金属を切断したり、彫ったり、削ったりするのに用いる、長さ7~8cmほどのいわば彫刻刀のようなものです。この鏨(たがね)と金鎚(かなづち)を使い、関戸さんは器用に模様付けを披露してくださいました。器用に道具を操り、生み出される繊細な模様はまさに芸術品にふさわしく、味わいある作品となり、その出来上がる様子を見ていた見物客が早速チャレンジする光景もみられました。

当日、取材のために会場を訪れていた高校生にインタビューを受けていた関戸さん。そのことについてお話を伺うと「彼らは私の後輩にあたるんですよ。こうした技術があるということに関心を持ってくれて、今日こうした場所で会えたのはとても感慨深いですね」と語ってくれました。ご自身も宮大工の現場で修行に打ち込む若い方に会うことも多いせいか、受け継がれる伝統と技術に関心を持つ若者がいることをとても喜んでいらっしゃいました。

★関戸さんのより詳しい情報はコチラ

只木 角太郎さん(洋服仕立て/紳士・婦人)―パンツ・スカートの型紙作成

型紙希望のお客様に採寸をする只木さん
型紙希望のお客様に採寸をする只木さん
只木さんは、紳士服・婦人服の洋服仕立てを手がけるマイスター。デザインを考え、型紙を作り、生地を裁断し、縫製を行うという洋服を作るための一連の作業をこなすのはもちろん、その作品を携えて、アジアやヨーロッパで行ったファッションショーの演出・構成までをも自分で手がけ、そのクリエイティブな才能をいかんなく発揮してきました。日本デザイナークラブ春夏モードショー優秀賞、神奈川県卓越技能賞など多数の受賞歴を持つほか、業界雑誌に洋服の製図や作品を長年掲載し、同業者の勉強会では講師を務めるなど、ファッション業界の後進指導にも積極的に取り組んでいます。

当日は、自らデザインし製作したダンディーなスーツ(紳士服)と、色内掛けにアレンジを加えエキゾチックな雰囲気に仕上げたドレス(婦人服)を展示したほか、生地を購入した方にスカートかズボンの型紙を無料で作るサービスを実施。用意された生地はどれも只木さんのお墨付きの高級素材。それがお値打ちの値段となっていて、さらにオーダーメードで自分専用にマイスターが採寸して作成してくれた型紙が無料でもらえるとなれば、裁縫の心得のあるお客様はそれがどれほど価値あることか一目瞭然。そのサービスを見て「本当に?」とおっしゃる来場者に、「大サービスですよ」と笑顔でこたえる只木さんという一幕もありました。
型紙は20分程度であっという間に仕上がりました
型紙は20分程度であっという間に仕上がりました
採寸したサイズをあっという間に型紙におこしながら、実演の合間にちょっとしたコツを教えてくれる只木さん。型紙を作ってもらった方にお話を伺うと「型紙さえあれば、好きな布地でまた作ることができるので本当にお得。裁断や布地にアイロンがけをするときのコツも教えてもらえて勉強になりました」ととても好評でした。

★只木さんのより詳しい情報はコチラ

取材をする神奈川県立向の岡工業高校の生徒さん
取材をする神奈川県立向の岡工業高校の生徒さん
また、この日は神奈川県立向の岡工業高等学校放送部の生徒さん2名が、文化部のインターハイともいわれる「全国高等学校総合文化祭」の神奈川県大会に「かわさきマイスター」についてのドキュメンタリー番組を作成・出品するために、取材に訪れていました。「かわさきマイスター」の存在を知り、ドキュメンタリー作品のテーマとして取り上げることを企画した同校1年機械科の浦井綾子さんは、「川崎にこんなすごい職人さん達がいることを今まで知りませんでした。そして、たくさんの人にその存在を知ってもらいたいと思い、今回のテーマに決めました」と、テーマに決めた理由をお話してくれました。また、撮影担当としてビデオカメラを手に熱心に展示品や浦井さんからのインタビューを受けるマイスターを撮影していた同校2年の久保貴成さんは「自分は電気科なので、今日展示されているのとはまた違うことを勉強していますが、やはりものづくりというのは興味深いなと感じました」と、感想を述べてくれました。若者が誇りに思える川崎のマイスター文化。県大会のみならず全国大会でもたくさんの方に発信できるよう、素晴らしい作品が完成することを期待しています。