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かわさきマイスター活動レポート

平成23年度 かわさきマイスター認定式レポート

市内最高峰の匠(たくみ)を5名認定、「かわさきマイスター認定式」

提供:川崎市

川崎市立労働会館(サンピアかわさき)にて「平成23年度かわさきマイスター認定式」式典

11月15日(火)午後2時~、川崎市立労働会館(サンピアかわさき)にて「平成23年度かわさきマイスター認定式・川崎市技能功労者表彰式」が開催されました。

「かわさきマイスター」とは、極めて優れた技術や卓越した技能を持ち、産業の発展や市民の生活を支える「もの」を作り出している現役の技術・技能職者に対し、川崎市がその“技”を認定し、川崎市内最高峰の匠として贈られる栄えある称号です。ここでは、同式典で開催された「かわさきマイスター認定式」の模様をレポートします。

認定を記念して、阿部市長と一緒に記念撮影をする、かわさきマイスターの皆さん
認定を記念して、阿部市長と一緒に記念撮影をする、かわさきマイスターの皆さん
認定は、平成9年(1997年)度から開始され、これまでに62人が「かわさきマイスター」として認定、市民祭りや各区民祭、技能フェスティバル等で、その匠の技を披露・製品展示等を行っているほか、小中学校にて子ども達に技術・技能の関心を高めるための実演や講演を行ったり、高校や職業訓練校にて実技指導や講義を行い、技能の継承や後継者育成に努めるなど、技術・技能の普及・振興に向けた様々な活動に取り組んでいます。今年度は17人応募があり、厳正なる選考審査の結果、新たに5名が認定されました。
認定証の授与式
認定証の授与式
「かわさきマイスター認定式」は、「川崎市優秀青年技能者」「川崎市優秀技能者」「川崎市技能功労者」181名の表彰式に続いて行われ、今年度新たに認定された5名の『かわさきマイスター』の方々に、阿部孝夫川崎市長より、認定証をはじめ50万円の報奨金の目録、ガラス工芸品、真鍮製の菊皿(かわさきマイスター3名の共同製作による)などの記念品が授与されました。
マイスターを代表して、阿部市長に謝辞を述べる伊原正男さん
マイスターを代表して、阿部市長に謝辞を述べる伊原正男さん
認定にあたり、阿部市長からは「皆様の卓越した技術・技能が“かわさきマイスター”として認定を受けられたこと、誠におめでとうございます。今後は“ものづくり都市川崎”を支え、後進育成にも力を入れ、ますます技術に磨きをかけてほしい」と祝辞が述べられました。その後、代表者謝辞として、技能表彰受賞者代表に続き、マイスター代表として伊原正男(内装工事)さんが「栄えある称号を受け、今後はマイスターとして、技術・技能の普及、振興活動を通し、より一層技能・技術を磨き、その継承に貢献していくことを誓います」と謝辞を述べました。式典の最後には、市長とマイスター認定者及び同伴者で記念撮影が和やかに行われ、認定式は無事終了しました。

今年度新たに認定された5名の方は以下の通り。
※年齢及び従事年数は認定日(平成23年11月15日)を基準としています。

内装工事 伊原正男さん(62歳)/従事年数 47年

伊原正男さんは、壁紙を使っての内装工事に卓越した技能を保持していることが高く評価され、今回マイスターに認定されました。

1964年から表具店に住み込みで働き始め、最初のおよそ2年間は下働きをしていました。下働きの期間中、昼休みに現場の張り作業を積極的に手がけ、その出来映えが認められたことがきっかけで、先輩から指導が受けられるようになり、徐々に技能を身につけ、4年目には1人で現場に出て仕事をするまでに成長しました。5年修行し、その後2年間お礼奉公し、その表具店には7年ほど勤めました。その後、ガラスサッシ、建具等を手がける内装会社に移り、内装の仕事に従事し、仕事の幅を広げていくことになります。

1980年に独立、「いはらインテリア」を立ち上げました。当時の表具屋は襖などを得意としていましたが、壁紙を使っての壁装の仕事は得意でない職人が多く、その仕事ができる職人さんはあまりいませんでした。一方、会社を立ち上げたばかりの伊原さんはそれまでの経験を活かし、壁装の仕事にも積極的に取り組み、工務店から重宝されるようになりました。時代が壁紙を使っての内装へと移行していくとともに、伊原さん自身も内装工事を重視し技術・技能の研鑽に努めたことで、経営は順調に推移していきました。技術の研鑽に努める中で、伊原さんは、たたみ皺(しわ)が出やすい自然素材・エコウォールなどの皺(しわ)を防ぐ「丸めだたみ工法」といった新工法の発案も行いました。

このほか、技能のみならず、伊原さんの卓越した話術は、各種講習会において卓越した内装工事の技能を伝えることにおおいに役立っています。「職人技は見て覚えろ」あるいは「盗め」ということにも一理ありますが、伊原さんのように、職人技の本質を正しく言葉で表現し、伝えることも現在の職人には求められており、職業訓練校での講習、全国各地でのメーカー、組合等での講習に伊原さんの話術が活かされています。職人技の本質を体だけでなく、話術を備えて伝える活動をしているマイスターです。
【連絡先】
有限会社インテリアいはら
住所:川崎区鋼管通1-1-9
電話: 044-366-7676 FAX: 044-366-6365

○ご本人のコメント
「これまで文化財となっている建物や高級料亭など、様々な場所で仕事をさせていただく機会に恵まれました。これらの経験を生かし、現存している住宅の中で文化を感じられるような価値ある仕事を今後もしていきたいと思っています。今後は後継者育成にも力をさらに力を注ぎ、“誇りを持って仕事をすれば素晴らしいものになる”ということを若者に伝えていきたいと思っています。」

金属ヘラ絞り 大浪 忠さん(65歳)/従事年数 37年

大浪忠さんは金属ヘラ絞りに卓越した技能を保持するマイスターです。

金属ヘラ絞りとは、回転する平面状の金属板にヘラ棒を当て、円錐状に加工させる技能で、プレス加工では難しい形状や、少量品の生産に適した加工方法であり、全身を使う熟練技を要する技能です。

大浪さんは、1961年に金属絞り加工会社に入社し、現場掃除などの下働きから始めました。当時、技術は「見て盗む」という時代であり、3年ほどは簡単な仕事しかやらせてもらえなかったそうです。その後、仲間5人で会社を設立し、さらに会社を分割するなど働く場所を変え、1982年に独立、相和シボリ工業を設立しました。

現在、同社は大浪さんと奥さん、そして後継者であるご子息の3人体制です。製品の素材は、一般的な鉄・銅・アルミだけでなく、ステンレス・真鍮などの難加工材や、モリブデン・タンタルなどのレアメタルまで幅広く対応し、素材ごとに異なる加工特性を熟知しています。また、ヘラ絞りの中でも特に技能が問われる「深絞り加工」も得意とする大浪さんは、工場内で使用するヘラ棒は、体に合うように自作し、また絞り機も古い旋盤を改造するなど、熟練技能によるものづくりを象徴しています。この他、大浪さんは、一般的には「熱処理(なまし)」が必要とされる加工も、なましを施すことなく加工することができる高度な技能も備えています。そんな大浪さんの高度な作業を補助する奥さんとの息のあった動きは、家族労働ゆえに可能な技の世界です。

これら大浪さんの持つ技能は、現在、後継者であるご子息に着実に継承されつつあります。また、そんな職人の持つ技を次代を担う子どもたちに紹介すべく近隣小学校の副読本にも掲載されています。

ご子息に技能を継承するとともに家族によるものづくりの世界を繋げているマイスターです。
【連絡先】
有限会社相和シボリ工業(http://aiwasibori.com/
住所:高津区新作3-3-2
電話: 044-888-6361 FAX: 044-888-6306

○ご本人のコメント
「今年の3月11日に起きた東日本大震災で宮城県石巻の実家で暮らしていた家族を亡くし、実家も流され意気消沈していましたが、亡くなった兄の分まで頑張って生きようと心に決め、今回“かわさきマイスター”に挑戦しました。もともと職人気質で華やかな場は苦手でしたが、頂いたチャンスを生かし頑張っていきたいと思います」

家具技能士 昼川 捷太郎さん(66歳)/従事年数 44年

昼川捷太郎さんは家具づくり、特に箱物の特注品に卓越した技を持つマイスターです。

1969年に宮内庁をはじめ官庁の特注家具を数多く手がける大手家具製造会社に入社、様々な家具づくりを手がけるその会社で、昼川さんは箱物の特注家具づくりの現場に配属され、特注に関わる技能を身につけました。1971年には3人で箱物の特注品を手がける家具会社を立ち上げ、昼川さんは、ここで特注家具づくりに従事しながら着実に技能を高め、6年後に昼川木工を設立、特注品家具づくりに専念してきました。

40年ほどこうした家具作りに従事してきた昼川さんの技能は、常に仕様の異なる特注家具づくりによって身につけてきたものです。それは、これまで製作したことのないような注文であっても、過去の経験でこなすという創造性と応用力を持った技能を形成することに繋がりました。昼川さんは「どう作りこむか迷ったときは、基本に立ち返るとともに、実験や試行錯誤を繰り返してきた」と話します。特注家具づくりでは、その一点の注文をこなすためだけのカンナやノミを自作してきたという昼川さん。その熟練技能のレベルの高さは、特注家具づくりの積み重ねに伴い自作してきたカンナやノミの数が100を超えるところにも現れているといえるでしょう。

2008年、昼川さんは昼川木工を整理し、新たな職場で若手の教育と相談にのるという新たな役割に挑戦しています。長年にわたる特注家具づくりで得た豊富な経験は、単に技能の伝承にとどまらず、若手が直面する特定の素材をカットする際の想像もつかないプレッシャーに打ち勝つための後押しという役割に拡がり、次代にその技を継承し続けています。

自身の人生の節目を超え、新たな挑戦に挑む昼川さんは、若手を一歩前進させる役割を担っているマイスターです。
【連絡先】
有限会社plots(http://www.plots.co.jp/
住所:宮前区東有馬5-25-3
電話: 044-852-0116 FAX: 044-852-0440

○ご本人のコメント
「30年間自社で働いてきましたが、30周年をきっかけに息子と同い年のような若い人達と一緒に仕事がしたいと想い、今はそうした若い人達と仕事をしています。家具の素材にも新しい流れがやってきて、木材にとどまらず、ガラスやプラスチックなど様々なものが使われるようになりました。それらの様々な素材の良さを生かした家具作りをするためにも、今後は今までの経験と技術を積極的に伝承し、業界に恩返しをしていきたいと思っています」

金属製品塗装技能士 堀切 義明さん(65歳)/従事年数 47年

堀切義明さんは工業塗装、特に金属塗装に卓越した技能を保持するマイスターです。

1964年、父親の経営する堀切塗装工業所に入社。塗装技術・技能を本格的に学んだのは、大学卒業後の入社以降でしたが、家業であったこともあり、中学時代から塗装の世界には関わっており、職人のやり方を観察し、自分なりに工夫を加え、失敗を繰り返し技能を身につけていきました。

現在の仕事の大変は、自動車の塗装ですが、いわゆる自動車修理の板金塗装ではなく、大型特殊車輌、貨物自動車の後方部リフト、自衛隊の後方支援車輌などの特殊塗装となっています。それぞれ特殊な車輌ということもあり、高度な塗装技術を備えていることが求められています。

この点、堀切さんは技術革新が著しい中で、日々新たな塗装技術の取得にも努め、耐塩害、耐化学薬品、耐放射線塗装、抗菌・脱臭・防水などハイテク塗装を真摯に研究し、常に塗装技術・技能の向上に取り組むことにより、今なお技術・技能は日々向上し続けています。

また、堀切さんの備えている高い技術・技能は、仕事だけでなく、各種の幅広い社会活動での貢献にもつながっています。平成3年からは神奈川県金属塗装技能検定委員に、平成8年からは中央技能検定委員、平成14年からは神奈川県工業塗装協同組合の技術委員長を務めています。この他、神奈川県東部総合技術校で塗装技術の指導、外国人研修生基礎級の塗装技術講習会での指導、川崎市の中学生を対象とした各種指導など、塗装技術・技能の継承と教育という重責を担い続けています。

特殊分野の技術・技能の研究を積み重ねると共に、技の継承と教育に積極的に関わっている堀切さんは、自身の技の研鑽はもちろん、業界全体の技術向上を牽引していくマイスターです。
【連絡先】
有限会社堀切塗装工業所
住所:川崎区浅田4-14-15
電話: 044-333-2051 FAX: 044-366-7744

○ご本人のコメント
「これまでも職業訓練校等で技術指導等は行ってまいりましたが、今回は更に大きなものを頂いたということで、大変身の引き締まる想いです。消防車には熱に強い塗装、原子力発電関係の車両には放射線遮断のための塗装をはじめ、塩害や石油化学薬品等、色んな業種や製品によって塗装は変わるものですが、数ミクロンの厚さで均一に塗装していく技術は勘が何よりも大切です。今後は更なる技術の研鑽はもちろん、技術・技能の伝承にもより一層尽力していきたいと思っています」

和服仕立業 吉田 茂さん(64歳)/従事年数 45年

吉田茂さんは和服仕立てに卓越した技能を保持するマイスターです。

1963年、高校卒業後に家業である和服したてを継ぐことを決め、和装の基礎を学ぶために呉服店に2年近く勤めました。その後、父親の経営する吉田和装所に入り、一から和服仕立ての修行を始めました。当時、和服仕立ての修行は住み込みで5~6年ほどで、1年のお礼奉公が一般的でした。

父親の時代は、和装に関わるあらゆる仕立てをこなしていましたが、吉田さんの時代になると、袴、帯などはそれぞれ専門の仕立屋が手がけるように変化しました。その流れの中で、吉田さんの和服仕立ては、次第にデパートの特選売り場を専門とするように変わっていきます。横浜のデパートの専属として、留袖・振袖などの高額商品の仕立てを数多く手がけ、そのデパートとの32年間の取引で、実に6000枚もの仕立てを行いました。当時、デパートからの仕事は、店員からの指名によるものが大半で、店員が上得意のお宅に仕立て品を届け、丁寧な仕事とほめられることが次の仕事に繋がりました。そうした店員の信頼を得るための仕事の丁寧さは言うに及ばず、様々な仕立て上の工夫を続けたことが、技能を高め続けることになりました。

2003年、デパートの和装売り場が閉鎖したことで、現在は過去の顧客から直接、注文が入ります。卓越した技を最大限に活かしながら、しかし、以前ほど仕事に追われることなく時間の余裕が持てることになった吉田さんは、和装の世界を伝える役割を担っています。

そんな吉田さんは、日本の伝統の世界を拡大していくことが期待されるマイスターです。
【連絡先】
吉田和装所
住所:幸区古市場1-48-10
電話: 044-511-1682 FAX: 044-511-1682

○ご本人のコメント
「今回の“かわさきマイスター”に際し、平成9年度に認定をされた石渡弘信さん(手描友禅)、平成14年度に認定された小林伸光さん(和服洗い張り)というお2人のマイスターに推薦頂き、こうした機会を頂けました。いわば、お2人の二枚看板を背負っているわけですから、今後は和装の魅力を一層広め、その期待に応えていきたいと思っています。」