地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、川崎の地域情報サイト「まいぷれ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

川崎の地域情報サイト「まいぷれ」

かわさきマイスター活動レポート

「2010てくのまつり」 取材レポート

13人の「かわさきマイスター」が匠の技を披露

洋服仕立て(紳士・婦人) 只木 角太郎 マイスター

紳士服・婦人服の仕立、作品・生地展示・販売、パターン無料配布

只木さんは着るものに愛着が生まれる洋服づくりを心がけています。
只木さんは着るものに愛着が生まれる洋服づくりを心がけています。
幸区でテーラーを営む只木角太郎さんはスーツをはじめとするオーダーメイドの世界でその技能技術を発揮しています。オーダーメイドの特徴である顧客の体型に合わせ、身につけているのを忘れさせるような、しなやかな着心地の良さをモットーに、仕立て技術の腕を発揮し、着るものに愛着が生まれる洋服づくりを心がけています。オーダーを受けた際、只木さんはまず目でお客さんの体形を見分け、それから生地を決めていきます。体型によって似合う生地や色柄がまったく違ってくるということです。生地は何点か見せますが、たいていの人は最初に見せた生地に決めるそうで、只木さんの目の確かさを裏付けています。それからサイズを測り、デザイン画を描いてお客さんに見せるという順番を踏みます。
展示された生地などに、ご婦人方はおしゃれ心をそそられているようでした。
展示された生地などに、ご婦人方はおしゃれ心をそそられているようでした。
当日は紳士服・婦人服の生地展示やパターンの無料配布を行いました。採寸後の基本デザインであるパターンは、20分程度で描き上げてしまうそうです。オーダーメイドの良さは出来上がった時の雰囲気のさわやかさや肩がこらない点などですが、そのために要求される型紙の作り方や裁縫の技に只木さんは見事に応えています。特殊な仮縫いをしているためぴったりと体に合い、お客さんの評判は上々です。最近はデザイン的な面での注文が多いということですが、只木さんは流行を知ることにも熱心で、自作品のファッションショーを開催しています。また毎年、FIMT(世界注文洋服業者連盟)の世界大会、アジア大会に出品し、国際的にも活躍しています。目下、シニア向けにシャツ風に着るジャケットを手がけているということです。

神社寺院銅版屋根工事 関戸 秀美(せきど ひでみ)マイスター

鏨(たがね)を使った根付・シルバーリング作り体験、槌起技能における作品の展示と実演

鏨を使って根付やシルバーリンクつくりを説明する関谷さん。
鏨を使って根付やシルバーリンクつくりを説明する関谷さん。
金属板を鎚(つち)で打ち延ばして金属工芸を作る鎚起(ついき)という技に卓越した関戸秀美さんは、社寺建築特有の屋根の形状を銅板葺きで作りだす高度な技能を持っています。これまで平成の大改修と言われた赤坂離宮の屋根の円形ドーム頂上部の改修や三菱1号館(東京・丸の内)の新築復元に伴う銅版工事など、多くの文化財級屋根の葺き替えにたずさわってきました。関戸さんはマイスターになる前から伝統職種を守る活動に熱心で、平成2年に「伝統技術技法を保存継承する会」を立ち上げ、銅版葺きをはじめ、宮大工、建具屋など伝統技能職の保存継承に力を入れています。銅版を張るには薄板、厚板という難しい絞り技術などが必要で、最近はこうした技能を発揮できる職人が減ってきたということです。
方形屋根の頂点にある台座に収まる玉ねぎ型の擬宝珠。左は成型途中の形。
方形屋根の頂点にある台座に収まる玉ねぎ型の擬宝珠。左は成型途中の形。
この日は鎚や鏨(たがね)を使った根付(留め具の一種)やシルバーリング作りの実演・体験と鎚起技能による作品展示を行いました。参加者は瓢箪やスプーンの形をした銅のプレートに実際に鎚や鏨を使って「割と簡単だね」と楽しそうに模様を刻んでいました。関戸さんは「今は鏨を使う機会は少ないので、体験してもらいました」と話していました。展示品は四角形の方形屋根の頂点にある台座(露台)に収まる玉ねぎ型の擬宝珠で、参加者は「あ、これは橋の欄干によくあるやつだ」と歓声をあげていました。

印刷技能士 流石 栄基(さすが えいき)マイスター

FMスクリーニング(高細線の網点を使用し、従来と比較して高精細となる印刷)の展示

高精度・高細密なカラー印刷を実現するFMスクリーニングについて説明する印刷技能士の流石さん。
高精度・高細密なカラー印刷を実現するFMスクリーニングについて説明する印刷技能士の流石さん。
一般に印刷は、原稿を色分解した後、YMCK(黄、赤、藍、黒)4色を組み合わせた網点からできており、原版のイメージする色を出すのには色彩に関する感性はもとより、経験などに基づく高い技術が要求されます。流石栄基さんはカラー印刷において、色の再現を得意分野としており、スキャナーを媒体に色分解をする技能を保持している職人です。これまでに、世界的なアーチストのポスターや画集・写真集などを数多く手がけ、その出来ばえは高く評価されています。
「今後は地域の皆さんから大型ポスターなどの印刷物を引き受け、地元に貢献していきたい」。
「今後は地域の皆さんから大型ポスターなどの印刷物を引き受け、地元に貢献していきたい」。
この日はカラー印刷の中でも抜群に高精度・高細密な印刷効果を出すFMスクリーニング印刷を中心に、最新の印刷技術の紹介とサンプル展示を行いました。オフセット印刷は従来の方式だと網点が互いに干渉し合うモアレ現象を起こしやすい欠点がありましたが、FMスクリーニングはそれに比べ4倍近い1インチ四方約650個という高細線の網点を使用するため、色域が広がり色調の鮮やかさを増します。流石さんは、三菱鉛筆が昨年「ユニ」発売50周年を記念して特別販売した240色の色鉛筆「ユニカラー240色」の小冊子印刷も手がけましたが、これもFMスクリーニングの技術と広色域6色インクの組み合わせで、限りなく現物に近い色を再現したということです。流石さんは「今後は地域からポスターや看板、垂れ幕など大型出力の印刷物を引き受け、地元に貢献したい」と言っていました。

時計技能士 飯嶋 義弘(いいじま よしひろ)マイスター

時計総合相談(精度測定・時間調整等)

昔の機械式時計を見事に蘇らせる技を持つ飯嶋さん。
昔の機械式時計を見事に蘇らせる技を持つ飯嶋さん。
飯嶋義弘さんは、アナログ式時計の複雑な構造に精通した時計技能士です。飯嶋さんのすごいところは、その時計の故障箇所を的確に把握し、分解、洗浄、組み立てはもとより、破損・磨耗した部品の製作なども総合的にできる技術と技能を持っている職人だということです。パーツがない場合は自分で作るなどして、動かなくなったものも見事によみがえらせる技術を持っています。これまで世界中のメーカーや時代を経た時計の修理に携わってきましたが、スイスなどで作られるローターで回す高級なゼンマイ時計は、「美術品のようなもの」だと飯嶋さんは言います。
いままで会館に展示されていた古時計がモダンな姿に変身しました。
いままで会館に展示されていた古時計がモダンな姿に変身しました。
この日の会場でも、飯嶋さんが修理し復刻させたゼンマイ式の振り子時計が展示されていました。写真で見てわかるように、機械本体は透明なアクリルケースに納められ、内部の仕組みが一目瞭然。ゼンマイや、文字通り“時を刻む”歯車の動きが手に取るようにわかります。本体はここ「てくのかわさき(川崎市生活文化会館)で保管・展示されていた5、60年前の柱時計で、その心臓部であるメカが今回、飯嶋さんの力で蘇ったということです。ゼンマイなど一部を交換した以外は、ほとんど元の部品が生きているということです。実は、このアクリルケースや造形的なステンレスパイプも同じかわさきマイスターの人たちが協力し合って作ったそうです。伝統的な工業品を守ろうというマイスターの心意気がこうしたところにも結集され、アンティークな古時計がモダンなスタイルに生まれ変わりました。飯嶋さんは「まだ何台かあるようなので、同じように修理して小学校に置いてもらい、子どもたちに昔の機械のすばらしさを知ってもらいたい」と言っていました。

円筒研削技能士 竹内 三郎(たけうち さぶろう)マイスター

精密金型部品・工具 製品展示

スーパーコンピューターのセラミック基板に後ろからライトを当て超ミクロの精密加工について説明する竹内さん。
スーパーコンピューターのセラミック基板に後ろからライトを当て超ミクロの精密加工について説明する竹内さん。
1万分の1ミリメートルという超ミクロの円筒研削の達人で、精密金型加工の工場を経営する竹内三郎さんは、この日、得意とするミクロ単位の精密微細加工の製品などを紹介しました。竹内さんはかつて、ある大手電機メーカーのスーパーコンピューター立ち上げの時に、基板となるセラミック製シートに埋め込む1本90ミクロンという超ミクロのピンの穴を加工してくれという注文を受け、苦労の末、無事納品できたという話をしました。「40センチ四方くらいの盤に10万基分の極小の穴ですよ。いったんお断りしたのですが、どうしても作ってくれということで工場の総力をあげて完成しました」ということで、その製品のサンプルであるスーパーコンピューターのセラミック基板が会場に展示されていました。
四角い形をしたセラミック基板のサンプルを覗き込む来場者に、竹内さんは基板の後ろからライトを当て、浮かび上がる超ミクロ単位のピン(穴)の世界を指差しながら分かりやすく解説していました。
エンドミルなど精密加工用の工具などを展示。
エンドミルなど精密加工用の工具などを展示。
長年にわたり、細密でかつ精密さが求められる電子部品に関わる精密金型部品などを手がけてきた実績があったから実現できた話で、竹内さんは「これを作った時、日本はスパコン用セラミック基板で世界1でしたが、いまは33位です。2番でもダメなのです。1番でなければ…。だから、こうしたイベントを通し、日本の技術のすばらしさを再確認していただければいいと思います。特に子どもたちには、先端技術の分野で川崎にもこういうものができる企業があるということを知ってもらいたいです」と熱く語っていました。